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うきぐもがたり  作者: towa
序章
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序章 とわずがたり

―――――――――――――――――――――――――――――――――


○登場人物紹介○


示詩じし……十八歳。赤社国の第一王女。黒髪に濃緑の瞳の美少女。高飛車で意固地。でありながらも母の恋春を世話し一城を取り仕切っていたことから意外に世慣れているところもある。理想のタイプは「位が高く、見目好く優しく逞しい殿方」


座龍ざりゅう……二十七歳。歳火国第二十一代国王。黒髪に緋の瞳の逞しい武人。自由闊達、奔放な性格でありながら、周りを気遣うこともできる。が、掴みづらいところもある。理想のタイプは「食いでのある色っぽい美女」。


竜脊りゅうせ……七歳。座龍の実の息子。母親は今のところ不明。座龍いわく「手のつけられない悪ガキ」らしいが、非常に落ち着いて大人びた発言をしたりもする。しかし、好奇心は隠さない。


光野こうや……十九歳。座龍の近衛であり、学友。また座龍の教育係であった朱平しゅへいの息子でもある。真面目で誠実な性格の苦労人。


陽炎かげろう……年齢不詳(恐らく二十代前半)。座龍個人の監察、斥候。常に気配を絶っており存在感が薄い。無口で無表情、命令には忠実。


桃衣ももい……十六歳。歳火国における示詩の側付きの侍女。武家だが田舎育ちで、優しく情細やかでよく気がつく。よく見ると整った顔立ち。


緋仔ひこ……二十歳。竜を研究している歳火の竜学士であり、若くして優秀な成績を修める天才。しかし言動がかなり奇抜で、かなりどもる。


燈源とうげん……五十六歳。歳火国の最高神官であり、先代王の弟。座龍の叔父。非常に気さくな人格者。熊の様な外見をしている。


沃賀よくが……五十二歳。竜学士の長であり、竜志学所の学長。数多の権力を手にしており、王族にも横柄な態度を見せる。


律草りっそう……四十歳。赤社国の現国王。気が弱く、娘の示詩よりも威厳が無い。


茶示さじ……三十一歳。赤社国の王妃。示詩の義理の母親。


天轟てんごう……座龍の所有する騎竜。王竜。普通の騎竜よりかなり大きい。


―――――――――――――――――――――――――――――――――












このお話は、私が見聞きして参りました、哀しくも美しいお二人のお話でございます。




かつて仕えておりました歳火(さいか )国の王宮の侍女であった私は、第二十一代歳火国王「座龍(ざりゅう)」様のご正室であらせられます「示詩(じし)」様のお側付きでありました。


示詩様は少しご気性の激しい所がおありで、それ故に、なさらなくともよい苦労をなさるような、不憫なお方でございました。


対して、座龍様は、恐れながらおなごに対して薄情なお心をお持ちあそばされている方でございまして、まるで浮雲のように正体の掴めぬお人柄でございました。


そのようなお二人でしたから、あれやこれやと、実に様々な問題をお抱えになってはお苦しみになっておられました。




ですが、そのような難事を乗り越えられたお二方は、私たちの心配をよそに、春の陽気に根雪が溶けていくかのように、ゆっくりと仲を深められていったのでございます。


そのようにお幸せなご様子をお見せになりながら、世ではまったく逆の、醜聞にも似た噂が広まってしまったということには、人という生き物の業を見せつけられた心地がいたしました。


現国王であらせられる「竜脊(りゅうせ )」様が、お二人の真の姿を公表なさらなかったのも、人の罪深さを知っておられたゆえにございましょう、浅薄な私には分かりかねることではございますが。




けれども、あのように思い思われていたお二人が亡き今になって、悪口雑言で貶められているのを耳にするたび、私は思うのでございます。




表面では解せぬ、人の心の奥深さを。


正体なき心を縛る、人の想いの連なりを。




そういった、世を渡る上で腹の足しにもならぬ真実を、言わずにおれなくなるのです。




さて、そんな私めの戯言に、それでも興味を削がずにおられたならば、どうぞご拝聴下さい。


腹の足しにはならずとも、人の世を慰める慈雨のように、美しいお話でございますゆえ。












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