お蚕さんとドライブ
母がお蚕さんをもらった話。
私の母は、台湾で生まれ育ち、子を育んだのちに日本へ渡って二度結婚し、現在は山奥の秘湯の町で暮らしている。まさに「九尾の狐リスペクト」な人生を送っている人物だ。
北京語、台湾語、日本語を操るトリリンガルなのだが、その語学力が私に全く引き継がれなかったことが実に悔やまれる。
今回は、そんな母の近況の話である。
先日、母から「仲良しのおばあちゃんからお蚕さんをもらった」と、喜びのLINEが届いた。
写真も添えられており、そこには3齢ほどの白い芋虫が5匹ほど。
私にとってお蚕さんなど教科書の中でしか見たことがない存在なのだが、母曰く、子供の頃に台湾の家で育てたことがあり、小さいうちは筆で面倒を見るのだという。台湾でも養蚕が盛んだったのだろうか。
何はともあれ、母はやけに嬉しそうだ。微笑ましいことである。
だが、ふと疑問が浮かんだ。
お蚕さんというのは、桑の葉以外も食べるのだろうか。
そんな疑問を抱いたのは、母の家の周りで桑の木を見かけた記憶がなかったからだ。
エサはどうするのか、桑の木に心当たりはあるのかとメッセージを送ってみると、
「そうなのよ。近所のおじいちゃんおばあちゃんに相談してみようと思う。近くにあったらきっと知っているだろうから」
との返答。
やはり見切り発車だったか。
その後、「桑の木が見つかった」と連絡があり一安心した……のも束の間、その翌々日。
「どうやら見つけたのは桑の木じゃなかったらしくて、お蚕さんが全然食べてくれない」と連絡が来た。
おいおい。
結局、職場の女将さんが店の裏に生えている桑の木を見つけてくれたらしく、休みの日に大雨のなか、片道1時間かけてお蚕さんとドライブがてら採りに行ったとのこと。
「葉っぱを入れた途端に食べ始めた!」と、再び歓喜のメッセージが届いていた。
そういえば、雷避けのおまじないに「クワバラクワバラ(桑原桑原)」という言葉がある。
あの大雨の中、お蚕さんのために取りに行った桑の葉は、母にとっての雷避けの御守りにもなったのだろうか。
本文の最後に触れた「クワバラクワバラ」というおまじないですが、ふと気になって記憶の引き出しをひっくり返してみました。
たしか昔聞いたうろ覚えの記憶では、いくつかの説があった気がします。
・雷様となった菅原道真公が、昔「桑の木」でケガをしたから避ける説
・道真公の領地だった「桑原(桑の原)」には雷を落とさないと約束した説
・そもそも古来日本や中国では桑の木に魔除けの力があるとされ、それが雷避けに転じた説
科学や知識が発達した現代では、こうしたおまじないも少しずつ姿を消しつつあるように思います。
皆さんも知っているおまじないがあれば、ご教示いただければ幸いです。
私はそういったものが大好物なので。




