第2話 なつ
我が家いちばんの古株である、なつ。彼女がうちに来たのは、私が地元に戻ってすぐのころだった。
夜、道を歩いていると後ろからニャーンと、鳴きながらついてきたのだ。
身体が小さく、まだ子猫に見えた。こんな子猫を、住宅街とはいえ車の往来が比較的多いこの道に置いてけぼりにするのも不憫だし、なにより危ない。
家に連れ帰り、次の日動物病院へ連れていくと、なんと妊娠してしばらく経っているという。
それなら、産ませて里子として出したほうが母体にも優しいと考えた私は、出産場所をせっせと構築する。人目につかないようカーテンを備え、クッションとタオルを用意。
いよいよそのときがやってきた。なつは必死に私に呼びかける。ようがす。そんなこともあろうかと、私も心の準備を整えていた。
実は猫の出産に立ち会うのはこれで二度目。一度目は、私が小学生のころに飼っていた「ミー」のお産のときだ。そのときを思い出しながら、なつを出産場所に誘導し、カーテンを閉じ、すぐ横で座って待機する。
ミーのときと同じなら、「私の姿は見えなくても、そばにいれば安心する」はずだ。
しかし、カーテンの奥でなつは必死に鳴くばかり。
あれ、おかしいな。なにかまだ足りてないことがあったのか? と思い、カーテンから頭を突っ込んで中を覗き込む。
私の顔を見た瞬間、安心したのか突如お産が始まった。凄かった。何が凄かったかは説明しない(というか出来ない)が、なんというかこう、母親の強さというか、生命の神秘というか、もはやなんというか、とにかく凄かった。
無事に三匹のこにゃんこが産まれ、なつはお乳をあげながら身体をなめてあげている。
結局一部始終を見ていた私は、「猫は出産を見られることを嫌がる」(いや人間も含めて、見られたい種族なんていないだろうけど)とはなんだったのかと、しばらく考え続けることとなるのであった。
それから少し経ったある日、なつがこにゃんこたちに、トイレの作法を教えている光景を目撃したことがある。小さい毛玉がみっつ、母親を見上げながら熱心に話を聞いている(?)様を思い出すと、私は今でも身悶えして五体投地し神に感謝を捧げるのである。
ちなみに三匹のこにゃんこ、みんなを里子に出すつもりだったので、名前を暫定的に「とんきち、ちんぺい、かんた」と左から名付けた。
だが結局、貰われていったのはかんた(女の子)だけで、とんきちとちんぺいはそのまま大きく成長し、そのゴツさで無邪気に甘えに行くため、なつはその都度、迷惑そうな顔をしている。
親子ともども、いつまでも元気でいてほしいものである。




