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最強悪役令嬢と魔王が本気で殴り合ってる横で、最弱王子が紅茶飲んでます  作者: 怒れる布団


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2/6

不敬な令嬢、王子の理想を全否定する

「……はぁ、はぁ……っ、ぜぇ……っ」


 どれだけ走っただろうか。

 ピクニック広場からはかなりの距離があるはずだが、一向に追いつける気配がない。


「……っ、あのご令嬢、なんでこんなに速いんだ!?」


 後ろを振り返れば、お供のアルフレドはとうに脱落。


 根性なしめ。


 俺は執念だけで食らいついてきたが、7キロを過ぎたあたりでついに彼女を見失ってしまった。


 どうしても、あの「光る頭」の秘密を知りたい。


 その一心で周囲を捜索していると、木々の隙間から微かな泣き声が漏れてきた。


「うっ……お嬢様ぁ……まさか帽子が飛ばされるなんて……ううっ」


 誰かが泣いている。俺は女性の泣き声を聞いて放っておけるタイプの男ではない。

 なんとかしようと

 声を頼りに森の奥へ踏み込むと、

 そこには

 ――しゃがみ込んで肩を震わせる侍女と、その傍らに、腕を組んで仁王立ちするアンジェリカ嬢がいた。


 アンジェリカ嬢は、坊主頭を惜しげもなくさらしたまま、堂々と立ち、木漏れ日を反射している。


  うっ、眩しい。


「エイダ、そんなに泣かないで。髪の毛なんか、また生えるんだから!」


 言い切った。清々しいまでの断言。

 エイダと呼ばれた侍女が、鼻をすすりながら顔を上げる。


「で、でもお嬢様っ……! なにもあそこから逃げ出さなくても。王子殿下からのダンスの申し込みなんて……一生の誉れですのに……っ!」


「ダメ。ゼッタイ。王子。」


 ……俺は薬物か何かか?


「おい!人をヤバイ薬みたいに言うな!!」


 我慢できずに飛び出した。


「げ!」


 女性に「げ!」と言われたのは人生で初めてだ。


「……いやいや不敬な奴だな。なんで俺を見た瞬間に害虫でも見たような顔をするんだ?」


 心底嫌そうである。


「カイト殿下! 全部あんたのせいよ!」


 突然、アンジェリカ嬢が指を突きつけてきた。


「俺!? 何かしたか?」


 アンジェリカ嬢は腕を組み直し、頭をぴかっと光らせて俺を睨む。


「あのピクニックに、年齢制限を設けたでしょ? 殿下自身が!」


 ああ、それか。


「……そりゃあ、あれはお見合いを兼ねていたからな。7歳から47歳までなんて、収集がつかないだろう。だから16歳から38歳までに制限させてもらったんだ」


「38歳……いいんだ」


 侍女がぽつりと呟いたが、無視した。

 アンジェリカ嬢は鼻を鳴らす。


「あら、ストライクゾーンは広いのね。でも下は15歳からにするべきだったわ。そうすれば、義妹が来られたのに!」


「妹?」


 そういえば、モロー家にはもう一人娘がいたはずだ。釣書で見た写真は、金髪に緑の瞳。大変、愛らしい令嬢だった。


「名前……なんだっけ?」


「ソフィアよ! 将来、あんたが心から愛する女の子!」


「は? 俺がアイス?」


「愛する女の子!」


 少し考え込む。確かに可愛らしい子だったが。


「……ご冗談を。ソフィア嬢は、その…胸のボリュームが俺の好みには合わない。よって、彼女を愛するような事態にはならない!」


「あんたと、貧乳談議、するつもりはないからね……」


 呆れるアンジェリカに、俺は食い下がった。


「そもそも、なぜお前がそんなことを断言できるんだ? 会ったこともないんだぞ」


「それは私が『転生者』だからわかるのよ!」


 転生者。


 聞き慣れない言葉に、侍女エイダが不安げに


「お嬢様、その話は……」


 と袖を引く。

 だが、俺は興味を惹かれて先を促した。


「……テンセイシャ? 死んで生まれ変わった、とでも言うのか?」


「そう、それ!」


 エイダが


「ああ、言っちゃった」


 という顔で天を仰ぐ。


「いい? この世界はね、前世で私が読んでいた『乙女小説』の世界なの! 私はその本を何度も読み返した。だから、この先何が起きるか――全部知ってるのよ!」


 アンジェリカの言葉が熱を帯び、彼女の頭がより一層輝きを増した。彼女は豊かな胸を張り、高らかに宣言する。


「とにかく、この世界のヒロインはソフィア! あんたはいつか、命がけで彼女に恋をする。これは確定した運命なの!」


 重い沈黙が流れる。


 一つも信じられない話なのに、彼女の瞳があまりに真剣で、つい気圧されてしまった。


「……でもあの子、胸小さいよね?」


 口をついて出たのは、それだった。

 アンジェリカの眉間に深いシワが寄る。


「さっきからなんなのよ! 文句は運命に言いなさい! 私に言われても困るわよ!」


 彼女はドカドカと歩み寄り、俺の肩をバシッと叩いた。


「だいたい、乳のサイズで女の魅力が決まると思ったら大間違いよ! 女は未知の魅力に溢れてるの!今のあんたには分からないだけ!」


「……その、未知なる魅力とは?」


 アンジェリカはニヤリと不敵に笑った。


「あの子の太もも、やわやわのムチムチよ? 一度フニフニしたら、絶対に手放せなくなるんだから。あんたはきっと、その魅力に屈する!」


 ……悪くない。


「まあ、そういうわけで。本当は今日、ソフィアとあんたは出会うはずだったのに――」


 彼女の声が急に低くなり、俺を射抜くような視線に変わる。


「年齢制限のせいで、運命が狂ったのよ。ソフィアが来られなかった罪は重いわよ、カイト殿下?」


 怒っているのか、呆れているのか。

 複雑な表情で見つめられ、俺は首を傾げた。

「将来の恋人」が、貧乳で太ももがやわやわなのは分かった。だが、先ほどの言葉が引っかかる。


「なあ……『命をかける』ってどういうことだ? 身分に問題はないはずだろう。何か障害がある恋なのか?」


 その問いに、アンジェリカは一瞬、言葉に詰まったような顔をした。

 そして、酷く場違いな、それでいて不吉な言葉を口にした。


「……ソフィアはね、魔王の花嫁になる運命だからよ」


「は? ……魔王?」


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