おにごっこ
とおいとおい 山の森
にんげんのいない 山の森
うさぎしかいない 山の森
「ポラリス、こっちにおいでよ」
「みんなであそぼうよ、ポラリス」
ぼくはうさぎの ポラリス
あそぶことだーーーいすき ポラリス
ともだちだーーーいすき ポラリス
「きょうはなにしてあそぶの?」
「おにごっこしない?」
「そうだね、みんなでおにごっこしようよ」
「じゃあ、じゃんけんしよう」
ジャンケーーン ポン
あいこでしょ
ジャンケーーン ポン
「ぼくがおにかぁ」
「じゃあ、ぼくらがにげるから 5ふんまってね」
「いいかい、5ふんだよ ポラリス」
「わかったよ」
ながいなぁ、、、 5ふん
もうすぐ 3ふんかぁ、、、
5,4,3,2,1・・・
「よし、みんなをさがすぞぉ」
「みんな、どこぉ」
キャーーーーーーー
「どうしたの?」
イヤーーーーーーー
「みんな?」
たすけてーーーーーー
「どうしたの!?」
とおいとおい 山の森
にんげんのいない 山の森
意地の悪いやつがきた
「みんなーーー」
「ポラリス、こっちだよ!!」
「母さん!?」
ぼくらはかける ドクドクと
ぼくらはかける ビョンビョンと
ぼくらはあるく そろそろと
「ポラリス、ぶじだったか」
「父さん、兄ちゃん、なにがあったの?」
「にんげんが やってきたんだ」
「にんげん!?」
「あぁ、ついにぼくらの山にもやってきたんだ」
「そんな…」
くらいくらい 山の森
にんげんが やってきた
ぼくらをおそいに やってきた
「ぼくらはどうなるの?」
「わからないよ」
「みんなは?」
「わからない」
「そんな…」
「とにかくかくれるんだ」
「にんげんは はながきく」
「わかったよ、父さん」
キャーーーーーー
「母さん!?」
イヤだってーーーーー
「兄ちゃん!?」
たすけてーーーーーー
「父さん!?」
おもいおもい 山の森
うさぎのいない 山の森
ぼくしかいない 山の森
「もしかして、ぼくひとり?」
「にんげんしかいないの?」
「いやだよ、そんなの」
「にんげんなんてだいきらいだ!!」
「外に出なさい」
ちかいちかい 山の森
ふらりとおりた 山の精
しろいひかりの 山の精
「そとにでる?」
「はいっ、そとにでるのです」
「でも…」
「どうしました?」
「ぼくは そとにでたことが ないんだ」
「だから、そとにでるんです」
「そんな…」
「あとは、あなたしだいです」
ちかいちかい 山の森
ちかいちかい 山の森
ちかいちかい 山の森
ドンドンドンと、丘をこえ
ドンドンドンと、森をぬけ
ドンドンドンと、海へでた
「だれか、たすけて…」
「どうしたんだい?」
「きみはだれ?」
「ぼくはあじだよ」
「あじ?」
「そうだよ、どうしたんだい?」
「ぼくのなかまが おそわれたんだ」
「だれにだい?」
「にんげんだよ」
「にんげん?」
「あぁ。あいつらがぼくのなかまを おそったんだ」
「そうかい」
「ぼくはひとりなんだ」
「そうかい」
「にんげんがにくい。きみには ぼくのきもちなんて わからないだろ?」
「ぼくもひとりだよ」
とおいとおい まるい海
にんげんのいない まるい海
ぼくしかいない まるい海
「ぼくもにんげんに おそわれたんだ」
「きみもかい?」
「そうだよ」
「きみは にんげんが にくくないのかい?」
「にくくないよ」
「なんでだい?」
「ぼくらも にんげんとおなじことを しているだろ?」
「そっ、それは…」
「だから、にくくないよ」
とおいとおい まるい海
にんげんのいない まるい海
ポチャっとさった まるい海
「ぼくはいったい…」
「家へかえりたいですか?」
くらいくらい まるい海
ふらりとおりた 海の精
あおいひかりの 海の精
「きみは まえにあったことある?」
「家にかえりたいですか?」
「どういうこと?」
「家にかえりたいですか?」
「家にかえっても ひとりじゃないか…」
「いいえ、ひとりではないです。あなたのともだちも かぞくもいます」
「ほんとうに!?」
「家にかえりたいですか?」
「家にかえりたいです」
あおじろくひかった ピシャピシャ
まっかにもえあがった ボーボー
ここにもどってきた ドーーーん
「ここは…ぼくの…山?」
「ポラリス、おにごっこしようよ」
「みんな?」
「ジャンケンでおにきめよう」
「ちょっとまって…」
「どうしたんだよ、ポラリス?」
「にんげんに おそわれたんじゃないの?」
「にんげん?」
「あぁ、そうだよ」
「にんげんなら、やまおくにいるよ」
とおいとおい 山のおく
せっせとはたらく にんげんさん
いえをつくる にんげんさん
「ぼくらのいえを つくってくれているよ」
「どういうこと…」
「きみのいえも にんげんがつくったじゃないか」
「そんな…」
「どうしたんだよ、ポラリス?」
「えっと…」
「ポラリス。そんなとこにいないで てつだってくれよ」
「母さん!?」
「はやく うちにかえっておくれ」
母にだきつく エーーンエン
兄はぶじかと エーーンエン
父もいきてた エーーンエン
「どうしたんだい?ポラリス?」
「いや、いきててよかったって…」
「なにをいっているんだい。そんなことより家にかえるよ」
ぼくらははねる トコトコと
ぼくらははねる ぴょんぴょんと
ぼくらはあるく トロトロと
「ポラリス、やっとかえってきたか」
「父さん、兄ちゃん、よかった…」
「ゆうしょくのじかんだよ」
「うん」
「おきゃくさんも いるんだから」
「おきゃくさん?」
ギィーーーとあいた きのとびら
しろいぼうしの 山のひと
あおいぼうしの 海のひと
「きみらは…」
「ひさしぶりだね、ポラリス」
「あいたかったよ、ポラリス」
「しりあいかい?」
「うっ、うん…なんできみらが ここにいるの?」
「ぼくらはきみを みまもっていたんだ」
「きみは よわむしだったからね」
「よわむし…」
「きみは にげてばかりだったからね」
「きみだけ つかまえることができなかった」
「どういうこと?」
「これが ぼくらのつくりたかったせかいなんだ」
とおいとおい 山の森
にんげんのいる 山の森
うさぎとくらす 山の森