03話 仲間の参戦
「なあ、その話、本当?」
何処からか声がした。教室の入口のドアからだ。
その方向に目を向けると、二人の男が立っていた。
「スバルとメーティーじゃん!何々気になるの!??」
スバルこと竹下栖春とメーティーこと明貞和貴の二人だった。二人は洸介と祥平のクラスメイトで、高校一年生から同じクラスで仲がいい存在だ。
そんな彼らは教室に入る前に話し声が聞こえてしばらく聞いていたそう。別に会話に入ってくればいいのにと洸介は思った。
「夜に学校に行くって…結構危なくない?」
「それが楽しいんじゃん!」
「これくらいしないと夏休みは楽しめないぞ」
「とはいっても、夏休みも先生はいるからもちろん長居するわけにはいかないぞ」
先生たちは何をするかというと、夏休み明けの授業の準備や部活の様子を見に来たりなどで学校には来るので、ちゃんとどうやって帰るかも考えなくてはならない。
「…………………まったく……手が焼けるね…」
四人の会話を聞き、民都は呆れた。もう自分では抑えきれなくなったので、あとは先生に任せることにした。
「おーいおまえら席につけー」
すると先生がやってきた。今日は朝礼の日なので、朝は早めに来なくてはいけない日だった。
放送で行われるので気楽に耳に通すことができるが、多分全員何も聞いていないほどの内容なのでどうでもよかった。ただ席に座るだけ、つまらない。
時間が経って、昼休みの時間になった。授業もつまらなかったのでほとんど覚えていない。何をやったか全部忘れた。まあ、そんなことはいいとして。弁当の時間だ。この時間が一番幸せなんだよなぁ結局。
「こーちゃーん!一緒に食べよー」
「だからさぁ……誘われなくても食べるから」
「いやいや、今日はアレのことを話し合うからさ、スバルとメーティーも一緒」
昼休み。この時間は決まって洸介は祥平と一緒に洸介の机で昼ごはんを食べる。毎日恒例の行事だ。
しかし、今日は夏休みに行く夜の学校について話し合わなくてはいけないので、栖春と和貴とも一緒だ。
「「お邪魔しまーす」」
「だから別にいちいち言わなくていい」
ぶっちゃけ毎日のことなのに毎回「一緒に食べよー」って誘ってくるのは耳に胼胝ができるくらいしつこい。だから毎回こっちも「言わなくていい」と言っているのにそれを無視するのは少し腹が立つ。
「よーし、それでは第n回(nは自然数)の話し合いをします!!」
「いや一回目だろ」
栖春は祥平の雑なボケにツッコむ。大体回収してくれるのでそろそろ祥平は栖春に感謝した方がいいと思ってはいるが、どうでもいいのでほっといている。その雑なボケに洸介と和貴は祥平を白い目で見た。それに気づいた祥平は咳をして、仕切り直した。
「えーと、じゃあいつ行く?どうせなら何日か行きたいじゃん?」
「俺は部活ないからいつでも」
「俺結構部活あるんだよねー。週に五はある」
「右に同じく」
「僕は結構暇な方かな」
洸介は帰宅部なので夏休みに部活はゼロである。祥平はパソコン部に入っているが、部員が少ないので活動は少ない。
その二人とは対極的に栖春と和貴は同じバスケットボール部である。しかもハードな練習ばかりなので残念ながらそんなに暇はない。
「ていうかこれ、夜の話でしょ?部活とか関係ない気がする」
「…確かに」
「じゃあいつでもできると」
和貴が大切なことに気づいた。実行するのは深夜の話、深夜に部活をするほどハードではないので心配しなくてよいのだ。疲れがどうとかあるが、栖春と和貴は比較的疲労の回復スピードは速いのでそちらも心配はしなくてよい。
「やっぱりやるなら、最終日近くだろ。今年の八月の三十一日は日曜日だ」
「確かに、じゃあ最終週でいっか!」
「同意」
「右に同じく」
ということで、結論はこう。夏休みの前半は特に何もないが、八月の最終週である二十五日(月)から二十九日(金)の期間で開催。集合は深夜十一時五十五分校舎前、帰るのは六時。結構暇になるから各自何か遊び道具を持ってくること。注意事項はこれくらいだ。
決まって洸介は笑顔になる。一週間でとんでもなく面白い事を体験できるからだ。
たったそれだけの青春には付き物がある。楽しんでいる中、最悪な事態という波に巻き込まれることなど、知らないのであろう。まるで、楽しくサーフィンをしていた人が波に巻き込まれるように。それを人はこう呼ぶ。
『サックアウト』と。