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【天使】養殖・第二話(7)

作者: AMAKA

 そこへいきなり横腰への強烈な衝撃!


とおやんっ?」


 襟紗鈴えりざべるが、常人ならざる力で【天使長】の腰にしがみついてきてよる。


「放してや!」


 わめく【天使長】には微塵もかまわず、襟紗鈴はジャンヌダルクな【仙女】へ髪ふり乱して呼びかけた。


「早くお逃げ!」


「あかん……」うめく【天使長】、「完全に母親の目えになってしもとる……」


 そのとき。


 もうひとり、べつの【仙女】(ピーチ姫似や)が【天使長】の前に立った。


 困惑する【天使長】ににっこり微笑み、手にした羽毛製の扇で自身の美貌の真ん中をさわるや、


「くちっ!」


 くしゃみがひとつ。


 放たれた薄紅色の粘液の膜を【天使長】は顔面で受けとめ、声にならん声を上げよった。


 息ができん。


 顔の皮膚が熱い。


 なにより、外界の光が眼球に突き刺さるみたいに痛まぶしいのに、まぶた閉じれん……!


「彼女のくしゃみ成分は、目の錐体細胞の感度を跳ね上げる」


 鷹揚な【神女しんにょ】の声。


「とくに緑色への反応がめざましい。いかにや【天使長】、まるで燃えるようそかり?」


 ほんにそのとおりやった。


 草木におおわれたこの【離宮】は、今の彼にとって地獄や。手で目を覆いとうても、襟紗鈴が懸命に邪魔をする。


「そう言えば、なむちに教えざりしそかり。覚えおけ、すべての【仙女】が言の葉の申し子なりとはいえ、その力はあれの与えしものぞ。が【仙女】らはそれとは別に、ひとりひとり『特別な秘技』を持つゆえにその地位にあると知れ」


 目の前のべっぴんらがそんな異能の面々とは思いもよらなんだ【天使長】、顔面を涙液や洟液および唾液でずるずるにしながら、ようよう【仙女】から賜ったくしゃみ膜を剥がしよる。


 が、【仙罰】はまだ終わらん。(『【天使】養殖・第二話(8)』に続)

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