最終話――風が教えてくれた未来の行方
轟音と共に、魔王サタンが膝をついた。
その赤い瞳は、まだ燃えていたが、もはや戦う力は残っていなかった。
「……見事だ、人間よ」
俺は、震える手で拳銃を構えた。
ジョニーの声が、頭の中で囁く。
《これで終わる……でも、本当にこれでいいのか?》
「……どういう意味だ?」
サタンは、苦しげに笑った。
「お前たちは、確かに私を倒した……だが、この世界はもう長くない……"地球リセット"は止められん……」
その言葉と共に、空が裂けた。
――異界のゲートが崩壊する。
――地表が揺れ、津波が大陸を飲み込む。
――火山が噴火し、空が黒く染まる。
世界の終焉が始まった。
ガルヴェスは拳を握りしめたが、どうしようもなかった。
ナタリアは静かに目を閉じた。
「……これが、世界の終わりか」
サタンが、最後に笑う。
「また……繰り返すのだ……人間は……愚かだからな……」
その言葉を最後に、魔王は崩れ落ちた。
そして、俺たちも。
人間も、魔族も。
すべてが、崩壊していった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
どれほどの時が経ったのか。
気づけば、世界は静寂に包まれていた。
青い空。
輝く太陽。
大地には、緑が広がっていた。
もう、誰もいない。
争いも、戦争も、魔物も、魔法も。
地球は、すべてをリセットした。
……この先、もう一度、人類が生まれるのかもしれない。
もう一度、愚かな戦争をするのかもしれない。
それとも、今度こそ、みんなが仲良く暮らせる世界が来るのか。
やがて――
最初の人間が生まれた。
それは小さな子供だった。
草原の中に、一人。
やがて彼は成長し、仲間を見つけ、家族を作った。
彼らは集まり、村を作り、やがて都市を築いていった。
最初は争いもなかった。
食べ物を分け合い、支え合い、生きていった。
しかし、ある時。
「もっと広い土地が欲しい」
「自分たちが一番強いのだ」
そんな声が生まれた。
やがて、武器が生まれた。
争いが生まれた。
国ができ、戦争が始まった。
血が流れ、大地が焼かれる。
人々は再び、自らの愚かさに気づくだろうか。
それとも――
また、すべてをリセットする日が来るのだろうか。
青空の下、風が吹く。
まるで、かつてここに生きた者たちの声のように。
「次こそは、間違えるなよ」
そう言っているかのように。
おしまい
ここまでご覧いただきありがとうございました。




