三十八話 最終決戦
サタンが炎と共に咆哮を上げる。
「来い、人間ども!」
次の瞬間、地鳴りのような咆哮と共に、彼の背後に六枚の黒き翼が現れる。空が割れ、炎と雷が天地を縦断した。
「ナタリア、ガルヴェス、前に出るぞ!」
俺の声に二人が頷く。
ガルヴェスは重力を無視したかのような跳躍で空中へ。ナタリアは魔力を帯びた短剣を指先で回し、後方から鋭く投擲。
短剣は真っ直ぐサタンの胸元を目指すが、彼は指先一つで風圧の盾を展開し、難なく弾き飛ばした。
「貴様ら反抗、心地よい……!」
サタンが指を鳴らすと、地面が裂け、黒い触手のような魔力が襲いかかる。
「邪魔だっつってんだよッ!!」
ガルヴェスが叫びながら拳を振り抜いた。
風圧すら吹き飛ばす破壊の一撃――"修羅ノ型・砕地"。地面から伸びる魔力の腕を、まとめて叩き潰した。
だが次の瞬間、サタンが空中に跳び、無数の魔力弾を展開する。
「愚かな力……すべて灰に還れ!」
膨大な熱量と殺意を含んだ弾丸の雨。避けることは不可能――そう思えたが、
「"蒼の帳"展開――!」
ナタリアが結界魔術を展開し、空間ごと封じた。
「……今だ、布藤!」
「任せとけッ!」
俺は地を蹴った。空間が歪み、時間が伸びたような感覚の中、両手の拳銃を構える。
「俺たちの力を舐めるな!」
拳銃が赤黒く輝き、弾丸が魔力を纏う。引き金を引いた瞬間、空間がねじ曲がり、サタンの身体を直撃。
「ぐっ……!」
膝をつくサタン。だが、まだ終わっていない。
「我が炎は……負けぬ……!」
サタンの体が燃え上がる。彼は、魔力崩壊を起こそうとしていた。
「来るぞッ!」
ガルヴェスが叫ぶ。
「ナタリア、空間固定結界を! 俺たちでヤツを押し込める!」
「ええ!全魔力を開放!」
ナタリアの瞳が輝き、空間が固定される。俺とガルヴェスが前に出て、サタンの炎に突っ込んだ。
「終わらせるッッ!!」
「愚かな――」
言いかけたサタンの顎に、ガルヴェスの拳が炸裂。続けて、俺の弾丸が、サタンの胸に突き刺さる。
「行けえええええええッ!!」
――銃声。 ――爆裂。 ――魔王の核が砕ける。
サタンの翼が崩れ、空へと溶けていく。
「……見事だ……人間よ……」
炎が消え、サタンが崩れ落ちた。
次回、最終回




