第三十五話――親友の誓い
精神世界
暗闇の中に、ジョニーが立っていた。
いつもの軽薄な笑み――いや、今はどこか穏やかで、寂しげだった。
「ぜんぶバレちまったか」
「ああ、魔王四天王の情報が、俺の中に流れ込んだのは、お前が助けてくれていたからなのか」
今思うと、そんな気がした。助けられっぱなしだそして、俺は息を吐いた。
「……それに、なんとなく。お前が千里を好きだってことくらいお見通しだったよ」
ジョニーは苦笑し、肩をすくめる。
「鈍感だと思ってたんだけどな。千里には告ったよ。でも『今の私にはお兄ちゃんが必要で、お兄ちゃんにも私が必要』だってさ」
「……そうか千里…」
ジョニーは、察したのだろう、俺と千里の関係を
そして、何を言うべきか分からない。
でも、ひとつだけ確かなことがある。
「魔王は家族だなんて言ってたが……俺たち兄妹にとって、お前は親友だ」
ジョニーの目が一瞬、大きく開いた。
「……そっか。そりゃ、ありがたいね」
彼は懐かしむように天を仰ぐ。
「なぁ、布藤。俺、あの博士には感謝してるんだよ」
「あの博士……?」
「お前の中の魔物のことだよ。俺がこうしてまだ"生きてる"のは、あいつのおかげだ。まぁ、もうすぐ終わるけどな」
「終わる?」
ジョニーは微笑んだ。
「これで全部、終わるんだな」
――ああ、終わらせるさ。
お前の戦いも、俺の戦いも、全部だ。
現実世界
俺は目を開けた。
ガルヴェス、ナタリア、そして俺――3人が魔王を睨みつける。
「さぁ行くぞ、魔王!」
魔王サタンは王座の前に立ち、静かに俺たちを見下ろした。
「……私を倒したところで、世界は変わらんぞ?」
それでも俺たちは、武器を構える。
「まぁいい。好きにさせてもらおう。"最後"くらいはなぁ!!」
魔王の身体から灼熱の魔力が放たれる。
空間が震え、世界が歪む。
――これが最後の戦いだ。




