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第三十三話――封印された遺産

「情報が集まったわ」


ナタリアは古びたノートをテーブルに広げた。


「“大和”は、日本列島から持ち出されたあと、アリゾナの地下施設に封印された可能性が高い」


「アリゾナ……砂漠のど真ん中かよ」


ガルヴェスが眉をひそめた。


「空を飛ぶ戦艦が、なんでまた地下に?」


俺の疑問に、ナタリアは答える。


「“大和”は魔力中枢が不安定で、戦争末期には暴走の兆候があったらしい。空で暴れたら大惨事になる。だから、当時の連合軍が“地下に沈めて封印”したの」


「そして忘れられたか、意図的に隠された……か」


俺たちは、アリゾナにあるという地下軍事施設――"グレイブ・ハンガー"を目指す。


地図を頼りに、朽ちた都市を越え、モンスターの巣を抜け、ようやくたどり着いたのは、巨大な滑走路跡。周囲には人の痕跡はなく、ただ風が唸るばかり。


「ここが……“墓場(グレイブ)”ってわけか」


コンクリートに埋もれたハッチを開け、俺たちは地下へと潜った。


暗く、静かで、ひたすら広い。


無数の格納庫、魔力残滓を感じる壁。 その奥に――あった。


「……あれが、“大和”か」


そこには、黒く、鋭く、美しい流線形を描く巨艦が、眠っていた。


だが、船体の一部は崩れ、魔力炉は完全に沈黙している。 埃まみれの艦橋、剥き出しのコア、腐食した回路。


それでも、確かに存在していた。 伝説の空中戦艦――“大和”。


「でけぇな……これが空を飛んでたってのか」


ガルヴェスが感嘆する。


ナタリアが艦体に触れる。


「魔力炉は、まだ……生きてる。かすかに、だけど……動かせる可能性がある」


だがその瞬間、艦内に警報が鳴る。


――侵入者、排除。


「防衛プログラムか!? 来るぞッ!」


格納庫の四方から、自律兵器群が展開。 かつて“大和”を守るために造られた、対魔物用の機械兵器たちが俺たちを敵と認識する。


「遠距離かよ…布藤たのむ!」


「ボルト・ナット――!」


俺は2つの銃を乱射し、嵐のように敵を殲滅する。 ガルヴェスが近接戦闘で防衛装置を砕き、ナタリアは魔力制御でシステムを無力化。


戦闘は長引いたが、最後の警戒兵が沈黙したとき、“大和”は応えるように低く唸った。


「アイサツってやつか」


ナタリアが微笑む。


「さあ、あとは修理と起動ね」


だが、エンジンルームを確認したナタリアの顔が曇る。


「……推進機関は、死んでる。再起動には膨大な魔力が必要。そして、コアも損傷してる」


「動かねぇってことか?」


「今のところは。でも――波動砲だけなら、まだ撃てるかもしれない」


その言葉に、俺たちは顔を見合わせた。


「……だったら、魔王城をぶっ壊してから乗り込もう」


次の作戦が、決まった。

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