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第二十六話――変わり果てた国
俺たちは北方領土を後にし、ロシアへと向かった。
「……まるで死の国だな」
ナタリアが呟く。
街には人影がほとんどなく、建物は朽ち果て、黒い瘴気が立ち込めている。
路地にはうずくまる人々がいた。
魔力病――マナへの適応を強いられる病。
魔王が作り出したダンジョンから溢れるマナに、人々は晒され続けている。
適合できなければ、三日以内に死ぬ。
適合できれば、魔法の力を得る。
「……お前もそうだったんだろ、ガルヴェス」
俺は彼の横顔を見た。
「……ああ」
ガルヴェスは静かに頷く。
「俺も、一度は死にかけた。だが、生き延びた結果……こうして魔法が使えるようになった」
彼の手から雷の魔力がほとばしる。
「でも、ほとんどの奴は死ぬ。こうやって……」
彼の視線の先には、動かなくなった人々の姿があった。
俺たちは、この地で最後の四天王と対峙しなければならない。
だが、それ以上に――
魔王の影が、確実に近づいているのを感じた。




