22/24
第二十二話――戦火の記憶
俺たちが踏みしめるこの地――北方領土。
だが、かつてここは、第3次世界大戦の引き金となった場所だった。
「……ロシアが、この地から日本へ攻め込んだんだよな」
俺の言葉に、ナタリアとガルヴェスが黙って頷く。
「日本は、まともな軍を持っていなかった……。だから、他の国々にとっては“獲物”にしか見えなかったのよ」
ナタリアの声は静かだったが、どこか苦々しさが滲んでいた。
ロシアの侵攻を皮切りに、中国、北朝鮮、韓国――
次々と周辺国が日本に攻め込んだ。
そして、それは世界へと波及し、第3次世界大戦の火蓋が切られた。
「……戦争が終わる前に、世界は“終末”を迎えたわけだ」
ガルヴェスが皮肉気に呟く。
人間同士の戦争が極限に達した時、魔王が降臨した。
――すべてが、そこから変わった。
だが、今やその歴史を知る者はほとんどいない。
生き残った者はただ、目の前の世界を生きるだけだ。
「……この地がダンジョン化したのも、ただの偶然とは思えないな」
俺は、黒き塔を睨んだ。
ここに、四天王の一角がいるはずだ。
そして、この地に秘められた何かが、俺たちを待っている。