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第二十一話――ダンジョン化した北方領土


船は冷たい海を抜け、ようやく北方領土へと辿り着いた。


しかし、俺たちが目にしたのは、かつての北方領土とはまるで別物の光景だった。


「……なんだ、これ……?」


ガルヴェスが驚愕の声を上げる。


目の前に広がるのは、異様な大地。

凍りついた荒野に、ねじれた黒い岩が無数に突き出している。

地面は紫がかった魔力の光を帯び、ところどころに裂け目が生じていた。

まるで地獄が地上に現れたような光景だ。


「これは……ダンジョンの影響?」


ナタリアが慎重に足を踏み出し、地面を確かめる。


俺は辺りを見回しながら、ふと確信した。


「――いや、違うな。これは“ダンジョンそのもの”だ」


「……どういうことだ?」


「この北方領土全体が、一つの巨大なダンジョンになっている」


言葉にした瞬間、自分でも背筋が寒くなる。


普通のダンジョンは、ある程度の“領域”に収まっているものだ。

だが、ここは違う。


この土地そのものがダンジョンと化している。


「ってことは……」


ガルヴェスが険しい表情をする。


「四天王の居場所を特定するのが難しくなるってわけか」


ナタリアが腕を組み、考え込む。


「くそっ、これじゃ手がかりがなさすぎる」


俺たちは手分けして調査を進めることにした。


だが、歩みを進めるたびにわかる。


このダンジョンは“普通のダンジョン”とは何かが違う。


時折、地面が脈打つように震える。

冷たい風に混じって、不気味な囁き声が聞こえる気がする。

空は曇天に覆われ、昼夜の区別すら曖昧だ。


そして――


「……おい、あれを見ろ」


ガルヴェスが指をさした先に、巨大な建造物がそびえていた。


黒曜石のような黒い塔。

無数の魔力の光が渦巻き、天へと伸びている。


「あれが……四天王の居場所か?」


ここが地獄なら、俺たちが突破するまでだ。



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