20/39
第二十話――戦争の記憶
新潟を離れ、船は北の海を進む。
波の音に混じって、俺の頭の中に“ある記憶”が蘇っていた。
――終末戦争の前、世界では最後の世界大戦が行われていた。
その戦争の始まりの場所。
そして、初めて魔王が降り立った地。
「……あの戦争がなければ、今の世界は違っていたのか?」
俺は呟く。
ナタリアとガルヴェスが黙って俺を見つめる。
「過去を振り返る時間はねぇぜ、布藤」
ガルヴェスが低く言う。
「確かに、あの戦争がすべての始まりだった。だが、それをどうすることもできねぇ」
「……そうね。今は、魔王を討つために進むしかない」
ナタリアが静かに言った。
俺は深く息を吐く。
――魔王。
ヤツは今、アメリカにいる。
そこへ至る道のりは、まだ果てしなく遠い。




