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夢の足跡  作者: 留菜マナ
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君にしかできないコト

「ここが・・・・・・ルトンの塔」

辺りを見回して、ソディがつぶやいた。

私達は砂漠の一角にある細長い塔の前にいた。床や壁にはヒビが走り、崩れているところも少なくなかった。

「ここに古の王がいるんだな」

「行こう、ソディ!きっと街や村で聞いた噂が本当なら、ここに「古の王」がいるはずだよ!」

「ああ、行こう!」

私とソディはそう頷き合うと、塔へと歩き始めた。無人の通路を駆け抜け、螺旋状の階段を駆け上って、さらに先へと進んでいった。

そして何層目か分からなくなった頃、その先に私達は見慣れぬ魔物の姿を見つけた。魔物は、まるで見えない何かに引きずりこまれるのを拒むような様子だった。そしてそれは、床にある魔法陣のようなものに対してのことだということが私には分かった。

「こ、こいつが!」

ソディは走りながら叫んだ。

「こいつが「古の王」なのか!」

私は無言で頷いてみせた。

「ソディ!」

「ああ!必ず、倒してみせる!」

ソディは剣を抜き、剣を向けながら、静かに私に言った。

中和剣を勢いよく一振りすると、ソディは「古の王」に向かって言い放った。

「例え、「古の王」だとしてもダメージは受けるはずだ!必ず、倒してみせる!」

ソディの言葉は願望に近い。あの魔王と呼ばれている「古の王」が相手なのだ。

これが最後の戦いになるだろう・・・・・・。

ソディは唇を噛みしめた。

はっきり言って勝てるかは分からない。いや、勝てない確率の方がきっと高いだろう。

だけど・・・・・・約束したんだ。

ルーンと二人で世界中を渡り歩こうって!

だから、絶対に負けられないんだ!!

「行くぞ!!」

ソディはひと声あげると「古の王」に向かっていった。

「わ、私も何かソディの加勢をしないと!」

私は、ソディが「古の王」に斬りかかるのを呆然と見た。

私には攻撃魔法は使えない。

でも、何とかしないと!

私は周囲を見回すが、周りには武器として使えるものはない。護身用として持ってきていた短剣は、この塔に来る途中で折れてしまっていた。私がそうこう悩んでいる間にも、ソディは「古の王」に駆け寄り、剣を振り下ろす。そして、何度も剣を斬りつけていく。

だが、それらすべての攻撃を、いとも簡単に「古の王」は防いでみせた。圧倒的な強さと圧倒的な存在感だった。

「さすがに、魔王と呼ばれているだけのことはあるな・・・・・・」

ソディは吐き捨てた。

なんて頑丈な皮膚なんだ。

それがソディの正直な思いだ。

これでは、いくら攻撃しても全く効果はないじゃないか!

いや、むしろ、こちらが剣で攻撃をする度に体力をどんどん削られてしまう。

!?

剣では・・・・・・?

「ルーン!」

「古の王」に斬りかかりながら、ソディが私の名を呼んだ。

「魔法だ!魔法でなら「古の王」にダメージを与えられるかもしれない!!」

「む、無理だよ!私には攻撃魔法は使えないんだよ!」

私はソディから顔を背けた。

私は回復魔法が得意であり、傷を癒やしたり、状態を中和したりすることができた。それは事実だ。

だけど、攻撃魔法は一切使えない。だからこそ、今もただ、こうして見ているしかできないでいるのだ。

ソディは知っているはずだ。私が攻撃魔法を使えないことは。何しろ、初めて出会った時にそのことも話していたのだから。

きっと、ソディはそのことを忘れている。

忘れていなければ、そんなことを言い出したりはしない。

だけど、その私の判断は早すぎた。

ソディは言った。

「・・・・・・前にルーンが話していたあの魔法なら、もしかしたら「古の王」に効果があるかもしれない!」

「あの−−魔法って、まさか!?」

「ああ!」

私の言葉に、ソディは大きく頷いてみせた。

ソディは何を言っているんだろう?

あの魔法は使えないのだ。

あの魔法は私には扱えないのだ。

攻撃魔法の中で、唯一、私が使えた時魔法と呼ばれている魔法の一つ。でも、命に関わる危険性がある。私は父からそう聞いた。だからこそ、父から二度と使ってはいけないと忠告されたのだ。

「前に、ルーンが言っていたことがあるよな」

私を見つめながら、ソディは言った。

「あの魔法は暴走する可能性があるって言っていたよな。消えてしまうかもしれないって」

「う、うん」

私は頷いた。

私はそう父から訊いたのだ。

「でも、それならその消えてしまう対象を、自分ではなく「古の王」にすることも可能なんじゃないのか?」

本気の表情で、本気の口調だった。

ソディの攻撃からは、ある種の確証さえ感じられた。

私はただ、ソディの瞳を見つめた。

ソディも同じように真剣な瞳で私を見つめていた。

「・・・・・・そうだね」

私はソディを見た。

意外にも私は自然な笑顔をつくることができた。

「そうかもね。ソディとなら・・・・・・できるかもしれないね!」

私はそう言って、ソディの申し出に力強く応じてみせた。

「ああ、ルーンなら、きっと「古の王」を封じることができる!僕はそう信じているよ!」

そう言うと、私とソディはお互いにひとしきり笑い合った。

そして、ひとしきり笑い合った後、私達は再び「古の王」と向かいあった。

「ルーン、後は頼んだからな!」

「うん!」

私が頷くと、ソディは再び「古の王」に立ち向かっていった。

ソディは危険をかえりみず、接近戦を挑み続け、そして何度も「古の王」の身体に剣を突き立てた。それでも「古の王」は倒れない。まるで、不死身の生き物のように、「古の王」は私達の前に立ち続けた。

でも、ついに最後の時がきた。

幾度ものソディの攻撃を喰らい続けたせいか、一瞬、「古の王」の身体が体勢を崩し、よろめいた。

「ルーン、今だ−−!!」

「古の王」から素早く離れると、ソディが私の名を呼んだ。

私はすぐに頷き返し、そして胸の前で手を組み、呪文を唱えた。

「ヘルクラウド!!」

私がそう呪文を唱えた瞬間、私と「古の王」の周りの地面が突如、黒く染まった。

「えっ?」

思いがけない出来事に、私は私は思わず、動揺をあらわにする。

だけど、それは地面が黒くなったのではなかった。突然、地面に穴が開いたのだ。

私はとっさに跳びあがろうとしたが、足の裏は地面を蹴れなかった。

「いや−−っ!」

「古の王」だけではなく、私もそのまま、黒い穴に引きずりこまれていった。

「ルーン!!」

跳びかかったソディが手を伸ばすが届かない。

「ルーン−−−−っ!!!!」

ソディの叫びが、誰もいなくなった空間に虚しく響いた。


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