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第4話 探索ツアー

俺とケインは相談した日から異世界の入り口と黒い腐敗に関して調べるべく、村にある書庫を調べた。

しかし、田舎の村ということもあり手がかりは皆無に近かった。

せいぜい村の近くにある谷では昔から行方不明者が多発しているというぐらいだ。

しかし、異世界の入り口がある場所では所謂神隠しのようなことが起こると言われている。

そのため、谷を調べてみるのは理にかなっているかもしれない。


俺とケインはさらに調べるために村から少し離れた町に向かうことにした。

村から約1日かけて歩いたところにあるイハルドという町だ。

森から少し離れた位置にある城塞都市。

町は魔物に襲われないように高く灰色な城壁で囲まれており壮観だった。

町でこの広さだからさらに遠くにある王都はどれぐらいの規模か想像も出来ないほどだ。

俺たちは町にある大きな図書館を訪れた。

誰でも自由に出入り可能、しかし本の持ち出しは禁止されている。

一応許可が下りれば持ち出しは可能らしいが、その許可がとんでもなく面倒くさいらしい。

蔵書数は約3万冊だそうだ。

日本の図書館を彷彿とさせる光景だ。

この世界では本を印刷する技術がないため、本は高価になりやすい。

ここまでの本を集めるのは相当難しいだろう。

しかも、無料でこれらの本を読んで構わないのだから、この図書館を作った人には頭が上がらない。

俺たちは異世界の入り口と黒い腐敗に関して手がかりを探すべく調べ始めた。

しかし、今度は蔵書数も多いことから目的の本を探すのが非常に困難だった。

そもそも俺たちが見つけたい知識が書かれた本があるのかも怪しいが、それ以上に本が多い。

日本のように本を検索できたりしないだろうか。

インターネットが恋しい。


『そういえば、リョウは元勇者と言っていましたがどうしてこちらの世界に転生したのですか』


ふとケインがそう聞いてきた。

全く進展がないためケインも少し飽き飽きしていたのかもしれない。


『言っただろ。覚えてない。そもそも転生といったけど俺は勇者だった時に死んだのかどうかよく分かっていないんだよ』

『しかし、その前の日本とやらの記憶はあるのですよね。もしかして前世の勇者として活動していた際に異世界の入り口を見つけて、魂だけこっちに来たとかはないですか』

『転生ではなく魂だけこの世界に転移してきたってことか』


言われるとその可能性もないわけではないのだろうか。

いや、ないな。

根拠はないがなぜか確信をもってそれは否定できる。

異世界の入り口とは言うが、別にワープしたりするわけではない。

異世界を転移する際は、まるで扉を開けて別世界に移動したような感覚だった気がする。

さながら○○○○ドアみたいな。


『それはないはずだ。そもそも魂だけで転移した場合なぜケインの体で目覚めたのか分からない。もし魂だけだったら今も魂のままこの世界を放浪していると思うし』

『そういうものですか。まあこれで異世界の入り口を見つけて実際に使ったとしても問題はなさそうですね』


ケインはそう言いながら他の本を探し始めた。

俺ももし別の肉体があれば手分けして本を探せるのに。

しかし、先ほどのケインの疑問は別として、俺の魂がなぜケインの体にあるのか。

それは今もなおずっと残っている疑問だ。


---


そこから先も俺たちは本を調べた。

1日中使ってもそれらしい文献を見つけることができない。

黒い腐敗は近年見つかったばかりなため資料として纏められていないのだ。

この町の図書館で黒い腐敗に関する資料が見つからないとなると、もはや王都にある国立図書館に行くしかない。

しかし、近年になって見つかった黒い腐敗に関する資料が王都にある可能性は低かった。

ただ、行方不明者が多発する場所が記載されていた物語は見つかった。


それはある冒険者が記録した冒険譚だった。

物語風に記載されており、世界各地を旅したものだった。

その物語には国が一夜で消えてしまった場所やたびたび人が消えてしまう地名が記載されていた。

ここに書かれているすべてが異世界の入り口によるものではない。

しかし、異世界の入り口によって発生した現象ではないと断言することも出来なかった。

人が消えてしまう現象には実際には魔物や魔力の暴走が考えられる。

ここに書かれている幾つかの事例がそれに当てはまるだろう。

しかし、この中にもし異世界の入り口が存在したら?

異世界の入り口を見つけることができたら、この世界を捨てることになるが多くの人々を生かすことはできる。

黒い腐敗に関する資料が見つからない以上、俺たちは冒険譚に書かれていた場所を巡ることにした。

しかし、全て巡ることはできない。

まずは村やこの町の近辺にある場所を調べてみることにする。

その道中で事前に黒い腐敗に侵された土や木の枝を採取しておき、黒い腐敗を止められないか旅をしながら色々実験してみる。

一度村に戻り、支度を整えて俺たちは異世界の入り口の探索を開始した。

黒い腐敗は村を少しずつではあるが飲み込み始めていた。


---


探索を開始して2週間。

俺たちは2つの候補地を巡った。

迷いの館と精霊の泉と言われる場所だ。

迷いの館は村から北西の位置にある場所だ。

距離はそう遠くなく、2日程度でたどり着いた。

その館は草木が生い茂っており、廃墟となっていた。

本によると館の一室に立ち寄って数時間が経過すると、人が行方不明になってしまうというものだった。

しかし、館の一室に入って数時間待ってみたが特に何も起こらなかった。

異世界の入り口らしきものも魔力の暴走らしきものも見つからず、待ちぼうけを食ってしまった。

もう一つの精霊の泉とやらはある特定の時間に池の中に入ると転移するというものだった。

結果から言うと転移自体は発生した。

しかし、それは魔力の乱れによるもので池の周辺に転移しただけだった。

ケインは驚いていたが、異世界に転移できないのであれば意味はない。

本に書かれている場所を他に巡るとなると今度はさらに遠くなってしまう。

そうなると、帰ってきたころには村はどうなっているのか見当もつかなくなってしまうため、俺たちは今後どうすべきか非常に悩んでいた。

俺たちは精霊の泉を探索し終えて、近場で野宿しようとしていた。


『黒い腐敗を止める方法も見つからず、異世界の入り口も見つからないとはどうしましょうかね』


ケインは少し投げやりになっていた。

正直俺も投げやりになってしまっている気がする。

なにせ何の成果もないのだから。

しかし、ここで投げ出してはダメだ。


『まだ異世界の入り口の候補は幾つかあるぞ。かなり遠い位置にあるから行く場合本格的な旅になるけど…』

『その前に、少しでも村の人が生きられるように村から移住させたほうがいいのではないでしょうか。一度村に戻り、物資をもってどこか安全な場所を探したほうがいいかと』

『そうは言うがケインも見ただろ。もはや森以外の至る箇所でも黒い腐敗はあった。以前訪れた旅人が言う通り、色んな場所で腐敗は起こっている。逃げるにしたってどこに逃げるんだよ。それに仮に安全な場所を見つけたとしても移住は簡単じゃない。人や物資の移送や場所の確保とか考えなきゃいけないことは多い』


俺たちは探索をしている最中に至る所で黒い腐敗を見つけた。

森の黒い腐敗よりも広がっている場所も数多くあり、どうやら国も緊急事態宣言を発令していたようだ。

そのことから考えるに恐らく国中が黒い腐敗に悩まされているのだろう。


『しかし、このまま何もしないわけにはいかないでしょう。それに黒い腐敗がない場所はきっとあります』

『いや、黒い腐敗がなかったとしてもその場所が黒い腐敗に侵されるのは時間の問題だろ。

もはや別の国に移動するとかの問題じゃない。別の大陸にでも逃げるでもしないと』

『それじゃ村の人たちはどうするのですか!』


ケインが怒鳴った。

あの温厚なケインが。

怒気のこもった声に俺はビクリとし、ケインも自身の予想外の声量に狼狽しているようだった。

俺たちはそこから沈黙してしまった。

正直どうすればいいのか分からなかった。

何をしても対処方法が見つからず、見つけたと思ってもそれは意味のないものであった。

しかし、冷静になったことであることを思い出す。


『そういえば、俺たちはまだ村の近くにある谷を訪れていなかったな。本には書いていない場所だが行方不明者が出ている谷だ。何かあるかもしれん』


正直もう無駄な気さえしていた。

しかしそれでも俺たちは一縷の望みに賭けてその谷へと向かった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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