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さがしもの

作者: ちあき

朝起きたら、ない!って時ありませんか

朝起きたらいつものあれがない。

眠い目をこすりなかわらベッドの下を覗き込む。

犬のジョンはどこから持ってきたのか私の青い靴下の片方をくしゃくしゃにしながらすやすや眠っている。

パジャマのボタンが寂しそうに一つ転がっている。

しかし、さがしものはそれではない。


パジャマのまま、のろのろと

キッチンに行ってみる。

冷蔵庫の中はどうだ?

昨日奮発して買ったプリンはいつ食べてくれるの?といいたげに真ん中の棚に大きな顔して座っている。

犬たちのおやつのきゅうりもたんまりあるが

ここにはない。

ひとまずコーヒーでもいれよう。

缶を開けたら香ばしいいい香りがした。

やかんに水を注ぎ湯気がで始めるあの音が好きだから、じっとキッチンマットの上でその時をくるのを待っている。

コポコポお湯を注いでゆっくりとコーヒーを飲む。

猫のマリーが撫でてほしそうに柔らかい毛並みを足にからめてきた。

しゃがみ込んで優しく撫で、ぎゅっと抱きしめたら、お日様の匂いがした。


そうださがしもの、さがしもの、

お庭かな、

パジャマの上からクタクタのカーディガンを羽織り、リビングの窓から親友から貰った下駄を履いて出てみる。

手入れをしていないラペンダーを

見ないふりしていたら

垣根越しにお隣さんが

家庭菜園した、プチトマトを籠いっぱいにくれた。

採れたてのトマト、今日の夕飯はトマトパスタにしよう。

お返しにお庭に咲きほこった

マーガレットをあげようとしたら

そのまま咲かせてあげてねっと

言ってくれた。

籠を抱えリビングに戻ったら

テーブルの上の携帯電話からメッセージを知らせる音が鳴る。

ちょっと思い出せそうだったのに遠のいてしまった気がする。

バスルームはどうだろう。

ついでに髪も洗っちゃえ。

ベルガモットのシャンプーをたっぷり手に取り耳の裏まで念入りにゴシゴシ洗う。

気持ちいい。

髪を乾かした後、ポストはどうかと門に向かう。

ポストの中には派手なピザのチラシに混じってイタリアで暮らす友人からの絵葉書があった。読みにくい癖のあるイタリア文字とキスマークがそこにあった。

リビングに戻るとジョンはもう絶好調でおもちゃのニンジンをブンブン振り回し、投げてくれとよだれまみれのにんじんのおもちゃを私の膝にちょこんと置いた。

それを見ていたマリーは子どもねっと言わんばかりにフンと鼻を鳴らす。

それを見ていた私は思わず吹き出した。

さがしものはもう手の中にあった。


幸せって本当は手の届くところにあります。

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