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それぞれのお買い物と幸せの飲み物

「ねぇねぇ、弓弦くん。これ、なぁに? とっても可愛い」


理央くんがお店に並べられた飾り物を見て尋ねてくる。


「ああ、これはね。クリスマスツリーの飾りだよ。ほら、クリスマスツリーのてっぺんに飾ってた星があったでしょう? あれと同じようにツリーに飾って可愛くするんだよ」


「あのお星さまかぁ。すっごく綺麗だったもんね。ねぇ、凌也さん、これ来年もつけられる?」


「ああ、もちろん。ここで買って毎年ツリーに飾ったらいつでもこの日のことを思い出せるな」


「わぁー、それ素敵っ!!」


「じゃあ、一つだけじゃ可哀想だからいくつか選ぼうか。理央が好きなものを選ぼう」


「凌也さんが好きなのも選んでください」


「ああ、そうしよう」


理央くんと観月さんがクリスマス飾りが並んだお店に入っていく。いいお店が見つかってよかった。


「クリスマスが終わっても飾りは売ってるんだね」


「ああ、また来年幸せな日を過ごすために今から準備しておくのも楽しいからな」


「そっか。僕も来年のクリスマスもエヴァンさんと幸せに過ごしたいな」


「ああ、もちろんだよ。私たちはいつでも幸せだ」


ギュッと抱きしめられて、頬が触れる。エヴァンさんの頬も僕の頬も少し冷たくなっていたけれど、抱き合っている身体はポカポカだから全然寒くない。本当に幸せだな。



「空良くん、どこか気になるお店あった?」


「うん。あのね、弓弦くんがリュカさんにあげたクリスマスプレゼントのコーヒーカップ。すっごく素敵だったから、お父さんとお母さんへのお土産にしたいなって」


「わぁー! それはいいね! きっと喜ぶよ」


「本当? そう思う?」


「うん、絶対喜んでくれるよ!」


「よかった! そのお店、どこか教えてくれる?」


「エヴァンさん、あのお店どこだったか覚えてますか?」


そういうと、エヴァンさんはすぐにそのお店を教えてくれた。さすがだな、こんなにいっぱいお店があるのに覚えてるなんて……。


空良くんと悠木さんはエヴァンさんが教えたお店に入り、楽しそうにコーヒーカップを選び始めた。


「いい贈り物が選べそうだな」


「うん。エヴァンさん、さすがだね。お店覚えているなんて! 僕、どこか全然わからなかった」


「ははっ。ユヅルは初めて来た場所だったから無理もない。あの時はもっと暗かったしな。でもユヅルが見つけたお店をソラが気に入ってよかったよ」


エヴァンさんって本当に優しいな。


「秀吾さん! 佳都さん! 楽しめてますか?」


「なんだか夜店みたいでドキドキするね。いろんなお店もあるし、歩いているだけでワクワクする。ねぇ、秀吾さん」


「そうですね。僕も母たちへのお土産探そうかな。将臣、どんなのがいいかな?」


「母さんたち、ストールとかどうかな? ほら、あそこのお店、良さそうなのが売ってるよ」


「わぁ! それいいかも!! 弓弦くん、佳都くん。ちょっと見てくるね」


そういうと秀吾さんは周防さんと一緒にお店に歩いて行った。


「ああ、いいなぁ。直己さん、僕たちも見に行こう!」


「そうだな。じゃあ、ロレーヌ。ちょっと見てくるよ」


直己さんが手を挙げると、エヴァンさんもそれを返し、二人がお店に向かうのを見送った。


「みんなそれぞれいい店が見つかったみたいでよかったな」


「うん、やっぱりここに来られてよかった」


「ユヅルも何か見なくていいか?」


「そうだね、僕もプレゼントを貰ったみなさんにお返ししたいな」


「それなら、あっちを見てみよう」


エヴァンさんが連れて行ってくれたのは、紅茶屋さん。


「アヤシロたちの母君はよく集まってお茶会をしているらしい。だからそこで飲める紅茶や日持ちするフランス菓子を送ったらどうだろう?」


「わぁ! それ素敵!! 紅茶の缶もとっても綺麗だし、飾るのも可愛いね」


「じゃあ、ユヅルの好きな香りの紅茶を選ぼうか。きっと喜んでくださるよ」


お試し用の香りを嗅ぎながら、僕が次々にこれがいい! というのをエヴァンさんはすべてバスケットに入れてくれて気づけば大量の紅茶が入っていたけれど、エヴァンさんはこれくらい大したことはないよと言って全て買ってくれた。


「買いすぎちゃったかな?」


「大丈夫だよ。余ったらうちで飲めばいい。ジュールが美味しく淹れてくれるよ」


「うん、そうだね」


この日のことを思い出しながらあのコンサバトリーでお茶をするのも楽しそうだ。みんなと離れるのは寂しいけれど、毎日思い出が増えていくのはとても楽しい。


「流石にちょっと冷えてきたね」


「ああ、もうすっかり日も落ちたからな。ユヅル、大丈夫か?」


「エヴァンさんのコートの中に入ってもいいですか?」


抱きかかえられている方がエヴァンさんと顔が近くて嬉しいけど、コートの中に入って歩くのはあったかくていい。


「わかった、だが絶対に離れないようにな」


「はい。大丈夫です」


理央くんが迷子になった話を聞いたら、ちょっと怖くなってしまったから僕は絶対にエヴァンさんから離れない。


だって、こんな場所で一人になっちゃったら絶対にパニックになる自信がある。


エヴァンさんは僕をそっと腕からおろし、ロングコートの中にスッポリと入れてくれたので僕は絶対に離れないように中でエヴァンさんの腰に両手を回して抱きついた。


「あったかい」


「そうか、それなら良かった。そろそろみんな買い物も一段落したようだから、少し休憩がてら何か食べようか」


「わぁー! ショコラショー飲みたいです!」


「本当にユヅルはショコラショーが好きだな」


「だって、エヴァンさんが僕に愛してるって言ってくれた朝に飲ませてもらったから、僕にとっては幸せの飲み物なんです」


「――っ!!! ユヅルっ!! そんなふうに思っていてくれたのか?」


「だって、僕の大切な思い出ですから」


「ああ、もう! なんて可愛いことを言ってくれるんだろうな!」


「んっ!」


突然エヴァンさんが屈んだと思ったら、僕の唇にエヴァンさんの唇が重なった。こんな大勢の人がいる中でキスなんて……恥ずかしいけど嬉しい。


「ユヅル……今日は寝かせられないかもしれないな」


「ひゃっ!」


そんなことを耳元で囁かれて力が抜けそうになってしまう。


「本当にユヅルは可愛い」


エヴァンさんは嬉しそうに笑って僕をギュッと抱きしめたまま、僕の髪にキスを落とした。



「弓弦くんっ!! お待たせっ!!」


嬉しそうな笑顔で理央くんが観月さんと一緒に駆けてきた。どうやらさっきのキスは理央くんには見られてなかったみたい。多分顔も赤くなっているだろうけど、この薄暗い中じゃ気づかれないかな。良かった。


「いい飾り見つかった?」


「うん、見てみて!!」


理央くんは買ったばかりの飾り物をいくつか出して見せてくれた。天使やサンタさんの飾り物。そのほかもキラキラと輝いていてどれも可愛い。


「たくさんあるね」


「うん、お父さんたちのお土産の分も買ったんだ。これなら毎年飾ってもらえるかなって」


「ああ、いいアイディアだね。あっ、これ!」


「そう! ユヅルくんのとお揃いの星見つけたんだ! あれ、ツリーのてっぺんですごく綺麗だったから印象に残ってたの」


理央くんの手のひらよりも大きな星。これが理央くんたちの家で輝くんだ。本当に距離があってもずっと繋がっていられる気がする。


「お揃いの飾り、とっても嬉しい!」


そういうと、理央くんも嬉しそうに笑っていた。



「弓弦くん! 理央くん!」


次に駆け寄ってきたのは空良くんと悠木さん。


「いいの見つかった?」


「うん、すごく綺麗なカップばかりで悩んじゃったけど、見つかったよ!」


「ねぇ、空良くん! 僕にもその店教えて! 皐月先生と絢斗先生のプレゼントにしたい!」


「ううん、いいよ! ねぇ、弓弦くん!」


「うん、後で一緒に行こう。先にちょっと休憩しようか、エヴァンさんとショコラショーの話してたんだ」


「ああー、そういえばお腹も空いてきた気がする」


「楽しいことしてると飲んだり食べたりするのって忘れちゃうよね」


そう言って笑っていると、秀吾さんや佳都さんも集まってきた。手にはいっぱい袋を持っている。


「わぁー、いっぱい買いましたね」


「うん、もう可愛いのがいっぱいで悩んじゃった」


「僕は母さんたちにストールを。とっても手触りが良くて素敵なものばかりでしたよ」


やっぱり二人とも買い物上手だな。僕はいつも悩んじゃうから、尊敬しちゃうな。


「あとは、ミシェルさんとセルジュさんかな」


ジョルジュさんとリュカはずっと僕たちの近くにいてくれているし、ミシェルさんたちはどこだろうなとキョロキョロしていると、


「ユヅルーっ!!」


と少し離れた場所で手を振っているのが見える。


「行こうか」


エヴァンさんにそう言われて、みんなでミシェルさんたちの元に向かうと、そこは飲食エリア。僕たちが座って食べられるように席を取ってくれていたらしい。


「ありがとう、ミシェルさん」


「そろそろ食べる頃かなと思ったんだ。ねぇ、注文しに行こう!」


「うん、行こう! 行こう!」


あっ、そう言えば理央くんが観月さんのために注文するって言っていたよね。上手くできるかな。

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