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あなたを解放してあげるね  作者: 青空一夏


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60 お鮨を食べようその1 (デリア視点)

 ペーン様はナサニエル様と仲が良くて、ゴロヨ小隊長の部下だ。そのペーン様と模擬戦後のお祭りで一緒にいた女性を、ひとめで私は平民ではないと気づいた。


 上品な可愛らしいお顔をしていたし、着ているワンピースが決定的だったのよ。色は茶色だったけれど、胸元と裾に見事な刺繍が施されていた。生地は独特の光沢があり、動く度に生地に織り込まれた金糸がきらりと輝く。かなり値が張るものだと思うし、髪につけたリボンの素材も似ていた。


(平民の方が着られるものではない。地味に見せているだけで、品質の良さは隠せないわね)


 どこで買い求めたのかを聞けば、やはりガーネット王国という異国の名前がでてきた。多分、ガーネット王国の貴族の令嬢だと思いながら会話を続ける。実際に行ったことはなくても、私は近隣諸国のことを大抵把握しているわ。


 ガーネット王国の地理と気候、歴史と文化、経済と貿易、宗教と慣習、そのような知識はそれほど深くはないけれど知っているつもりだった。


 なので、今回は私の持論をほんの少しお話した。高級リゾート地として開発していけば、成功するのではないかという内容だった。すると、その女性は涙ぐみながらお礼を私に言ったわ。


 愛国心が強いのは素敵なことだと思う。とりあえずお名前を聞いてみたら・・・・・・エレナ・エリザベス・ガーネットと名乗った。ガーネット王国の女王陛下のお名前はエリザベスだ。国名がラストネームは少し珍しいし、ミドルネームまで女王陛下なんて、王女にしかあり得ない名前だった。


 まさか、こんなところで一国の王女殿下にお会いするとは思わなかったけれど、屋敷に招待して仲良くしたいと思った。その後に、イシャーウッド王国にしばらくいたいと、ペーン様のことをちらちら見ながらおっしゃった。


(可愛らしい王女殿下の身分違いの恋なのね? なんとか応援したいわ)


 模擬戦からの帰りの馬車のなかで、両親にエレナ王女殿下のことを話した。


「エリザベス・ベアトリス・ガーネット女王陛下は革新的な方だという噂でした。王女を成長させるためにイシャーウッド王国に送ったのでしょうね。それにしても、魔法騎士団館のメイドとして入国させるとは、面白いわね」


「魔法騎士団に目をつけるのは悪くないぞ。平民寮のメイドとして在籍しているらしいから、新星のように輝く宝石の原石でも拾いにきたのだろう」


 お父様はすでにエレナ王女殿下のことを知っている口ぶりだった。この国でお父様が把握していないことは、おそらくなにひとつない。


「とても素敵なお話ですわね。宝石の原石が平民の男性ということですか。まるでおとぎ話みたい」


 私は異国の可愛い王女殿下が未来の夫を探しに旅をする空想に浸って、とてもロマンチックな気分になったのだった。



 ☆彡 ★彡



 お母様と私はおもてなしのメニューで頭を悩ませていた。特別なお料理を召し上がってもらいたいとお母様は考えたし、ナサニエル様はペーン様が恥をかかないようなメニューにしてほしいと望んでいた。


 その結果、メニューは東洋の国の『鮨』に決まった。これは最近グラフトン侯爵家に雇われた『板前の源さん』がもたらした画期的なお料理だったし、手づかみで食べるのがマナーだから、ペーン様にもぴったりだった。


 グラフトン侯爵家にお招きした当日、エレナ王女殿下は手土産を持っていらっしゃった。ガーネット王国のドレス用生地と、珍しいフルーツよ。そのような貴重な物をいただけて嬉しいと思ったのはもちろんなのだけど、私にお土産を用意してくださった心がなによりありがたいと思った。私が喜ぶとエレナ王女殿下も嬉しそうだったし、これから良いおつきあいができそうで、わくわくしてしまう。



 グラフトン侯爵家の食堂では、格闘家のように大柄で筋肉隆々の源さんが柄から先まで細長く、まるで騎士が持つ剣のように輝く刃の包丁を持っていた。


 エレナ王女殿下もペーン様もすっかり驚いている。源さんと大理石のまな板の上に置かれた魚の大きさに圧倒されていたのよ。


(さぁ、解体ショーの開幕だわ!)


「ご覧ください、この美しい刺身包丁。これが今夜の主役、まぐろを捌くための魔法の包丁です!」


 源さんが宣言しながら包丁を軽やかに振り、まぐろの頭部を見事に一振りで切り落とした。柔らかな脂身と淡いピンク色の赤身が、まるで宝石のように輝く瞬間に、私たちは息を飲んだのだった。






(→次話に続く)







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