20 今日が私の誕生日?(ナサニエル視点)
あ、ご挨拶が遅れました。
あけましておめでとうございます!
昨年は大変おせわになりました。
今年もどうぞよろしくお願いします<(_ _)>
拙い小説をお読みいただきありがとうございます。
読者様にとって幸多き年になりますように!
手渡された成績簿をじっくりと確認してみる。確かに見覚えのある内容だった
「間違いないです。これは私の成績簿ですね。まさか、私のものをそのまま使い回すとは思いませんでした」
「このことは知らなかったのかね?」
「はい、知りませんでした」
「ナサニエル君を婿にしたいと、スローカム伯爵夫人に申し出たがね。君は病弱で子供も作れないかもしれないと言われたよ。よくもそんな嘘がつけたものだ」
初めて聞かされる事実に唇を噛んだ。両親に好かれていないことは自覚していた。しかし、ここまでとは思わなかった。
「グラフトン侯爵家としてはスローカム伯爵家を訴えようと思っている。援助した金を自立した息子に払わせようとしたのも気に入らない。ナサニエル君には、これが自分の成績簿だと証言してもらいたい。君のかつての家庭教師も証言すると言ってくれたよ」
「お父様、例え酷い親でも自分を育ててくれた両親を裁判で追い詰めるなんて、優しいナサニエル様には無理だわ」
「いや、大丈夫ですよ。デリア嬢のためなら証言します。どうせ、私は勘当されましたから」
「ほぉーー。勘当されたのかね? それはめでたい」
「本当に良かったわね。あちらと縁がすっかり切れるのは、大変喜ばしいことですよ」
「ナサニエル様が勘当されたのではありませんわ。ナサニエル様の方からスローカム伯爵家を捨ててやったのですわ!」
満面の笑みで微笑むグラフトン侯爵家の人々に戸惑った。
「今日はナサニエル君の誕生日だな。ペトルーシュキン王国では『降誕祭』が行われている。今夜は必ず家族揃って食事をするし、プレゼントも贈り合うのだよ」
「申し訳ありませんが、私の誕生日は今日ではありません」
「あぁ、そんなことはわかっている。しかし、今日が新しい人生の門出だとしたら、ある意味もうひとつの誕生日だろう? 私には誕生日が四回ある」
「は? 誕生日がそんなにたくさんあるのですか?」
「そうだとも。まずは、妻と初めて出会った日。そして、結婚した日。デリアが生まれた日。あとは、自分が母上から生まれた日だな。ナサニエル君も私のように誕生日がたくさん増えるぞ」
なんて素晴らしい家族なんだろう。例え、繋ぎの婚約者役だとしても、この家族と一緒にいられることが嬉しい。
「ふふっ。私、ナサニエル様にプレゼントを用意しましたわ。あのね、侍女に教わって編んでみたのよ。手袋なんだけれど、使っていただけるかしら?」
私の心は温かく包まれ、涙が嬉しさを感じる証として滲みでていたのだった。




