表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/11

第6話 帰還の前に

三人が帰国を前にザナの街を精一杯楽しもうと、六人で再び街に出た。すっかりキーツに懐いたジュノとリア。

喫茶店で甘いものを食べ、デパートの服飾売り場を巡り、映画を見て、ゲームセンターで遊ぶ。


「また勝負しようよ。あれからだいぶ練習したんだ」

そう言って機動兵器のシュミレーションゲームで対戦するロディとサラ。ロディは手も足も出ない。

ロディは「やっぱりサラは強いや」

サラは「なんせ本物の訓練受けてますから」


ゲームセンターを出て公園のベンチに座る。一息つくとサラは言った。

「ねえ、アンナ、今まで聞きにくかった事なんだけど、別れる前だから。一つだけ聞いていい?」

「何かな?」とアンナ。

「アンナ達って、女日照りの中で男に育てられたんだよね? 育ての親とかは手を出さなかった?」とサラは問う。


アンナは「レイはそんな事しないよ」

「でも、そんな奴も居るでしょ?」とサラ。

「たまにはね」

そう言うアンナに、サラは「そういう子ってどうなるの?」


「親から引き離されて、養育施設に行くよ」

そう言って遠い目をするアンナは、向こうで三人の少年と歩く女の子を見つけて笑顔を取り戻した。



「あ、エリーだ。やっほー」

サラはアンナが駆け寄った四人を見る。

女の子はかなり男子達に懐いているらしく、隣の男子にじゃれている。反対側に居る別の男子が彼女の頭を撫でる。


アンナは四人を連れてきて、サラに紹介した。

「この子も、そういう親から離れて養育施設で育ったの」

サラは「そんな目に遭ったようには見えないけどね」

「養育施設には同年代の男子が大勢いるからね。みんなに可愛がられて、大抵ああなるんだよ」とロディが説明した。


しばらく彼等と話すアンナ達。



彼女達と別れると、サラはアンナに向き直って、改めて聞いた。

「それじゃ、結局ザナの男たちは飢えたまま、って事になる訳? だったら何のために女の子を育てるの?」

「癒されるってみんな言うけどね」とロディが答える。

「けど、男にとって女って性欲を満たすための存在・・・って、これも多分、ノーマに刷り込まれた偏見なんだよね。ごめんね」


そんなふうに自問自答するサラを見ていたキーツが不意に、思いついたように言った。

「ねえ、あそこを見せたらどうかな」

「けど、大勢で行く所じゃないよ」とアンナが困り顔で言う。

「俺がサラを連れて二人で行くよ。それまでみんなは喫茶店で待っててよ」とロディが言った。



ロディはサラを連れて、いかにも怪しげという感じの店に入る。

受付に「指定無しの会話オンリーで。それと彼女は見学という事で」と言い、奥に通される。


広い店内に多数の低い仕切りに囲まれた椅子とテーブル。あちこちで隣り合わせて座る男性と女性。

女性は皆、かなりの美人で、大人な雰囲気を漂わせているが、中には、いかにも子供という感じの小柄な女性も居る。

一組の男女が席を立つと、奥の部屋に消えた。



開いている所にロディとサラが座ると、一人の女性が来て、ロディの隣に座って、言った。

「若いわね。おいくつ?」

ロディが受け答えし、会話が弾む。

やがて女性はロディの肩に片手を廻し、太ももにもう一方の手を置いた。しばしばロディの頭を撫で、頬に触る。


サラは次第に苛立ちを感じ、ロディに耳打ちした。

「何? この人」

ロディはサラの耳元で「アンドロイドだよ」

サラは「まさか。普通に話してるけど」


「まあ、見ててよ」

そういうとロディは女性に、甘えた声で言った。

「俺って"あいうえお"でさ」

「そう、"あいうえお"なの?」

「それで友達が、"かきくけこ"してさ」

「へえ? "かきくけこ"・・・ねぇ?」

「そういうの、お姉さん的にどう思う?」

「解らないけど、ロディ君って可愛いから何でも許しちゃう」


唖然とした顔で二人を見るサラ。女性は甘えた表情でロディの左腕を抱く。



しばらく会話を続けた後、二人は店を出る。サラは不思議そうな顔でロディに聞いた。

「あの、さっきの"あいうえお"とか、何なの?」

「彼女達、会話で受け答えしてるように見えるけど、その内容を理解してる訳じゃないんだ。適当に相槌をうって、いかにも会話しているような感覚にさせるのさ」とロディは説明した。


サラは不満そうに「ふーん? それであのアンドロイド、セックスとか出来るんだよね?」

「そうだよ。一緒に奥に入った人、居たでしょ?」とロディ。

「ロディも、ああいうのを抱いたの?」


そう問うサラに、ロディは少しだけ俯くと、顔を上げて冷静な笑顔で言った。

「抱いたよ。男女の交わりってのがどういうものか、とりあえず知っておかないと、変な憧れが残って、女性とうまく向き合えないからね」



サラはそれを聞いて悲しそうに唇を噛む。しばらく俯くと、やがて顔を上げて、言った。

「私、ロディの部屋を見たい」

「いいよ」

そうロディが答えた後、二人は喫茶店でアンナ達に合流し、二人で養育施設に行く事を伝えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ