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第4話 お花畑で修理して

翌日、サラ達はヘルメス号を出た時の装備を身に付けて、宇宙艇不時着現場に向かった。

岩陰に隠れて崖から見下ろすと、ザナの調査隊が作業しているのが見える。作業服を着た中年男性達が忙しそうに働いていた。


その様子を見て、リアが困り顔でサラに言った。

「どうする? これじゃノーマに帰れないよ」

サラは「隙を見て奪還するわよ」



中にあった各種装備が次々に運び出され、作業台で調べられている。

「光学迷彩スーツが持っていかれちゃう」とリアが悲鳴を上げる。

ジュノが「あれ、武器と弾薬だよ」



やがて、運び出されて作業台に乗せられたピンク色のケースを見てリアが真っ青になる。

「あれ、私の日用品だ」

飛び出そうとするリアを慌てて他の二人が止めた。

「ここで騒ぎを起こして捕まったら終わりよ」


作業台でケースは開けられ、中を調べられる。小さな布切れが出て来る。広げると下着だ。

「あのオヤジ、許さん」

膨れっ面で息巻くリアを他の二人が必死に宥める。


次に水色のケースが運び出される。

今度はジュノが自分の日用品だと騒ぎ出し、飛び出そうとするのを慌てて他の二人が必死に止める。



更に黄色のケースが運びだされた。


今度はサラが騒ぎ出した。

「あれは絶対駄目」

飛び出そうとするのを他の二人が止めるが、サラは「いや、あれだけは駄目なの」と更に必死だ。

「何よ、自分だけ・・・」と、リアとジュノがあきれる中、ケースから小さな鍵付きの箱が出てくる。

よほど重要なものなのだろうと、作業員は工具を出してこじ開けようとした。


サラは「駄目」と叫ぶと、二人の制止を振り切って飛び出し、拳銃を乱射しながら突撃。

銃弾は調査官の一人が持っていた金属箱の鍵に命中し、地面に叩き落とされた。


サラは、離れた所に居た警備兵が撃った銃弾によって拳銃を叩き落とされ、男性達に取り押さえられた。

「放せよ、この変態」と叫んで暴れるサラ。

そこに、残念そうな顔で銃を突き付けられて歩いてくる他の二人。


サラの銃弾で叩き落とされた金属箱を調査官が拾う。

鍵が壊れて蓋が空き、中にあったものはバイブだった。

スイッチを入れると振動しながらうねうねと動く。



三人は町の警察署に連行され、別々の部屋で事情を聞かれた。

取り調べが終わると受付ホールに戻された。アンナとロディが迎えに来ている。


警官は言った。

「身元引受人は居るので、帰っていいです。宇宙艇はしばらく預からせてもらいます。サラさんは拳銃による傷害未遂の容疑がありますが、情状酌量の余地はあるようなので司法当局が判断する事になるでしょう」


各自の日用品のケースは返された。

そして警官はサラに「それと、これは君のもののようなので、返します」と、あの金属箱を差し出す。

サラは真っ赤になって「いらない」と突っぱねる。


「そうですか」と警官が言って引っ込めようとすると、サラは慌てて「やっぱり要ります」。

残念そうな目で見るジュノとリアに、サラは凄い目つきで「何か文句ある?」


最後に警官は、迎えに来ていたアンナに言った。

「本来なら公的施設で身柄を保護する所ですが、そちらで友好的な関係が出来ているようなので、このまま預かってもらおうと思います。粗暴な行動に出ないよう監視をお願いしたい。当面の彼女達の生活費は支給するので、普通の服とか買ったらいいと思いますよ」



アンナの家に帰る途中、彼女はサラに聞いた。

「それで、あの箱って何が入ってるの?」

「それはね」とジュノとリアが笑いながら言いかけると、サラは凄い目つきで「言ったら殺すからね!」


家に着くと、サラは部屋に篭って布団にもぐった。夕食の支度が出来ても「要らない」と言って出ようとしない。

「いい加減出てきなよ」とジュノとリアは苦言を言う。

サラは布団の中から「私のこと、笑ってるでしょ」



翌日、ロディとキーツが様子を見に来た。

「話は聞いたよ」とキーツの声。

「あの箱の中身、親の形見なんだってね」


サラはそっと布団から頭を出して、男子二名の後ろに居るジュノとリアを見る。そして(誤魔化してくれたんだ)と・・・

ロディは言った。

「俺達、施設で育ったからさ、家族なんて、そんないいもの無かったからね」


ようやく布団から半身を出すサラ。

「そうなんだ。けど私にも、もう家族は居ないわ。ジュノもリアもね。居なくなっても、誰も気に留める人が居ないって事で、私達は偵察隊に選ばれたの」


あのキーツの整った顔立ちが、憂いを含んだ目で、自分を心配してくれるのを見て、サラは"悪くないな"と思った。

「明日、みんなで遊びに行こうよ」とロディが言う。

「いいよ」とサラは一言。



翌日、ノーマから来た三人はアンナ達三人と街に出た。

ショップを見て回り、至急された生活費で普段着を買った。様々な衣服がに並んだ中から手に取ってファッション談義。

「これ、良くない?」

「こっちが可愛いよ」


店で食事をし、公園を歩き、ゲームセンターで遊ぶ。

隣にはノーマには存在しなかった若い男性。ロディは屈託なく彼女達に話しかけ、サラはキーツの笑顔に胸が疼いた。

ジュノとリアは彼等に懐き、キーツの両側に陣取って、その両腕にじゃれつく。



ゲームセンターでは、いくつもゲーム機が並ぶ。その中に、機動兵器のコクピットを簡易化した戦闘シュミレーションゲームがあった。

戦闘シュミレーションゲームはロディもキーツも遊び慣れていたが、ノーマ組の女子達には手も足も出ない。


ロディは困り顔でサラに「何でそんなに強いんだよ?」

サラは自慢顔で「私達、これでも兵士として訓練受けたプロですから」

「そうだったね。こんな遊びでやってた訳じゃなかったんだね」とキーツが言った。


一気に沈む空気の中、それに耐えかねたアンナが声を上げた。

「ああ、もうさ、今までの事はいいじゃん。三人とも、今は楽しいでしょ?」

「とっても。ノーマにこんな所、無かったし」とサラ。

「それに男の人も居るし」とリアとジュノがキーツの左腕に抱き付いて甘えた。



「そうか。女だけだったんだよね。だから、ああいう物も必要なんだよね」とキーツが言う。

サラが怪訝顔で「ああいう物って?」

「サラのお母さんも使ってたんでしょ? あのバイブ」とロディが言った。


サラしばし唖然。

そして真っ赤になってジュノとリアに「あんた達、喋ったの?!」

そんな彼等を見て、アンナはあきれた顔で言った。

「ロディもキーツもデリカシー無さすぎ!」

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