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第3話 僕等はみんな平和ボケ

当面の居場所にと、サラ達は空き部屋を提供された。

食事を終えて部屋に篭り、作戦会議。


先ほど見たニュースを思い出して、ジュノは言った。

「ノーマの仕業ってバレちゃったよね」

「こうなったらサンプルからの情報収集を・・・」

そう言い出すサラに、リアは「いきなり最終段階かよ」


「もう、さっさと帰還しようよ」とジュノ。

サラが「既に大失敗なのに、これで帰ったら懲罰モノだよ」

するとリアが「こうなったら、価値のある情報を集めて成果を出すしか無いよ」

「そんな都合のいいネタなんてあるの?」とサラ。


リアは言った。

「あるよ。国力を軍備より文明再建に全振りして、戦争なんかする気の無い平和ボケ国家になってるって事でしょ?」

「つまり今、ノーマから攻め込んだら、無防備なこんな星、一ころって事だよね」

そう言って身を乗り出したサラに、リアは「じゃなくて、ノーマ侵攻の危機は無いって事だよ」

「それだ!」とサラとジュノは声を揃えた。



翌日、三人はザナの現状調査を開始した。

但し、情報源はアンナが提供したファッション雑誌の山とテレビ番組。

傍から見れば、雑誌とテレビに噛り付いて雑談に耽るお気楽な女子会と変わらない。


「この星、何でこんなに文明化してるのよ」

そう膨れっ面で言うサラを他所に、テレビのチャンネルをあれこれ変えるリアとジュノ。

「これ、ファッション番組だよ」とリアがはしゃぐ。

「普通、こういう世界の住人って女性の筈でしょ?」とサラの不満声。

「このお菓子、美味しそう」とジュノが画面を見てはしゃぐ。


理不尽な現実に不満たらたらのサラと比べて、リアとジュノは順応が早い。

「男ばっかりだったザナが何で・・・」とサラの苛立ち声。

「あ、アニメなんてやってる」


リアが見つけたアニメ番組はSF作品だった。

機械だらけの埃っぽい世界で、集団で肉体労働や軍事訓練に明け暮れる、全員マッチョな男の汗臭さが漂ってくるような画面を見ながら、ジュノとリアは笑う。

「まるでノーマみたい」


「おかしいでしょ。現実じゃ女の世界があれって」とサラが憤慨する。

ジュノは「仕方ないよ。ザナが攻めてくるとか言って、武器製造やら軍事訓練やらに国力全振りしてるんだから」


「それより明日、街に偵察に出ない?」と既にうきうき気分のリア。

サラは「大っぴらに現地人と接触する気?」

「大丈夫だよ。私達みたいな次世代女子がゴロゴロいるんだから、ノーマ人だってバレない筈だよ」とジュノは言った。



翌日、アンナから借りた古着を着て三人は街に出た。

道行く中年男性や若い女の子が次々に声をかけて来る。

「レイさん所のノーマの子かい?」

「アンナちゃんから聞いたよ」


どうやらアンナがあちこちで言い触らしているらしい。

慌てる3人だが、警戒心ゼロの住民たちを見て、サラ達も気分を張り詰める事を次第に馬鹿らしく感じた。


「けど、次世代って女ばっかりみたいね」

そんなジュノの疑問にサラが解釈をつけた。

「そうだろうね。あの家みたいに元女日照りが子供育てるって言ったら、絶対女の子希望するだろうからね」

「って事は、ザナに若い男性なんて居ないって事か」とジュノ。

「だったら、いずれノーマと同じ女の星になるって事かな?」とサラ。


リアが一軒の喫茶店を見て「この店、何だかお洒落」

「入ってみようよ」とジュノがサラの手を引く。



店に入ると店員が居た。

「いらっしゃいませ」

若い男性である。年代は自分達と同じくらいか。

「アンナの所に居るノーマの人だろ?」と彼は三人を見て言った。


サラは「あんたも人工子宮で?」と彼に・・・。

男性は「何か変かな?」

「いや、作るのは女子だけかと」とサラ。


彼は言った。

「次世代社会維持するには男子も必要だからね。ただ、個人養育の希望者が少ないんで、大抵養育施設で育つけどね」



その時、奥から店員が出てきてサラ達に声をかけた。アンナである。

「あんた達、外出歩いて大丈夫なの?」


「そう思うんなら、何であちこちで言い触らしてるのよ」と困り顔で言い返すサラ。

「こんな面白い話、人にしゃべるな、って言う方が無理」とアンナは笑いながら言う。

サラは頭痛顔で「これでも私達、いちおうスパイなんだけど」

「ここに知られて困るような事は無いと思うよ」と男性は笑った。


「アンナ達はここで何してるの?」とリア。

「18才までは学校教育なんだけどね、15才になると半日づつ就業時間があるのよ」とアンナが説明。

サラは男性を見て「つまりそっちの彼はアンナの同僚って事ね?」

「俺はロディ。学校でもアンナのクラスメートだよ」と男性は名乗った。



いかにも軽そうなロディがサラ達にあれこれちょっかいを出す中、奥からもう一人の男子が出て来て言った。

「ノーマから来た女の子だって? どうせ男に対して偏見丸出しの・・・」


いかにも不愛想な、その同世代男子の整った顔立ちに、サラ達三人が見とれる。

だが、男性に慣れていないノーマの女子達は、彼を見て高まる動悸が何なのか理解できない。

「キーツを始めて見た女って大概ああなるよね」とロディは笑った。


やがてサラが何かに気付いたように、声を上げる。

「思い出した。大戦争になる前の世界に、イケメンっていう特殊能力を持った男性が居たって。女性の精神を操って、食べてしまうとか」


露骨に自分に警戒の目を向けるサラを見てキーツはあきれて言った。

「男は女の生き胆を食べる鬼か何かだとかノーマの教科書にでも書いてあった?」

「食べるのは生き胆だけ?」と真顔で言うサラ。

「はぁ?」とアンナたち三人はあきれて笑った。

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