第2話 無知との遭遇
サラ達三人は、移動用の小型ビーグルに乗り込み、最も近い所にある集落に向かう。
近くにある森にビーグルを止め、岩陰から双眼鏡で家並の様子を伺う。
双眼鏡を覗きながら「どう見ても普通の集落ね」とサラは言った。
その時、背後から「あなた達は?」と呼びかける声。見るからに同年代の少女だ。
条件反射的にリアは声の主に銃口を向ける。それを慌てて止めるサラ。
そして「現地人との接触は厳禁よ」
リアは「目撃者に対しては口封じが必要だよ」
「本星司令部の許可が必要なんじゃ・・・」とジュノ。
「あなた達、ノーマから来たの?」と彼女は再び声をかけた。
サラは唖然とした顔で「何でバレた?」
「今の会話聞いてりゃ解るでしょ」と溜息をつくリア。
「臨時ニュースで言ってた不時着船の人達でしょ?」
そうサラ達に言った、彼女の名はアンナ。父親と暮らしているという。
サラは「ここって元々男囚星よね。って事はその父親ってのが元囚人って訳?」とアンナに・・・。
「怖い人じゃないよ」とアンナ。
リアは「けど20年も女日照りの猛獣でしょ?」
「いや、女、居るじゃん」とジュノが突っ込む。
「それより、こんな所見られたら怪しまれるし、とりあえずうちに来る?」
そうアンナに言われ、三人は顔を見合わせた。
アンナの後について集落に入る三人。
表通りにはやはり中高年の男性が目立つが、パイロットスーツに身を固めた三人の少女を誰も気に留めない。
歩きながら三人はひそひそ話。
ジュノが「何でこの星に女が居るのよ」
「ってか、こいつ本当に女?」とリア。
まもなく裏通りに入り、一軒の建物に着く。
玄関から居間に入る。テーブルと椅子と家具がいくつか。奥に入る入口と収納ケース。
「ここが私の家よ。裏の作業場にお父さんが居るから、呼んで来るね」
そう彼女たちに言うアンナにサラは「その前に、貴方、本当に女?」
「そうだけど」と怪訝顔のアンナ。
「確かめさせてもらうわよ」と言って三人はアンナを押え付けて、服を脱がしにかかる。
「何するのよ」
そう言って暴れるアンナにサラ達は「良いではないか」
半分ほど衣服を剥がされて膨れっ面のアンナ。
「女だったね」と言って顔を見合わせる三人。
「だから、何なのよ」と言いながら服を着直すアンナ。
サラは言った。
「この星って元々男囚星で女性は居なかった筈でしょ? 次世代を産む母胎も無い筈なのに・・・」
その時、入口から一人の中年男性が入ってきた。
「あ、お父さんだ。珍客が来てるよ」とアンナが男性に・・・。
「どこに居るんだ?」と男性、怪訝顔。
いつの間にかサラ達三人の姿が消えている。
アンナは「ノーマから来た不時着船に乗ってた女の子だよ。ザナの男性を警戒してたみたいだから、どこかに隠れたのかも」
「時計の中とかに隠れてないだろうな?」と男性は笑いながらテーブルの下を覗いたり収納ケースを開けたり・・・。
アンナが「何もしないから出て来なさいよ」と奥に呼び掛けた。
そして拳銃やらナイフやらを構えて奥から出て来る三人に「そんな物騒なもの、しまいなさい」
男性の名前はレイ。
彼が先ほどのサラの疑問に答えて言った。
「ああ、それね。人工子宮だよ」
「それを男性のお腹に移植するの?」とジュノ。
「じゃなくてさ、設備の培養槽の中で受精卵から胎児を成長させるんだよ」とレイ。
サラは目を丸くして「ザナはそんなもの開発したの?」
「大戦争前から技術はあったよ。けど、反対があって実用化を禁止されたんだよ」とレイは笑いながら言った。
リアは「誰が反対したの?」
「女性団体だよ。出産という神聖な自然の節理を汚す神への冒涜だって」とレイ。
「どんな奴等よ。そんな馬鹿な事言うのは」とリアはあきれ顔で言う。
「ノーマ執政委員会の婆さん達みたいな人達でしょ?」とジュノ。
「確かに、あいつらなら言いそう」とリア。
サラは「けど、それでクローニングするにしても、女性を作るには女性の遺伝子が必要だよね」
レイは言った。
「男性が持ってるんだよ。性遺伝子は男性でxy、女性でyy。男性のy遺伝子を二つ合わせれば女性遺伝子になるんだよ」
そんな会話を横目に、アンナはテレビをつけた。
ニュースが流れている。
「20年間音沙汰の無かった星から珍客です。ノーマから送り込まれた工作艇が発見されました。秘密裡に情報を収集しようとしたようですが、それで着陸に失敗。笑っちゃいますね。では次のニュース・・・」
サラ達三人は唖然。そしてサラは膨れっ面で言った。
「私達の決死の作戦のニュースバリューが、たったこれだけ?」




