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第1話 甲鉄の乙女たち

人類が宇宙に進出して数百年。

星々に進出し開拓を進めて手に入れた広大な人類の生存圏は、宇宙戦争によって、あっけなく滅亡した。

唯一戦火を逃れたのが、辺境の流刑地とされたザナとノーマという双子惑星だった。


それぞれ男囚星と女囚星だった二つの星の間では対立が生じた。

人類文明の再建のため男女の共存を・・・というザナの提案に対して「自分達にレイプされろという事か」と、ノーマの女囚たちは反発し拒否したのだ。

そして二つの星は関係を断ち、通信も途絶えて別々の惑星国家としての道を歩んだ。

ノーマでは女体を求めて侵攻して来るであろうザナとの戦争に備えた軍事国家の道を歩んだ。

そしてザナでは、人工子宮により次世代の養育を進めつつ文明の再建を目指した。


やがて二十年が経過。

ノーマは、一向に侵攻の気配を見せないザナの現状を探るため、三人の少女兵を偵察隊としてザナに派遣した。



宇宙艇ヘルメス号のコクピットは広くない。

ここで操舵管を握っているのがジュノ。今年で13才になる。

広域レーダーを監視し、捉えた電波の解析を担当するのがリア。今年で14才。

コマンドシートに座っているのが最年長のサラ。17才だ。


「もう一度確認するわよ。ザナの現状に関しては一切が不明で、どんなのが居るかも解らないの。私達みたいなのが見つかったら、先ず性欲の餌食にされると思うべきね。だから住民との接触は一切禁止。いいわね」と、年長者意識で場を仕切るサラ。

「どんなのが居るかも・・・って、要するに囚人やってたオヤジでしょ?」と、些かやる気無さげに言ったのはリア。

「しかも20年も女日照りの猛獣ばっか」と笑いながらジュノが言った。

リアは「逆にイライラ募った挙句、内輪揉めで殺し合って全滅してました・・・とか」

ジュノが「だったら楽でいいんだけどなぁ」


そんなふうに軽口で応酬するリアとジュノにサラは溜息をついて言う。

「楽観は禁物よ。私達だって人工精子で科学的に次世代作った成果なんだから、男だって似たような事やってないとも限らないからね」

「いや、人工卵子作ったって、母胎が無きゃ・・・」とリアが突っ込む。


サラは「とりあえず、先ずは見つからずに視覚センサーで居住区の様子を記録。次に通信データの採取。最後に住人サンプルを捕獲して、供述を絞ったら脱出」

「見つからないで活動するための光学迷彩スーツだものね。けど、やっぱりサンプルは、終わったら殺すの?」とジュノ。

「仕方ないでしょ? 生かして返せばノーマの仕業ってバレて、戦争の引き金になり兼ねないんだから。苦しまなせない薬物だって使うんだし」とサラ。

「それで軍備とか解るのかなぁ」とリア。

サラは「それは次の段階よ」



ザナは基本的に惑星全体が乾燥し、荒れ地が多いが陸地は広い。地下には水資源が豊富なので、気候はきびしいが開発は可能だ。

ノーマは逆に地表の多くが海に覆われ、気候は穏やかだが陸地は狭い。


大戦前の古い地形データをもとに、ヘルメス号が侵入し着陸して船を隠匿するコースを飛行する自動航行のプログラムが組まれている。

大気圏侵入ポイントから一定距離を、レーダーに捕捉されないよう、地形の陰となる所を低空飛行で抜ける。

もちろんザナの警戒態勢は不明だ。軍事偵察衛星があるとしたら探知される可能性は高まる。

電波情報の収集に神経を配るが、衛星の影は無い。

地上観察情報の取得を急ぐ。船の隠匿ポイントはかなり先だ。


その時、リアが緊張で張り詰めた声を上げた。

「地上レーダー波を感知。発見されちゃう」

「大丈夫よ。地形の陰に入ったから」

そう言って、何とか冷静さを保とうと、楽観視にしがみつこうとするサラ。

「その地形、変ってなきゃいいけど」とジュノ。

「山崩して造成するとか? まだ20年よ」とサラ。

「もう20年、って考え方もできるけどね」とリアが言った。


「どうやら甘かったみたい」とジュノが声を上げる。

ある筈の丘陵が崩されている。そして通過する予定の大クレバスが埋められている。

自動操縦のコースを飛ぶヘルメス号は、クレバス跡に突入して地面と接触した。



大クレバスを埋め立てた跡地に不時着したヘルメス号。クレバスの名残の崖はあるが、そう高くは無く、反対側に遮蔽物は無い。

「飛べそう?」と心配そうに言うサラ。


リアが機体状況をチェックするが、動作不能個所の表示がモニターに多数。

「無理ね。修理が必要だけど、資材も設備も無いし、そもそも私達の中に修理とか出来る人、居ないでしょ」と言ってリアは溜息。

「どうするのよ」とジュノが心配声を上げる。


サラは「本星からの救援を待つしか無いわね」

「それまでに見つかると思うわよ」とリア。

「大丈夫よ。崖の陰になってるし」とサラは必死に強気を保つ。

「反対側からは丸見えだけどね」とジュノ。


サラは言った。

「とにかく、救援が来ないとどうしようも無いなら、やる事は一つ。それまでに少しでも作戦を進めておく事。行動開始よ。先ず、作戦のための装備をチェックしなきゃ」



三人で装備室に向かった彼女達は、まもなく現実の厳しさに直面した。


リアが収納管理機器を確認。

そして「装備の調整機能が完全にダウンしてるよ」とがっかりした声で・・・。

「光学迷彩は使える?」とサラ。

「無理でしょ。これ、微調整の塊みたいなものよ」とリア。


ジュノは「居住区に入れないじゃん」と悲鳴に近い声で・・・。

「外側から観察するしか無いわね。あと通信データの収集は出来るんでしょ?」とサラ。

「拾って記録は出来そうだけど、解析は無理ね」とリア。


サラは二人に号令した。

「とりあえずやれる事は限られているけど、やれる事からやるしか無いわね。先ず、集落の外側からの光学観察よ」

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