第3話
「.........き............い。」
ん?何か...声が聞こえたような。気のせいか?
眠い...寝よう。
「お...き......ださい。」
また声が聞こえた...これは気のせいじゃないな...誰だ?
「起きてください!」
「ん?...ああ、ふっんぁ〜~......おはよ。」
ぜんぜんに目が覚めでないけどひとまず挨拶しておく。
だいぶ変な事をしている自覚はあるが頭が働かずおかしなことを言ってしまった。
俺を起こしてくれた子は14歳くらいの女の子だ。
黒髪ロングのなんというか...委員長系の女子な雰囲気がする。可愛い。
「え...えっと、おはようございます?
そ、それより!どうしてこんな所で寝てるんですか?ここは魔物が出没する地帯なんですよ!」
その一言で海斗は完全に目が覚めた。
えっ?ここって魔物が出るの?
やば!!良く寝てる間に魔物に襲われなかったな...運が良かった。
「まじですか...起こして下さり誠にありがとうございます。
何かお礼をしたいのですが...。
お金しかありませんがよろしいですか?」
この女の子が起こしてくれなかったら俺はここで死んでいたかもしれない。
だから、できる限りはこの恩を返したい。
海斗がそう言うと女の子は驚いた顔をして顔と手を横に振った。
「い、いえいえ!お金は貰えません。
人を助けるのは当たり前ですよ。だから、お礼なんていいですよ。」
女の子はお礼はいいと断った。
......なんていい子なんだ!
でもなぁー、お礼しないのは俺がモヤモヤするなぁー。
「いえ、それだと俺がちょっと嫌なのでお願いします!
お礼をさせてください!」
俺は日本人なら誰もが一度はしたことがあるだろう土下座をしてお礼をさせてくれと頼んだ。
そうすると、女の子はちょっと引いたような顔をして渋々了承してくれた。
「お礼なら、商業街まで護衛して貰えませんか?
私は、とある事情で一ヶ月以内にあそこの馬車に積んでいる商品を全部売らなくてはならないので...盗賊などに襲われて商品を奪われたら生活できなくなるのでお願いします。
私の名前は シライ・ノワと言います。短い間ですが宜しく御願いします。」
「俺の名前は イシガキ・海斗です。ノワさん宜しく御願いします。
商業街まで護衛でよろしいんですね(商業街ってどこにあるの!?ここに来て一日も経ってないから何も分からないんだけど...。)
では、俺は馬車の横を歩いて護衛するので早速出発しましょう。」
だ、大丈夫かな?俺まだ1レベでステータスも一般人並...スキルは強いけどいきなり実戦とか...怖いな。
海斗が魔物との戦闘になった時のことを考えているとノワさんが声を掛けてきた。
「何言ってるんですか?カイトさんも乗るんですよ?
歩いてたら疲れるじゃないですか。」
えっ...この子天使?密かに歩くのめんどいと思ってたからラッキー!
「ありがとうございます!それでは失礼します。」
海斗がノワの隣に座るとノワが馬車を動かした。
どうか魔物がでませんように!!
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あれから多分二時間は経っただろう。
ノワさんと喋りながらだから退屈じゃないけどおしりが痛いし護衛をしてるのに仕事がなくて何か申し訳ないな...。
そんなことを思っていると二十メートル先の茂みがピクピクっと動いた。
すかさず海斗はノワに馬車を止めるように言う。
「ノワ、馬車を止めてくれ...もしかしたら魔物かもしれない。
近くまで行って確認してくるから待っていてくれ。」
ノワは素早く馬車を止めて言った通り待機してくれた。
さて、茂みの向こうにはなにがいるんだ?
海斗が不安と期待を胸に茂みに近づいた。
その選択が最悪の選択とはしらずに.....。
「さぁーて、茂みにいるのはどんな魔物かな?」
海斗がすぐそこまで近づいた瞬間茂みから大きな影がこちらに向かって飛んできた。
「!ぶっな!?何だ!?」
間一髪避けた海斗が影の方に目を向けるとそこには虎の見た目をした魔物がいた。
でも、虎と似ていてもある所がものすごく違う。
それは、羽が生えていてサーベルタイガーのような牙が生えているのだ。
「おいおい......流石にやばいだろこれ...!!」
海斗も危機感を覚えて思わずそう叫んだ。
クソっ!どうする...ますはノワに逃げるように指示しなくちゃ。
「ノワ!!逃げて誰か助けを呼んできてくれ!」
ノワに助けを呼んでくれと行ったらノワは慌てた様子になり
「カイトさんを置いていくなんてできません!
一緒に逃げましょう!」
海斗に一緒に逃げるように促した。
でも、不可能だ。虎の魔物は見ただけでわかるとうり速度は早くとてもじゃないが逃げられない。
「無理だ!早く行ってくれ!
俺もノワさんが遠くまで逃げたのを確認したら急いで逃げる!」
そう言うとノワは街の方に急いで馬車を走らせた。
嘘だ。ノワさんを逃がせても俺が逃げることは無理だろう。
さっきから鑑定をしているが名前以外見えない...という事は相手は自分よりも強いという事だ。
「はぁ...こういのって面倒臭いから避けたいんだけどなぁー......でも、恩をここで返したいし!頑張って戦うか。
さぁ!こいアンチタイガー!俺が消し炭にしてやる!」
「GAAAAAAAAAA!!」
アンチタイガーが雄叫びをあげると同時に海斗に向かって飛び込んできた。
その速度はあまりにも早く海斗は完全に避けられずに左腕に切り傷がついた。
「いって...どうするか...流石に普通にやったら勝てないな...。
ふぅ...スキルを上手く使って助けが来るのを待とう。
イクゾ!{弱体化}{成長}{分身}!! 」
海斗は相手をまず弱体化させて勝った時のために成長を使い、分身で三人の自分を呼び出した。
そして、海斗は武器生成をするために自分の知っている最強の武器を想像した。
(俺が知っている中で最強の武器は魔王剣だ...俺が昔やったゲームの剣...効果はMP増幅、HP増幅、速度向上、力向上、こんな感じだったか?他にもあったような気もするけど今は時間が惜しい...後は切れ味もすごくて赤と黒の二色の色の剣だったな...。)
海斗が武器の想像を完了すると空中からドス黒い渦が現れて想像した通りの剣が空中に浮き出た。
それは、禍々しくいかにも強そうな剣の見た目をしていた。
「すごいな...これだとなんとか時間を稼げそうだ。
待たせて悪かったな...ふぅ...。」
海斗が一息つくと虎に向かって斬りかかった、弱体化を使ったおかげでさっきよりも動きが遅くなっている。
それに、分身達も素手ではあるが攻撃してくれている。
分身の武器も作りたいけど時間が無い。
海斗が剣で攻撃をしていると最初は当たっていたけど段々当たらなくなってきた。
そう...アンチタイガーが海斗の剣筋を見抜いたのだ。
海斗は剣を握って振るのは初めてで攻撃パターンが同じ...だからアンチタイガーに見抜かれた。
段々と攻撃が当たらなくなり海斗が危機感を覚え始める。
「やばい!!攻撃が当たらなくなっている...。
魔法を使いたいけどどんな魔法が使えるかしらねぇーよ!
クソっ、ダメ元でファイアーボールを打ってみよう。
〖ファイアーボール〗」
ダメ元でファイアーボールを打つと手から火の玉が出てきてアンチタイガー目掛けて飛んで行った。
ファイアーボールが当たるとアンチタイガーが苦しそうな顔をした。
ん?もしかしてアンチタイガーの弱点は炎なのか?
...それなら!アリア様の加護を使って致命傷を一度無効化して口の中にファイアーボールを打とう...チャンスは一度だけだ.......失敗するなよ!海斗!
「GAAAAAAA!!!」
「こい!」
アンチタイガーが攻撃を喰らって怒ったらしくてこちらを一直線に走ってきた。
なんて都合がいい!これなら口の中を狙いやすいな。
アンチタイガーが攻撃してきた同時に海斗は今あるMP全てを費やしてアンチタイガーの口目掛けてファイアーボールを打った。
「いっけぇーーー!!〖ファイアーボール〗!!」
海斗がファイアーボールを放つとアンチタイガーが横に移動してファイアーボールが当たらなかった。
そう...失敗したのである。
「くそっ...もう少し慎重に狙えば...てか攻撃しながら横に移動ってやばすぎだろ...。
何あれ?魔物のスキルかなんか?
アリア様のカゴもなくなってどうしよう......。」
そう考えている間にアンチタイガーがまた攻撃をしてこようとしてきた。
「ダメだ...俺はここで死ぬんだな。ノワは逃げれただろうか...。
逃げられていたらいいな。」
海斗が死を覚悟すると何処からかファイアーボールが、飛んできた。
「誰だ!?」
海斗がファイアーボールが飛んできた方向に向くとそこには四人の男女がいた。
見るからに冒険者っぽい格好をしていた。
すると、冒険者の後ろからノワがヒョコッと出てきた。
「の、ノワ!といことはこの人達は助けに...」
「ぼーっとしてないでこっちに来い!邪魔だ!」
俺が呆けていると冒険者のリーダっぽい人が邪魔だからこちらに来いと言ってきた。
俺は言われた通りにすぐさまノワのいる所に逃げた。
すると、冒険者?達は前衛と後衛にすぐさま分かれて前衛は剣でアンチタイガーを攻撃しにいく。
「は、はやい...目で追うのがやっとだ......。」
その冒険者?達を見ていると明らかに海斗とは実力差があるのが一瞬で分かった。
後衛は炎の魔法でアンチタイガーを攻撃した。
海斗のファイアーボールよりも大きく早い。海斗は圧巻されるばかりだった。
「GAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
冒険者?達の攻撃を受けて苦しみだす、すると突然アンチタイガーの様子がおかしくなり見た目が変わっていった。
「やばい!こいつはアンチタイガーの変異種だ。
この姿になったら俺たちでも厳しい...そこの二人!逃げろ!」
さっきと立場が逆だな...。
......!!そうだ、俺の固有スキルの封印を使ったら...アンチタイガーのHPも半分以下だと思うし...一かバチか試してみるか!
「冒険者さん達!俺に任せてください!俺は封印の固有スキルが使えます!」
「なに!その固有スキルは.......いや、話は後だ、本当にできるのか?嘘なら今のうちに前言撤回してくれ!」
「嘘じゃないです。本当に持ってます。信じてください!今だけでいいので」
「......分かった!死んでもしらねぇーぞ!
おい!タチ!離れるぞ!メイとアイも魔法をやめろ!」
「「「了解サム」」」
「さぁ!いけ!」
その言葉とを聞いて海斗はアンチタイガーに向かって走り出した。
アンチタイガーが海斗を攻撃をした。
でも、何故か無効化された。それは、貯めで貯めておいたアリアの加護が発動したからだ。
「うぉぉぉぉぉ!!!いっけぇぇぇぇぇ!!!!!
{封印}!!!!!」
その言葉と同時にアンチタイガーは綺麗な赤い石となった。
「これで封印できたのか...な........。」
バタッと海斗は倒れた。MPがゼロになり疲労で倒れたのだ。