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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第四章 襲撃!! そして……
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88 婚約者



 ドリスが通された部屋へと進むと、そこには銀髪の美男子が立っていた。


「久しぶり、ドリス」

「お久しぶりです」

「ちょっとかしこまってない?」

「この日くらい、いいじゃない」

「うん。大事な日だし、いいんじゃないか」


 ベルンフリートが、にこやかな顔で口を挟んだ。


 この部屋のソファーには、四人が腰を下ろしていた。

 まずは、ドリス。その隣には父のベルンフリート。

 その対面にはエルがいて、その隣にはエルの父、シルヴィオ・アピッツ侯爵が座っていた。


 そう、この日は、エルとドリスの婚約を取り決める、大切な日でもあった。


「では、始めようか」


 ベルンの合図で、それは始まった。


「ベルンフリート・アルベルツ侯爵。私、エルヴィン・アピッツは、アルベルツ侯爵が三女、ドリス嬢に求婚することをお許し頂きたい」

「ドリスはどうだ?」

「私、ドリス・アルベルツは、アピッツ侯爵が嫡男、エルヴィン卿の求婚をお受け致したく存じます」

「アピッツ侯爵。貴方は?」

「異存ありません」

「同じく。では、この場を持って、アピッツ家エルヴィン卿、並びにアルベルツ家ドリスの、婚約を了承した事を認める」


 まだ正式ではないが、互いの家が、ドリスとエルの婚約を認めた。






「庭へ行ってきたらどうだ? 少し、アピッツ侯爵と話したいことがある」

「はい」


 ドリスはエルを庭へ案内しようとすると、今まで付き従っていたフィーネは、「どうぞお二人で」と言うかのように、中で待機する姿勢を見せた。


「フィーネ。エルに紹介したいから、ついて来なさい」

「……かしこまりました」


 エルとドリス、そして少し後ろにフィーネが、庭のベンチまで来た。最近になって暖かい気候になり、花壇の花が咲き乱れている。


「エル、紹介するね。私の()()()()侍女のフィーネ。エルの所へ行く時は、必ず付いてくる侍女だから、紹介しておきたかったの」

「フィーネと申します。以後、よろしくお願い致します」

「エルヴィン・アピッツだ。……その、()()()()っていうのは?」

「フィーネ」


 すると、フィーネの姿がエミーリアに変わった。


「……エミーリア・ボーム!!」

「ドリス様が退寮日に、賊を捕まえたのはご存知ですか? その賊が私でございます」

「……何だって!?」

「フィーネ、戻って。エル、あまり怒らないで。私はもう、許しているから」

「……しかし」

「フィーネは、テレシア王から家族を人質にされて、仕方なくやっただけなの。バシリウスに近づいたのは、王国の秘密や弱みを探っていたから。それで、私の生涯専属侍女になることで、王に許しを得て、ここにいるの」

「私の家族も、ドリス様に助けられました。今は、アルベルツ領へ行っております」

「俺が知らない間にそんなことが……」

「皆にもまだ言ってないんだ。ゴタゴタしてたし。殿下は知ってるかもね」

「……ドリスには、いつ会っても驚かされるな」

「そんなことは……」

「ドリス様は、無自覚ですから」

「フィーネ!!」

「では、私はこれで失礼致します。後はお二人でごゆっくり」


 深々とお辞儀をしてから、フィーネはその場を後にした。






 すると、なぜかエルが笑いを(こら)えていた。


「何よ」

「い……いや、本当に無自覚だなって……」

「エルだって、私を驚かせる癖に!!」

「俺が?」

「……私に求婚するなんて……思わないじゃない」

「俺、結構最初から、頑張っていたと思うんだけど……」

「……私は、一生一人だと思っていたの」

「ドリスが!?」

「何で驚くの? 頭が良すぎる女なんて、男からしたら嫌でしょう!?」

「……人に寄るよ。現に俺がいるだろ?」

「そんな人が居ると思わなかったの! ……お姉様達は、とても幸運だと思ってて、自分はないだろうって思っていたから。だから、学園には女官の資格を取るために入ったようなものだったの」

「……そうだったのか」

「本当に……エルは私でいいの? もっと他に……」

「ドリス」


 気づくと、ドリスの目の前にエルの顔があった。


「俺は、ドリスが良い。ドリスじゃなきゃダメなんだ。俺の人生を共に歩んで欲しい」

「……エル」


 エルはドリスの顎に手を持っていき、唇を重ねた。






 エルが手を離すと、ドリスの頬は真っ赤になっていた。


「ドリス、頬が真っ赤」

「……そっちこそ」

「嘘」

「本当」

「……やっぱり照れるな。でも、ここで良かった」

「ここ?」

「出来ればドリスとは、花が溢れている場所でって思っていたから」


 その瞬間、風が吹き、二人の周りに色とりどりの花びらが舞う。

 真っ青な青空の下で見るこの光景は、圧巻だった。


『この庭の花達から、二人への祝福だってさ。おめでとう、ドリス』


 アイリスの言葉がドリスの耳に届き、ドリスは一筋の涙を流した。


「ドリス?」

「……大丈夫。エル、私が幸せにしてあげるね!!」

 

 そう言ってドリスは、エルに抱きついた。


「そ……それ、俺の言葉!?」

「じゃあ言ってよ」

「……俺が……幸せにする」

「固い。もう一回」

「え!? ……笑いが絶えない家庭を築きたい!!」

「……ギリギリ合格……かな」

「~~こういう時くらい、格好つけさせてくれよ……」

「しょうがないよ。それがエルだもん」


 何だかんだで、フィーネに呼ばれるまで、抱きついていた二人だった。


 


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