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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第四章 襲撃!! そして……
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85 過激派のその後



 きっかけとなったのは過激派のある貴族に、ギラザック国の者が接触した事だった。

 過激派は当時、以前まであった力を削がれ、一向に広がらない派閥に焦りを感じていたという。

 そんな中、ロザリファに来ていたギラザック国の者が持ちかけたのは、あまりにも大き過ぎる話だった。


「この話をしたら、貴方は必ず協力しなければなりませんよ。それでも良いのですか?」


 その貴族は、もう人数が増えることがないなら、自分達が優位に立てるようにするには手がないと、その話に耳を貸してしまったのである。


「私達は、世界に乗っ取りを掛けようと思っているのです」


 ここ数年、精霊が視えて魔法が使える国で、農作物の不作が深刻な問題になっているという。

 それらの国では近代化を進めようと、木を次々と倒し、どんどん家や建物を立てて行った結果、森林が減少し、農作物も病気になることが多くなった。


 ギラザックでも状況は同じだったが、ギラザックはそれを逆手に取った。人為的に汚れた土地にして、それを回復する手段はギラザックにしかないと分かれば、ギラザックに平伏す国が多くなるのではと考えたのである。


 そこで、わざと汚れた土地にするため、ある精霊の力を手に入れ、淀みを作った。

 所謂呪いのようなもので、一度その呪いにかかった土地は、淀みを浄化出来る聖属性魔法が必要になる。


 しかし、この、淀みを浄化出来る聖属性魔法の使い手は、滅多に居ない。


 ギラザック国内にも、二人しか見つかっておらず、一人は上位精霊憑きだが、もう一人は下位精霊憑きだった。

 そこで、あまり資金が無い国には、上位精霊憑きに浄化をさせるが、潤沢な資金がある国なら下位精霊憑きに何回かに分けて浄化させ、その都度お金を巻き上げようと企てた。






 ギラザックが、魔法が使えない国のロザリファに目をつけたのは、隣国であることと、食料庫として重宝すること、そして、大国であることだ。


 また魔法が使えない国でも、淀みが上手く作用するかの実験をするのにも、最適だと考えた。


 ロザリファの王族事情も、ギラザックにとっては、好都合だった。


 現在ロザリファの次代の王は、王太子のシュテファンと確定している。しかし、シュテファンを推す中立派、穏健派とは別に、その弟であるバシリウスは、敵対している過激派に推されている。

 その過激派が推しているバシリウスは、操り人形にするには、とても好都合な存在だった。

 ギラザックはロザリファの過激派の後ろ盾になれば、いずれ、ロザリファを操作出来ると考えたのだ。


 そして過激派側には様々な恩恵を授けた。

 過激派側が増えなかった理由には、金銭不足もある。

 その資金援助をギラザックが申し出た。

 また、魔法の素質がある者を見い出し、その者と取引をし、魔法を覚えさせる方向へ誘導した。


 空間魔法を使っていた、教師のアルノルト・ウリンガー侯爵子息には、ギザラック国の王女との結婚を条件に、空間魔法を覚えさせた。


 召喚魔法を使っていた、バルベル・トムゼン侯爵令嬢は、アンジェリーナ・ブローン公爵令嬢を以前からライバル視しており、彼女より優れたものを求めていたため、彼女が出来ないであろう、召喚魔法を使えるようにさせた。


 実際にはリーナは、召喚魔法にも適性があるのだが、そのことをバルベルは知る由もない。


 それとは別に、父親であるトムゼン侯爵からの強い強要もあった。

 彼女の父は、ギラザックとの連絡係であり、ギラザックからの話に乗った、外務大臣でもあったからだ。

 

 そして、アルノルトとバルベルの二人には、ある指示が出ていた。


 ドリス・アルベルツ子爵令嬢と、アンジェリーナ・ブローン公爵令嬢の暗殺である。


 ドリスに憑いている精霊は、近年稀な、植物を成長させる土属性の上位精霊。

 リーナに憑いている精霊は、これまた稀な、炎で浄化が出来る、聖属性混じりの炎属性の精霊。


 二人の存在により、ギラザックの計画に悪い影響が出ると考えたのだ。






 最初にドリスとリーナが階段から落ちた事件は、アルノルト単独の犯行であった事も発覚した。


 ギラザックについては、ロザリファの側女と第一王女も関わっていたとして、捕縛された。

 側女と第一王女は王族位を剥奪され、離宮の牢屋で一生を過ごすことになった。

 今回事件に大きく関わり、ロザリファに甚大な被害を与えようとしたとして、元第二王子バシリウスには、国家反逆罪が適用され、ロザリファで最も重い拷問・懲罰を受ける監獄へ収監されることになった。


 アルノルトやバルベルの様な実行犯や、外務大臣のトムゼン侯爵、過激派側の貴族のほとんどが、バシリウスと同じ監獄への収監が決まった。その中には、騎士団を総括する元帥も含まれていた。


 過激派は全て失墜した。


 その事情を知っていた過激派の生徒達も、別の監獄行きが決定している。

 ドリスに当たってきた三人組の令嬢達も、その中に入っていた。

 

 一方、エミーリアの様に知らなかった生徒や、過激派といってもまだ小さい子ども達のその後に関しては、人柄を見て、貴族として認めるか決めるという。


 この事態をロザリファ王は強く受け止め、ギラザック王国に対して、輸出していたすべてのものを停止させた。

 取り引きの停止を知ったギラザック王国の平民は王族に怒り、クーデターを起こした。その結果、王族と呼ばれていた者は失墜したらしい。

 新たに王になったのは、ギラザック王国の公爵で、王の血筋ではあるが、王に最後まで反対していた者であった。

 ギラザック王が変わったことで、ロザリファは食料のみ輸出を認め、同盟を結び、侵略しない事を約束させた。







 事件の結果、過激派が失墜してしまったため、侯爵と伯爵に多く穴が空いた。そこで、貴族達のこれまでの功績を元に、ほとんどのロザリファの貴族達を陞爵させる事が決定された。


 まず、ドリスの母方の実家である、ブレンターノ伯爵家は、階級が一つ上がり侯爵に。


 ミリィのシューラー伯爵家、トールのファルトマン伯爵家も、階級が一つ上がり侯爵に。

 

 一方、ドリスの義兄ローレンツの実家、ベック男爵家は、これまでの功績が大きいとして、階級が二つ上の伯爵に。


 そして、ドリスのアルベルツ家も、これまでの功績を考慮した結果、階級が二つ上の侯爵になる事が決まった。


 新たな階級は、学園で次年度より適用されることが決定した。

 こうしてドリスとその周りは、一気に上位貴族の仲間入りを果たしたのであった。






 学園パーティー襲撃事件をきっかけに起きた変化を受け、この年は、貴族の大改革の年ともされ、ロザリファの歴史に深く刻まれることとなった。




 





本当はベック男爵家も侯爵にしたかったのですが、二階級上が限度かなと思い、伯爵位にしました。そうしないと、皆侯爵になっちゃうので……。

まぁ……商売的には、やりやすい地位かもしれません。

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