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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第四章 襲撃!! そして……
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80 試験勉強のちに襲撃



 ダンス大会も終わり、主要イベントは進級パーティーだけとなった今、皆は試験勉強に明け暮れていた。


 この学年末試験で、ある一定の点以上を取らないと、進級することが出来ない。

 進級出来ないと落第ということになるが、そうなると今後、「落第者」という少し不名誉な称号が付きまとうことになる。

 退学することは、家族の支援がある限りないのだが、家によっては廃嫡されることもあるため、皆必死なのだ。


「といっても、ドリスには関係ないことでしょうけれどもね」

「リーナにもじゃない?」

「一位を目指していますもの、必死ですわ!」

「私は殿下に負けたくないから、必死かなぁ」

「そうは見えませんけど……」


 試験勉強期間中、こんなにお気楽に話している人は、他にはいなかった。







 この日は、皆で教え合おうと、六人で学園の教室を借用し、勉強会をすることになった。


「俺、多分……じゃなくて絶対この中で一番下だから、色々教えてくれ」

「皆でしないでも十分出来ると思うのだが……」

「まずは、皆で分からない問題を取り上げてみよう!」


 すると、意外と出て来たが、主に、ドリスがそれを解説した。

 ちなみにトールには、エルがつきっきりで教えている。


「……案外勉強会もいいな」

「確かに。分からない事が分かるとスッキリしますわね」

「私も良い刺激になりました!!」


 ふと窓の外を見ると、辺りはすっかり暗くなっていた。


「え……もう真っ暗!! 寮に戻らないと……」


 慌てて、身支度を済ませて、寮へと急いだ。


 




「本当だ。真っ暗!」

「女子のみだったら、危険だったなぁ」

「本当だね。助かったよ」


 そんな事を話しながら歩いていると、突然目の前に魔法陣が浮かび、、フードを被った二人組が中から、現れた。


 すぐに一番戦闘力のないミリィを一番後ろに下がらせ、剣を持っていないトールとエルが盾になった。

 最前列には、アンディ。その後ろに、ドリスとリーナがいた。

 ちなみにリコは、トールとエルの前に立った。


 すると、背の低い方のフードの人が叫んだ。


「ライオル召喚!!」


 以前見た、ライオンの魔獣がフードの女性の前に現れた。


「行きなさい!!」

「ガァゥン!!」


 ライオンが飛び込む様に、こちらへ突っ込んで来た。

 ドリスは冷静に、手の平のつるの種を伸ばし、ライオンに巻きつかせた。


「ガゥ!?」


 この前にも同じ攻撃をしたのに、あまり学習しないタイプのようだ。ドリスはあっさりと捕まえてしまった。

 リーナがブリギッドに指示をすると、目の前に二つの大きな炎の拳が現れ、ライオンをボコボコに殴った。


「ガフン!! ギャン!! ウォン!! グベチ!!」


 一息もつかせぬ徹底的な攻撃を見て、男性陣はライオンの方に同情してしまった。


 ……やり過ぎじゃない?

 リーナ。こんな戦い方は、教えていないんだが……

 なんか……ライオンが可哀想だな……


 男性陣の顔が青くなっている事を知らないリーナは、何だかやり切った表情をみせる。


「ギャ……ギャゥン」

 

 涙目のライオンに、召喚士と思われる女が、罵倒した。


「っち。使えないわね!! 役立たず!!」


 「送還!!」と言うと、ライオンは消えていった。


「ジュリー召喚!!」


 今度現れたのは、ジャガーのような魔獣だった。


「ギャウ!」


 すぐにこちらへ突っ込んで来たジャガー。

 その先にはリコ達がいた。

 さすがに対処出来ないかと思ったその時、突然正面にジャガーを覆うほど大きい茶色の球体のクッションが出現する。

 ジャガーはそのクッションにボヨ〜んとぶつかると、突進してきた方向とは真逆に吹っ飛んでしまった。


「大丈夫!?」

「平気! 流石ドリス! 助かった」


 すぐにジャガーが起き上がった瞬間、ジンが放った複数の風の刃が襲う。


「ギャウ!? グギャ!! ギャ!! ゲギャ……ギャゥ……ゥン」


 ジャガーは横にパタリと倒れると、フードの女が悪態をついた。


「この子も!? 何で使いものにならないのよ!!」


 「送還!!」と叫ぶフードの女を、アンディが風で拘束した。


「えっ!?」

「何捕まっているんですか!? 私はもう、逃げます!」


 もう一人の空間魔法使いと思われる男が、去ろうと魔法陣を出そうとするが、エルが素早く近づき、拳で頬を攻撃した。


「いぃ……っ痛ぅ」


 その一瞬の隙にアンディが、風で拘束した。





 暴れたら困るので、念のため、アイリスが眠り粉を吐き出す花を成長させて、二人を眠らせた。そして、ジンの風の拘束を解き、アイリスに蔓で縛り上げてもらった。


「俺の出番なかったなぁ」

「怪我人が出るよりマシだ」

「とりあえず、フードを外そう」


 エルが眠っている二人のフードを外すと、見覚えのある顔が現れた。


「この人!? 五大美女の一人、バルベル・トムゼン侯爵令嬢じゃないか!?」

「え!? ウリンガー先生!?」


 召喚士の女は、トムゼン侯爵家のバルベル。

 空間魔法の男は、教師でもあるウリンガー侯爵家のアルノルトだった。


「二人共……過激派か」


 女性陣は、教師を呼びに行き、二人を引き渡した。

 教員が責任を持って、王城に連絡すると言う。

 ちなみに、駆けつけた教員は皆、中立派で、二人を逃がそうとする者はいなかった。


 ドリス達は、とりあえず今日は寮に戻って、明日、詳しい事情を聞かれるという事になった。






「今日は、疲れた」

「お疲れ。大活躍だったな。精霊組は」

「……精霊? まさか、あの摩訶不思議な出来事は、精霊によるものでしたの!?」


 そう言われて、皆は気づいた。


 ミリィに精霊のことを言うの、忘れてた!!


 ミリィは怯えると思いきや、キラキラした目で精霊組を見た。


「精霊って、どんな姿ですの!? どんなことが出来るのです? アンディ殿下の精霊は風と思われますが、もしかして、空も飛べるのですか?」


 取材魂が目覚めたのか、ミリィは精霊組を質問攻めにし、精霊組の三人はグッタリしてしまった。


「そう言えば、何でリコさんは加わらなかったの?」


 トールが純粋な質問をすると、リコは苦笑した。


「私はリーナ様と同じ炎なのですが、とても攻撃的な精霊でして、いざという時にしか手を出してはいけないと厳命されているのです。ただ、何かを燃やすだけなら良いのですが……」

「ふーん。ちなみにその精霊に手を貸してもらったら、どうなっていたんだ?」

「この道に、大きな穴が空きます」

「……俺らだけで、何とかなって良かったんだなぁ」

「全くです」


 ニッコリと笑うリコに、トールは恐ろしさを感じていた。

 

上記に出てきたクッションは、28話にチラっと出てきたクッションの様な大きい実のことです。

バルベルに関しましては、フード姿以外にも出てきております。

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