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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
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79 ダンス大会二回戦と決勝


 第二回戦は、八組が出場する。

 先ほどよりも半分以上減り、ぶつかる可能性が低くなった。


「油断は禁物です!! 過激派もあれを除いて二組いますわ」


 リーナは小声で皆に忠告する。


「妨害があるかも知れません。怪我はしないよう、気をつけてください」


 心配そうな瞳で皆を見るリーナに、ドリス達は覚悟を決めた。


「あんな奴に負けないから、心配しないで、リーナ」

「貴女に教え込まれたのですよ? 大丈夫に決まっているではありませんか」

「紳士の風上にも置けない奴が王子なんて、俺は認めない」

「同感だ。どうせセコい手を使ってくるんだろう。正々堂々と勝ってやる」


 皆は闘志に燃えていた。


「皆、その調子だ。自分でやり返せないのが歯痒いが……任せた」


 アンディの言葉に背中を押され、皆は会場へと入っていった。







 音楽がかかると、皆、一斉に踊り出した。


 第一回戦よりも難易度が上がり、少し難しい曲だった。

 人数が少ない分、ミスも目立ち易い。


 すると、早速妨害行為をしようと、過激派の一組がドリスとエルに寄ってきた。

 二人はそれを察知し、ギリギリまで気づかないフリをした。

 そして男子の方が体当たりしようとするところで、ギリギリ素早く避け、その男子がバランスを崩し、パートナーの女子と一緒に転んでしまった。


 転ぶと、大幅な減点となる。


 すぐに立ち上がって体勢を立て直し、踊り始めるが、意識はドリスとエルに向かっているようで、殺気が伝わってきた。


 一方、トールとミリィにも、過激派の手が迫っていた。

 こちらは相手の女子が、トールにぶつかろうとしているようだ。

 女子に当たった場合は、男子側の過失になることもあり、それも減点に繋がる。


 わざとよろけてぶつかろうとしているようで、チラチラとこちらを伺っていた。

 だが、実行された瞬間、すぐにトールとミリィはその場を離れた。と、今度はその女子のみ転んでしまった。

 するとこちらを睨みつつも、パートナーの男性にも、「なぜ助けないの!?」 と言わんばかりに目を釣り上げて視線を向けた。


 今度はバシリウスが仕掛けてくるかと思いきや、ステップに苦しんでいるようで、バシリウスがリードする所をエミーリアがさり気なくリードし、カバーしていて、嫌がらせを仕掛けるどころではなかった。


 そんなダンスでよく第一回戦突破出来たなと誰もが思ったが、バシリウス達はダンスの練習も簡単なものしかやっておらず、第一回戦のダンスのみ完璧に仕上げてきたという事情があった。


 そんなことをしているうちに曲が終わり、皆、席に戻る。






 剣呑な空気に、皆、話そうとしない。

 バシリウスを筆頭とする過激派は、こちらを睨みつけている。

 しかも、審査員の教師に転んだのは、ドリス達のせいだと抗議している声も聞こえた。

 ただ、教師達は厳正な審査をしますからと、その抗議を退(しりぞ)けた。


「審査の結果を発表します。呼ばれた三組が最終戦へと進めます。それでは、発表します。エルヴィン・アピッツ、ドリス・アルベルツ組。アナトール・ファルトマン、ミリィ・シューラー組……」


 もう一組は、中立派同士の組に決まった。

 その結果を聞いて、過激派は、また、バシリウスを筆頭に審査員に抗議を始めた。


「なぜ、そいつらなんですか? そいつらのせいで私達は……」

「貴方達は、ふざけているとしか思えなかったからです。妨害しようとしていましたね。それでは正式に申し上げましょうか? 貴方達二組は、妨害行為未遂のため、失格とさせて頂きます」

「は!?」

「あれは誰が見たって、未遂とはいえ妨害行為そのものです。倒れたのも自業自得。ダンスを舐めているとしか思えません。すぐにこの会場から出て行きなさい!!」


 失格の烙印を押された過激派の生徒達は、周りを睨みつけながら、会場を後にした。






「いい気味ですわ」


 リーナが過激派が出て行った辺りを見ながら、ため息をついた。


「スッキリしたな。教員達に過激派側の者は居なさそうだ」

「良かったです。怪我なく済んで」

「リーナー!! 殿下ー!!」


 ドリスが二人を呼ぶ声に、二人は互いに目を合わせてから、微笑んだ。






「どうだった? 私達のダンスは」

「問題なし! 怪我なく妨害も避けて、格好よかったですわ!!」

「とても分かり易かったですから……」

 

 ミリィが苦笑した。


「それはそうと、ついに決勝ですわね。最後に残ったあの組。とても踊り慣れています。けれど、しっかり踊っていれば、望みはありますわ!!」

「あの組ね。とても優雅だったけど、リーナ達よりは……」

「勿論。私が出ていたら、勝つ自信はありますわ。けれど、それは私の生徒達に任せます」

「頑張って踊ります! 見ていてください、先生!!」

「私も!! 見ていてください!!」


 真剣な表情の二人に、リーナは満面の笑みを浮かべた。

 男性陣は、それを見てほっこりしていた。






 最終戦は、たったの三組で行われる。

 三者が、それぞれ離れた場所へ立つと、曲がかかった。


 それは難しいと言われる中でも簡単なものだった。

 やはり一年だからか、最難度の曲はかからない。

 けれどそれは、ステップが一部、とても難しいと言われている曲でもあった。


 エルとドリスは、キレが良く、堂々とした演技だった。

 運動神経がある二人だからか、正確さには自信があった様だ。


 トールとミリィは、ゆったりした雰囲気を残しつつ、丁寧に踊っている印象だった。

 運動神経の良いトールが、ミリィを上手くリードしている。


 最後の一組は、その中でも断トツだった。

 とてもメリハリがあるダンスに、優雅なステップ。

 難しいと言われているステップも、優雅に難なくこなしてしまった。





 

 曲が終わり、席に戻って、結果を待った。


「審査の結果を発表します。呼ばれましたら、会場に入って来てください。まず、第三位。……アナトール・ファルトマン、ミリィ・シューラー組」


 拍手と共に、トールとミリィが会場へ入った。

 二人には審査員長から賞状が贈られた。


「続きまして、第二位。……エルヴィン・アピッツ、ドリス・アルベルツ組」


 ちょっと悔しいと思いつつも、そうだろうなと思っていたドリスは、涙を流すことなく、エルと共に会場へ。


 拍手に包まれながら、賞状を受け取った。



 最後は、有力だった中立派の二人が、第一位を勝ち取った。

 この日一番の拍手に包まれ、泣きながらも幸せそうな二人に、誰もが笑顔になった。

 第一位になった二人には賞状と、年末の進級パーティーの時にラストダンスを踊る権利が与えられた。






 ダンス大会も終わり、ドリスとエルは、二人でリーナ達の元へ行く途中、ポツポツと話し始めた。


「終わっちゃったね」

「だな」

「優勝したあの二人、婚約者同士なんだって」

「へ……へぇ……」


 するとドリスは、ボソッと呟いた。


「……羨ましい」

「ん?」

「何でもない。行こ」

 

 傾げるエルの腕を持って、皆のところに駆けつけた。



 

 

 

これで、三章は終了になります。

終わりまで後もう少し、お付き合いください。

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