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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
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78 ダンス練習と本番!!


 まずはミリィの自己紹介から始まった。


「シューラー伯爵が次女、ミリィと申します。ミリィとお呼びください」

「ミリィは、この学年の五大美女の一人なんだ」

「何? その五大美女って」

「聞いた事ないわ」

「当事者達が知らないのか……」


 そこで、五大美女の話をすると、その中に入っていることを知らなかったドリスとリーナは、驚愕の顔をした。


「聞いてないよ!?」

「私もですわ!!」

「それは仕方ありませんよ。主に男子の間で広がっていた噂ですから」

「あれ? ミリィは知っているの?」

「えぇ。私は、情報屋ですから」


 手帳を出して、にっこりと笑顔になった。


「でも、自分がその中の一人って知った時は、恐れ多いと思いました」

「私も。今聞かされても、納得できないよ」

「同じく。自覚はありませんわ」

「この五大美女は、それぞれの階級で一番美人な女子のことだからな。ちなみに男子版もあるぞ」

「そう言えば……その中に入っている、エミーリア様なのですが、最近気になりまして……」

「何か不審な動きでもしているの?」

「彼女とは同じクラスなのです。最初は、積極的にバシリウス殿下にくっついていたのですが、次に殿下のご友人にくっつき出したかと思えば、今では話しかけられるのが億劫(おっくう)という態度でいらして……」

「やっとあの方の本質がわかったのかしら?」

「さぁ? 元々謙虚な姿勢を崩さない方なので、ほんの僅かな変化過ぎて、他の方はお気付きでは無さそうですが……」

「……とりあえず、気をつけた方が良さそうだね。ミリィ。過激派以外の人に接近したら、教えてくれる?」

「勿論です!」

「さ! 気分入れ替えて、踊りますか!」

「だな!!」






 エルはドリスに、トールはミリィに、アンディはリーナに、それぞれ手を差し伸べた。


 それぞれの手を取って始まった練習は、三者三様。

 エルとドリスは、少し速いペースでステップを踏んでいた。

 トールとミリィは反対に、ゆったりと、しっかりステップを踏んだ。


 アンディとリーナは別格だった。

 お互いの息が合っているのか、とても優雅で誰もが見惚れるダンスを踊る。

 この二人が大会に出場するなら、確実に優勝するだろう。

 だが今はそれが出来ないと分かっていることもあり、皆も見ていて歯痒い思いだった。


「……先生が決まったね! お手本見せて! リーナ、殿下」

「任せて! アンディ」

「あぁ。リーナ」


 それからダンス大会までの間、二人の先生にみっちり鍛えてもらい、ドリス達は今までより格段に上手くなっていった。








 ついにダンス大会当日を迎えた。


 ダンス大会は、参加人数によって、グループ分けが決まる。

 今回は、参加人数が少なめなのでグループ分けはされず、全員同じ場で踊って、一回戦、二回戦と進み、最後の決勝戦で三組が争い、順位が決まる。

 また、一年と二年は別に行うため、婚約者であろうとも学年違いは認められない。


「ドリス!! ミリィ!! 貴女達なら一位を狙えます!! この私が言うのです!! 存分に力を発揮なさい!!」

「「はい!! リーナ先生!!」」

「エル、トール。最初より、ぎこちなさはなくなったから、思う存分踊ると良い」

「ありがとう、アンディ。付き合ってくれて」

「俺、ダンス苦手だったから、助かったよ」

「……リーナの様に、先生とは言ってくれないんだな」

「リーナ先生に比べたら……アンディはアンディだし……」


 ダンスの指導中、リーナは鬼教官かというほど、厳しかった。

 それに比べ、アンディは、的確な指示を淡々としていた。

 勿論、アンディも先生と呼べる素質があるのだが、リーナが群を抜いていたせいで、指導中はアンディが心の拠り所になっていたのだ。


「じゃ! 行ってくる!!」

「頑張るね!!」

「教えてもらったことは、しっかりやるよ!!」

「リーナ先生のように、優雅に踊るよう心掛けます!!」


 そして、二人一組のそれぞれの戦いが始まった。






 ドリスのドレスは、瞳に合わせて水色にした。

 たまたまだが、エルの瞳の色でもある。

 エルも胸から覗くハンカチは、水色だ。


「エル。勝とうね」

「そうだな。少なくとも勝ちたい人ならいる」

「うん……私も」

「……行こうか。ドリス。手を」

「ありがとう」

 

 二人は手を取り合い、指定の位置に立った。






 ミリィのドレスは、トールとの相談でグリーンになった。

 お互い領地が田舎で、緑が多い地域のため、その色になった。

 

「何とか形になって良かったよ」

「これでまた入賞をすれば、トール様に注目が集まりますわね……」

「嫉妬?」

「……はっきり言わないでください」

「ミリィさえ良ければ、俺の婚約者にって思っているのに?」

「え!?」

「やる気出た?」

「……出ました!! 絶対入賞……いえ、優勝したいです!!」

「その意気だ。行こう、出番だ」


 ミリィはトールの差し出した手を取って、指定の位置へと向かった。

 若干、浮き足立った気持ちを抑えながら。






 音楽がかかると、皆、一斉に動き出した。


 例年より少ないとは言え、ぶつかる可能性もある人数の多さだ。

 慎重に踊り過ぎて、力を発揮出来ていない者もチラホラいる。

 そんな中、ドリスとエル、ミリィとトールは、思う存分に力を出した。


 曲が終わり、皆席に戻ると、しばらくしてから第一回戦の結果が発表された。





「審査の結果を発表します。呼ばれた組は、第二回戦へと進めます。…………エルヴィン・アピッツ、ドリス・アルベルツ組…………アナトール・ファルトマン、ミリィ・シューラー組……」


「皆様! よくやりましたわ!!」

「文句無しだ」

「ありがとう!!」

「ぶつかりそうで焦ったー……」


 出場者控え室がある廊下で、リーナとアンディに(ねぎら)われ、ちょっと照れる出場者組。

 しかし、リーナの渋い顔が選手達を動揺させた。


「どうした? リーナ」

「おい、何で出場者ではないお前がここに居る」


 ドリス達の後ろからやって来たのは、この国の第二王子のバシリウスとダンスパートナーであるエミーリアだった。


「友人達を労って何が悪いのでしょう?」

「お前が、ここにいることこそ悪い。俺の前から消えて欲しいね」


 その言葉に、ドリス達も怒りの形相を向けた。


「ん? なんだ。その顔は」

「バシリウス様、休憩時間が無くなってしまいます。私……疲れてしまいまして……」

「ごめん、エミーリア。こんな奴らに付き合っている暇なんて無いんだった。さぁ! すぐに控え室へ」


 バシリウスはそう言って、エミーリアの肩を抱き、控え室へと入っていった。







 残されたドリス達の思いは一つだった。


 打倒! バシリウス!!


 廊下で皆、静かに燃えていた。




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