表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
80/94

77 リーナの怒りとミリィ合流!


 啖呵を切った女子は、自分が言ってしまったことの意味を理解したようで、徐々に顔が青くなってしまった。


「い……今のは、言葉の(あや)というもので……」

「貴女、確かご実家は侯爵家よね? 最近、不況らしいと伺っているわ。それに比べて、ドリスのアルベルツ家は、お近づきになりたい貴族が多くて困っている様子。我が家も、是非にと手を挙げたわ」

「……ブローン公爵家が?」

「潰すという言葉を使うなんて……私は散々、ドリスの友人と言っていたのに、聞いていらっしゃらなかったのね。私がドリスの味方というのは分かることでしょう? 貴女の発言は、ブローン公爵家を敵に回したの。……お分かり?」


 不敵に笑うリーナに、その場に居た皆が恐怖を覚えた。


「ねぇ。ドリスはどうしたい?」


 リーナに尋ねられたので、少し考えてから、ドリスは口を開いた。


「私をエルのダンス大会のパートナーと認めて、付きまとい行為等をやめてくだされば、先ほどの発言は不問とします」


 それは正直、彼女達のプライドが許さない行為だった。

 しかし、これは願ってもいない提案。


 その場に居た女子はすぐにうなづき、リーダー格の女子も渋々うなずいた。






 女子達が黙ってさっさと去っていった後、二人はため息をついた。


「ありがとうリーナ! 助かった~」


 するとリーナは、怒りの形相を浮かべていた。


「エルには、お説教が必要のようね……」

「リーナ…?」

「ドリス。これは貴女のせいじゃないわ。全部エルのせいよ。ドリスが下位貴族だってこと、忘れているわね。ドリスに彼女達が向かないように、仕向ける必要もあったのよ。もう!! 抜けてるんだから!!」

「リーナがまるで、私の騎士のようで格好良かった。女神だったよ!!」

「当然でしょ? けれど、ドリスも今後、注意してね」

「はい!!」

「アイリスもよ!」

『任されました!!』

『さすが私のリーナ!!』


 ブリギッドは満面の笑みで、リーナを褒め称えた。






 ドリスとリーナは自分達のクラスに着くと、食堂を早くに出て行ったため、そんなことが起きていたとは全く知らないボンクラが、ドリスのクラスを訪れた。


「ドリス、リーナ。今日、ダンスの練習……」


 二人に睨まれて、エルは肩を(すく)ませた。


「エル? ダンスの練習がどうしたの?」

「あ……うん。うちのクラスでやらないか? 教室の借用申請はもう出してあるから」

「わかったわ、エル。後で話があるのだけれど……」

「わ……わかった。後で……」


 二人が怒っている意味がわからず、エルはその場を立ち去った。







 エルは自分の教室に戻ると、さっきあった事をトールとアンディ、侍従のリコに話した。


「え? 二人が怒ってた?」

「あぁ……覚えがなくて……」

 

 すると、トールとリコが苦い顔をしながら合わせた。


「やっぱり」

「ですね」


 二人にしか分からない会話に、エルとアンディは首を傾げた。

 トールが分からない二人のために、解説を始める。


「朝にエルは、女子達を追い払っただろ? 彼女達はその怒りをドリスにぶつけたんだろうな。きっと。……もしかしたら、脅したかもしれない」

「え……」

「エル。もしかして、ドリスに近づくなって言わなかったの?」

「……言ってないな」

「だからだよ。忘れてない? ドリスは下位貴族だよ」


 それを聞いた瞬間、エルの顔が青くなった。


「それなら、俺も同罪だ。その場に居たのに、気づかなかった」

「アンディも、エルも。大事な人を守りたい時は、先回りして封じる。言質を取っとけば、ある程度はどうにかなることもあるんだ。多分ドリスは、侯爵位や伯爵位の子にやられたんだ。リーナが味方で良かったな」


 リーナは公爵令嬢であり、貴族の階級もトップだった。


「リーナが守って、何とかなったんだろう。……放課後は二人で一緒に怒られたら?」


 苦笑するトールに、エルとアンディは暗い影がかかったような顔になった。






 放課後、ドリスとリーナは、エル達のクラスを訪れた。


「まず、私達が怒っている理由をお話しいたしますわ」


 リーナは、昼に起こった出来事を語った。

 見る見る内に顔が青くなっていくエルとアンディを見て、リーナの瞳がつり上がった。


「よぉく、分かりましたわ。お二人とも、お仕置きして欲しいようですわね」


 そしてリーナは、激しく二人を叱り倒した。

 そんな二人を尻目に、トールはドリスと呑気に話している。


「大変だったな、ドリス」

「……トールはその場に居なかったの?」

「教室申請しに行ってたから、俺はその場には居なかったよ」


 すると、一人の令嬢が教室に入ってきた。

 その令嬢は、緩いウェーブの淡い金髪に、グレーの瞳の美女だった。


「あ、ミリィ!」

「アナトール様」

「トールで良いよ」


 そう言うと、ミリィは動揺したのか、顔が真っ赤になった。


「では……ト……トト……トォー……ル?」

 

 真っ赤な顔をして、カミカミのミリィに、トールは心の中で少し悶えた。


「……言いにくかったら、様付けで良いや」


 それを聞いて、ほっと一息ついたミリィは、安心した顔で言い直した。


「では、トール様」


 横で見ていたドリスはたまらず、トールの背中を手でパシッと叩いた。


「っ痛!!」

「もう! トールったら!! こういうことは、二人っきりでやってよ!!」

「だからって叩くことないじゃん!!」

「あ……ゴメン。癖で」


 ドリスは元々、ご近所の平民のおば様方と交流があり、おば様方を見て育ってしまったので、気を抜いてしまうと今だにその癖が抜けないでいたのだ。


「まぁいいけど。……領民のおば様方を思い出すよ。もっと淑女らしくしろよ」

「ごめんなさい!!」

「お待たせしました、ドリス。始めましょう」


 リーナの後ろにいた二人は、ゲッソリした顔で足元がおぼつかず、フラフラしていた。


「……そんな状態で、ダンスなんて出来るの?」

「やる!!」

「……やるに決まっている」


 エルとアンディの目から、やらせて頂きますと訴えかけられている気がした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ