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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
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76 女の戦い


「え……エルだけじゃなく、トールも?」


 アンディは朝、教室に来て早々、友人の言葉に絶句した。


「俺は出ないと思っただろう?」

「あぁ。誘える人がいないと思った」

「アンディ、それ酷くないか?」

「フッ! 今の俺は、それくらいで怒らない! 何故なら可愛いパートナーが出来たからだ!!」

「で? 誰だ? その物好きな令嬢は」

「聞いて驚け! 一年の五代美女の一人!! ミリィ・シューラー伯爵令嬢だ!!」

「「…………誰?」」

「うん。そう言うと思った」


 トールは昨日の顛末を二人に話すと、目を大きく見開いた。


「良かったな。トールの気持ち悪い顔を見ても、貴方がいいと言ってくれる人は貴重だぞ」

「ちょっとちょっと!! それどういうこと!?」

「良かったな。トールのことをちゃんと見てくれる人で」

「だろ? で? エルは? まだなの?」

「……昨日、ドリスと一緒に申請した」

「おぉ! じゃあ、時間差だったのかな? 俺も行ったんだけど」

「そうかもな」

「アンディはどうするんだ?」

「私は今回、遠慮する」

「ふーん。……リーナか、狙いは」


 トールにそう言われると、アンディはふいっとそっぽを向いた。


「まぁ……予想通りだけど、バシリウス殿下とエミーリア嬢も申請済みだった」

「……やっぱりな」

「アンディ。守ってやれよ」

「勿論だ」


 話がひと段落すると、エルから提案があった。


「実は、ダンスの練習場所を探しているんだけど、皆で一緒に出来るところってないか?」

 

 すると、アンディとトールは顔を見合わしてから、エルに向いた。


「二人きりの方が良くない?」

「もっと密接にドリスと触れ合えるぞ」


 その瞬間、エルが顔を真っ赤にして、慌て出した。


「そ……それは……あ~違う……その……リーナのためなんだ!!」

「リーナの?」

「リーナは出られないだろう? だから、練習で……その、アンディと踊れたらなって、ドリスと話してさ。二人きりだと誤解されるから、皆で踊る練習している時なら……踊れるだろ?」

「……そこまで考えていてくれていたのか」

「いや……リーナが練習なら踊れるんじゃないかってドリスに……」

「それでも、嬉しい」

「じゃあ皆で練習ってことで! 場所は、中がいいよな。もう外も寒いし」

「教室なら、使用申請を出せば使えるはずだ」

「よし、今、申請しに行こう!」


 トールがそう言ったところで、女子の団体がエルの所へやってきた。








「エルヴィン様! ダンス大会のお相手、是非私にしませんこと?」


 代表格の女子がエルに向かって、目を輝かせながら尋ねる。


「エルヴィン様! 私と」

「いいえ! 私と」

「あ! アンディ様もいらっしゃる! 是非私と」

「ちょっと!! エルヴィン様一筋じゃないの!?」

「それはそれよ!」

「ちょっと待ってくれ!!」


 突然の大声に、女子達はビクつき、エルに注目した。

 

「俺はパートナーが出来たから、もう誘わないでくれるかな? 証拠は申請所にあるよ。アンディは今回、誰とも踊らないそうだ。もう、来てもらっても無駄だから。それに……」


 エルとアンディの冷めた表情に、皆が固まった。


「そんな淑女らしくない、君達を選ぶと思うか?」

「同感だ。私もそんな人は除外する」


 それを聞いた女子達は、皆、互いに目配せをしてから、すぐにその場を立ち去った。






 すると、もう先生が来る時間が近づいていて、教室使用を申請するには時間が足りないことに気がついた。


「彼女達のお陰で、時間を食ってしまったではないか!」

「あれ? トールは?」

「そう言えば……いないな」

「トール様なら、教室を出て行かれましたよ?」

「「え?」」


 リコの言葉に二人とも反応すると、トールが戻って来た。


「教室使用、申請して来たぞ~」

「おぉ! さすが!!」

「いや~……それ程だけど?」

「リコに頼んでも良かったんだぞ?」

「それ無理。何故ならリコさんは、あくまでアンディの侍従で、護衛もしているんだから」

「トール様……よくご存知でいらっしゃる」

「なら、なんでさっき、私の盾にならなかったんだ?」

「アンディ様なら、ご自分でどうにかなさるかと」

「……こいつ……護衛の意味ないじゃないか!」

「まぁまぁ。この教室使っていいって。昼休みにでも、リーナ達の元へ行こう!!」

「助かった、トール」

「……それで? 何があったか、詳しく聞かせてくれるよな?」


 トールにさっきの顛末を話すと、渋い顔になった。


「ドリス……もしかしたら昼も放課後も、捕まらないかもな」

「なぜだ?」

「……俺の考え過ぎじゃなきゃ良いけど」


 そこで、先生が来てしまい、話が途切れてしまった。






「ちょっとよろしいかしら?」

「……何でしょう?」


 ドリスはリーナと昼食をとり終え、食堂から出ようとした時、女子の集団に止められてしまった。


「何の話かしら? 私も興味があるわ」

 

 リーナがそう言うと、相手は「うっ」と一瞬たじろいだ。

 しかし、相手の意思は固かった。


「ドリス様と話がしたいのです」

「では、私も参りましょう。ドリスは私の大事な友人ですから」

「……リーナ様には関係のない話かと」

「それでも構いませんわ」


 女達の笑顔の攻防が続いた。

 ドリスは冷静に、口を開いた。


「とにかく、場所を変えましょう。ここでは迷惑です」


 ここは食堂の出入り口。

 いつの間にか、皆の注目の的となっていた。






 場所を変えて、校舎裏。

 

「さぁ、私に何の御用でしょう?」

「貴女……エルヴィン様とダンス大会に出場するのよね?」

「はい」

「なら……辞退してくださいませんか?」

「は?」

「私達くらいの格がないと、エルヴィン様と釣り合いませんから」


 ドリスの周りには、「ふふふ」と含みのある笑いが包まれた。


「下位貴族だから……ということでしょうか」

「分かっているなら、さっさと辞退なさい!!」

「ちょっと、貴女。私の友人になんて口の聞き方なの?」


 リーナのドスの利いた声が響き、周りはビクッと強張った。


「この学園の仕きたりをご存知? この学園では成績優位者が、優遇されるのです。ドリスは試験で学年一位。乗馬大会でも三位と言う素晴らしい成績を残しております。隣に立つのには十分過ぎる実績ではありませんこと?」


 女子達は皆、「くっ!」と苦虫を噛む様な顔をした。


「いいえ!! 成績ではなく、やはり格が大切ですわ!!」

「けれど、()()()()()()には、逃げられていたわよね? 非常にお疲れの様子だったわ。可哀想に。淑女ともあろう者が、追いかけ回すなんて、はしたないわ! これだから上位貴族はと、品位を落とすと言われてしまうのです」


 真っ青な顔になる女子達だったが、リーダー格の女子は果敢にも言い返した。


「私はリーナ様ではなく、ドリス様に聞いているのです! ドリス様、どうなのです!!」

「お断り致します」

「……何ですって!!」

「ダンスはエルヴィン様に申し込まれて、お受け致しました。お断りするのは、申し込んでくださった相手に失礼だと思いませんか?」

「何よ!! あんたばかり!! ずるいわ!! 下級貴族の癖に!! 私の家は、あんたの家なんか、潰してやることも出来るのよ!!」


 この言葉には、皆、「言い過ぎ」と心の中でつぶやいた。


「あら? 言質(げんち)を取りましたわ」


 リーナが、怪しく微笑んだ。






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