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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
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72 乗馬大会結果


 少し休憩した後、大会が再開した。

 最初に呼ばれたのは、アンディだった。


「同じ馬だな」

「そうだ。次に進んだ者達が乗っていた馬は、皆バラバラだったからな」


 担当教師が、そう言うと、アンディは満足そうに頷いた。


「なら、乗り心地が分かっていて良いです。またよろしくな」


 すると、尻尾を揺らし、甘える様な仕草をする。


「こら。私を乗せてくれ」


 アンディは何とかなだめて、馬に乗った。


「始め!」


 順調に障害物をこなして行ったが、最初とは違い、難易度が少し高くなっている。

 そして、最後のジャンプの障害で、足がバーに引っかかり、失敗してしまったのだ。

 乗っていたアンディに怪我はなかったが、馬はしょんぼりとしてしまった。


「済まない。私のせいだ。落ち込むな」


 手で馬を撫でて、なだめるアンディ。


 アンディが決勝には進めないことは変わりないのだが、失敗してしまうと、馬の自信がなくなってしまうので、もう一度挑戦するのが決まりになっている。

 障害物は、少し高さを下げてもらい、もう一度挑戦する。


「さ! 行くぞ!」


 今度は、綺麗に決まった。


「よくやった」


 アンディの言葉に、馬は尻尾をブンブン振った。







 次はリーナの番だった。


「また、よろしくお願いしますわ」


 馬にまたがると、「ぶるる」といなく。


 危なげなく障害物をこなし、最後のジャンプも上手くいった……かに思われた。

 着地はしっかり出来たのだが、肝心の障害物のバーが、着地する寸前に落ちてしまったのだ。


「もう一度、飛びましょう」


 リーナが優しい声をかけると、「ひぃん」と馬が鳴き、バーを先程よりも低くしてもらった。そして、軽々とジャンプを披露した。


「格好良かったわ!」

 

 そう言うと「ぶるる」と嬉しそうにいなないた。






 三番目は、穏健派の男子生徒だった。

 領地で馬を育てており、名馬が生まれると評判の家だ。


「よろしくな」


 馬は尻尾を振り、落ち着いている様子だ。

 またがって、定位置に着く。



「始め!」


 スイスイと障害物をこなし、最後のジャンプをする。

 しかし、着地した後に、バーが落ちてしまった。


 これには、周りも本人も呆然となった。

 彼は、どんな馬もきちんと操れる様、教育されていたからだ。

 

 こんな失態は初めてらしく、どうしたら良いのかわからない。

 彼は、馬に乗ったまま、指示を出そうともしない。


 仕方なく、調教師達が馬から固まった彼を引きずり下ろし、代わりに調教師が馬に乗り、先ほどよりも低いバーを飛んだ。


 彼は、教師二人に担がれ、その場を後にした。






 気まずい雰囲気が漂う中、次は、ドリスの番だ。

 ドリスの馬は、先ほど乗っていた馬とは、別の馬だった。


「初めまして。よろしくね」


 非常にクールな馬だった。

 人間で言うと、冷静で真面目と言うのが適当だろうか。

 尻尾を一振りして、挨拶を返してくれた。


「よし! 行こう!!」


 馬はドリスの指示で、ゆっくり動き出した。


「始め!」


 とても優秀な馬らしく、障害物も難なくこなしていく。最後のジャンプは、ギリギリだったのでヒヤッとしたが、何とか綺麗に着地が出来た。


「ありがとう。乗りやすかったよ」


 すると、当然だとばかり「ぶるる」といなないた。






 次はエルだった。


「また、よろしくな」


 尻尾をブンブン振りながら待つ馬に、少し苦笑する。


「よし! 次も気持ち良く飛ぼう!」


 「ぶるる」といななく馬と、意気揚々に定位置に向かった。


「始め!」


 馬は、リズム良く障害物をこなし、最後のジャンプも綺麗に決まった。


「気持ち良かったな!」


 エルは、馬を降りてから言葉を掛けると、馬は少し興奮した様子で、尻尾ブンブン振っていた。






 最後はトールだ。


「さ! 次もよろしく!」


 馬は嬉しそうに、尻尾をずっとブンブン振っており、若干興奮状態だった。


「さっきが気持ち良かったみたいで、興奮が収まらなくて……」

「なるほど」


 事情を調教師から聞き、納得した。


「おい! そんな興奮して、良い走りが出来るのか?」


 ちょっと冷たい口調で問うと、馬は察して段々と大人しくなった。


「よし! 良い子だな」


 馬は、乗ってくれないのかと不安そうだったが、やっとトールが馬にまたがったので、一安心したようだ。



「始め!」


 馬はスイスイと障害物をこなして、最後は余裕を持ったジャンプを見せつけた。

 これには、会場の歓声も湧いた。


「よくやったな。次もよろしく!」


 それに応えるように「ひひぃーん」といなないた。



 






 最終戦に進めるのは、バーを飛び越えた、ドリス、エル、トールの三名となった。

 障害物の変更後、最終戦がすぐに行われた。


 最初はドリス。


「またよろしくね!」


 「ぶるる」と一応は応えるものの、あまりこの馬とは心を通わせられなかったようだ。


「始め!」


 先ほどよりも障害物が難しく、ゆっくり丁寧にこなして行く。


 そして最後のジャンプは、バーを落としてしまい、失敗に終わった。


「また、飛ぼうか」


 「ぶるる!」と当然だと訴える馬に、申し訳ない気持ちのドリスだった。


 少し低くして貰うと、難なく飛べた。

 恐らく、ドリス以上の乗り手なら、さっきのバーも飛べる馬なのだろう。

 自分の力不足に、馬には本当に申し訳なかった。


「私に合わせてくれて、ありがとう」


 すると、尻尾を一振りした。







 次はエルだ。


「これが最後だ。楽しむぞ!」


 馬は「ぶるる!!」と楽しそうに、足を進める。


「始め!」


 軽快な足取りで、障害物をこなして行き、最後のジャンプをしっかり決めた。


「よくやったな!」

「ぶるる!!」


 馬から降りて撫でてやると、嬉しそうに、尻尾を振った。






 最後はトールだ。


「よ! 最後だ。飛ぶぞ!!」

「ひひぃーん!!」

「元気良いなぁ!!」


 馬に乗ると、馬も自信満々な気持ちが伝わってくる。


「こいつに応えなきゃな」


 トールは、気を引き締めて、最終戦に臨んだ。


「始め!」


 スイスイと水を得た魚の様に、テンポよく障害物をこなしていった。最後のジャンプもかなり高い位置にバーがあったにも関わらず、それを余裕を持って飛び越えた。


 完璧な競技に、皆、歓声を上げる。


「最高だな!」

「ひひぃん!!」







 乗馬大会の結果が発表された。

 

「三位 ドリス・アルベルツ」


 ジャンプをミスしたドリスは、当然ながら三位に入った。

 ドリスは、三位のお立ち台に上がる。


「二位 エルヴィン・アピッツ」

「最後のトールの歓声には、敵わなかったもんな」


 そう呟いてから、二位のお立ち台に上がった。


「一位 アナトール・ファルトマン!!」


 そう言うと、客席から歓声が上がった。


「まさか、優勝しちゃうとはな」


 そう言いつつ、満更でもない顔をして、一位のお立ち台に立った。


 トールがトロフィーを貰って、高々と上げると、歓声が上がった。







 それを見ていた、とある令嬢は、密かに頬を赤らめ、トールを見つめていた。

 

 どうして、メガネ掛けている文系タイプっぽいのに、運動神経抜群なの!? どうして、剣術大会でも凄かったのに、乗馬まで出来るの? 確かに領でよく馬に乗っているみたいだけど……なんでなんでなんで? どうして貴方はそんなに格好いいの!?


 とある令嬢から見たトールは、実物の十倍以上も格好良く見えていた。







「おめでとう、トール!」

「おめでとう」

「どうも! エルとドリスもおめでと!! いや~! こんなに注目されたの初めてだから、照れるな!」


 顔をくしゃっとして笑った。


「絶対、トールのファン出来ているよ!!」

「え!? 本当!! どこ!?」

「……そうやらない方が、モテると思うぞ」

「クールに……かぁ。俺の辞書にないなぁ」

「ぷっ! 無さそう」

「あ! 笑ったな? ドリスももっと慎ましくした方がモテるぞ!」

「私の辞書には無いもん!!」

「だろ?」


 互いに笑い合った後に、アンディとリーナと合流した。





「お疲れ様です、皆様」

「三人共、良かったぞ!」

「ありがとう! リーナ、殿下!」

「リーナもアンディも良かったぞ。特にアンディは大分成長したよな」

「休みの時が嘘のようだ」

「わ……私も頑張ったんだ」

「ワシューに居た頃とは、比べ物にならないほど、成長致しました。これも皆様のお陰です。ありがとうございます。そして、おめでとうございます。トール様、エル様、ドリス様」

「あ……ありがとうございます」

「ご丁寧に」

「どうも。リコさん」


 皆笑顔で、乗馬大会を終えた。






 その日の夕食。


「これが……リーナの家のコックが作った特別メニュー!!」


 いつもよりも綺麗な彩りと芸術を感じる皿が、今日、乗馬大会に出場した選手達の前に並んでいた。

 さすがに一品ずつ出てくるわけではないが、コースメニューのような食事が並んでいる。


「うん。うちの味ですわ」

「美味しい~!! 幸せ~」


 この日のご褒美が忘れられず、ドリスは来年も頑張るのだった。





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