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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
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70 乗馬大会本番です!!


 乗馬大会は、学園の授業でも使用される、乗馬場で行われた。


 出場者は、出場順に乗馬の技術を披露する。

 審査員の教師達によって、次に進める選手の発表をされる。

 一回戦は出場者全員で披露し、その中の上位六名が二回戦へ進出出来る。その中の上位三名が最終戦へと進むことが出来る。勿論、進出するごとに、段々難易度が上がっていく。

 最終的に上位三名で競い、順位を決める大会なのだ。

 

 馬は個人が慣れ親しんでいる馬ではなく、学園所有の馬を使って行われる。

 誰がどの馬に当たるかは分からないので、選手達は引き合わされて初めて、自分と相性が良い馬なのかが分かる。

 大体において、女子には気性が荒い馬はあてがわれないことがほとんどである。しかし、男子の実力者にはそんな馬があてがわれることもある。

 この大会は運も必要なのだ。







「ドリス! 今日はライバルですわよ!」

「勿論! 勝負だよ、リーナ!」


 女性陣が火花を散らす中、男性陣は肩の力が抜けている。


「トール。調子は?」

「ん~……馬の調子次第だな」

「トールのことを聞いたのだが……」

「俺の調子が良くたって、馬の調子が悪けりゃ意味ないから。こればかりは、相性の問題もあるし」

「そうだぞ、アンディ。以前、うちの領の兵士に聞いた事がある」


 恋人が出来たばかりで浮かれた兵士が、彼女に良いところを見せようと、少し難易度が高い障害に挑戦したら、途中で馬が怒って、言う事を聞かなくなってしまった。

 その馬は雌で、兵士の事が好きだったらしく、他の女にかまけた兵士が許せなかったらしい。


「だから、俺はいつも馬に乗る時は、平常心を心掛けている」

「エルの言う通り! 馬に気持ちが伝わるからな。勿論、緊張も伝わるぞ」

「そこまで考えていなかった。確かに、今思えば、私が緊張している時の馬の動きが、硬かった気が……」

「馬との相性に気がいく人が多いんだよな。頻繁に馬に乗る機会があれば分かるけど、分からない人も多い。特に学園のは、自分の馬ではないから、引き合わされた馬に合わせて、動かなきゃいけない」

「それが鍵だよな。気性が荒い性格だと、従わせるのが難しい」

「気分が乗らない馬も難しいよ。その辺は人と同じだよな」


 今回乗る馬は、比較的大人しく、扱いやすい馬が多かった。しかし、気性の荒い馬もいない訳ではない。扱いやすい馬の中に調子がいまいちな馬が居り、その代役で出場する事になったそうだ。


「馬は教師の裁量で決まるからな。俺とエルは、その馬になりそうだ」

「俺はどんな馬でも良い。領だと、自分の馬なんて居なかったし」

「アピッツ領に行った時に、乗っていたのは違うのか?」

「あぁ。正確に言うと、兵士のだ。皆のために比較的大人しい馬を借りた」

「俺も、自分のはないよ。自分のって贅沢だし、色んな馬に乗ってたなぁ」

「……場数が違うな」

「馬が常に一緒の環境に居たからな」

「魔獣も……だろう?」

「うん。可愛かったろ?」

「まぁな」


 その会話で、大分肩の力が抜けたアンディは、柔らかい笑みを見せた。






「アンジェリーナ・ブローン」

「では、行ってきますわ!」


 ドリスは手を挙げて答えると、リーナも同じ様に返した。


 厩舎(きゅうしゃ)に着くと、教師がリーナに渡す馬のリードを持っていた。


「よろしくお願いしますわ」


 馬に向かって言うと、それに答える様に「ぶるる」と鼻息で答えた。

 リーナは比較的、大人しい馬があてがわれた様だった。


「では、参りましょう」


 リーナは、馬にまたがり、優雅に指定されたコースに入って行った。


「始め!」


 馬は、リーナの指示に従い、丁寧に障害物をこなし、難なくクリアした。


「ありがとう」


 優しい声でお礼を言うと、嬉しいのか尻尾をブンブン揺らした。







「ドリス・アルベルツ」

「よし!」


 リーナの次に呼ばれたので、すぐに厩舎(きゅうしゃ)へ向かった。


「よろしくね!」


 ドリスがそう言うと、馬は、落ち着きなさそうな様子だ。


 ちょっと気性の荒い子かも


 本来こういう馬は、女子にあてがわれることはないが、今回出場した中ではトップクラスだったため、ドリスに順番が回ってきたようだ。


 ドリスが馬にまたがっても、落ち着かなかった。


 う~ん。勢いに任せて行ってみるか!


「始め!」

「それ!」

 

 ドリスの合図に、馬が勢いよく動いた。

 ちょっと荒く、ペースも早いが、難なく障害物をこなして行く。

 最後のジャンプには、大分余裕を持ってジャンプした。

 ドリスが振り落とされないか、ヒヤッとなるものだったが、無事着地し、怪我もなく終了した。






 それを見て居た男性陣は、全員固まっていた。


「あの馬……なんで、ドリスに」

「ジン。教師、又は調教師になど、怪しげな動きがあるものを見つけて、教えてくれないか?」

『あぁ。これは明らかにおかしいもんな』


 風の精霊達の声を聞くため、ジンは目を閉じて集中した。


「ドリスは色んなところから狙われているからな。よく、あの馬を乗りこなしたよ」

「……落馬しなくてホッとした」

「もし、そうだとしても、ドリスにはアイリスがいる」

「そうだった。強い精霊さんが憑いているんでした」

「だとしても……許せない」


 エルが怒りをあらわにすると、トールはからかうような口調でなだめた。


「馬に悟られるぞ~。落ち着け。俺達もあそこに立たなきゃならないんだ。今は、その時じゃない」

「……」

『わかったぞ』

「誰だ?」

『ブローン領のこと、覚えているか? その時の三人組の女達だよ』


 アンディが説明すると、「あいつらか……」と二人は顔をしかめた。


『調教師を買収して、あの馬が興奮する匂いを嗅がせたらしい。少しだけだったせいか、気性が荒いと周りに勘違いさせるくらいだったようだ』

「ろくなのが居ないな。過激派は」

「全くだ」

『一応、他の教師が気づいて調査中。まだバレて居ないけど、時間の問題だな』

「私の番が来た時に、それとなく教師に進言しよう。自力で辿りつければ良いのだが……」


 アンディは、馬小屋の辺りを睨みつける様な目で見ていた。






 裏でそんなことがあったとはつゆ知らず、女性陣は呑気なものだった。


「ドリス、どうでした? 私は馬を戻していたので、見れなかったのですの」

「気性の荒い馬に当たっちゃった」

「え!? そんなはずないでしょう? 女子には必ず、大人しい馬のはずですわ!!」

「でも、そうだったよ」

『気性が荒いってより、興奮している感じだったけどね』

「そうなの? アイリス」

『ちょっと変だったよ、あの馬。それでも乗りこなしちゃうドリスがすごいけどね!!』

「高評価が期待出来そうですわね」

『リーナも絶対通ってると思うから、安心して!』

「ありがとう、ブリギッド。私は出来ることをやり切るだけですわ!!」

「リーナ、殿下の乗馬、見たくない?」

「勿論。見たいですわ」

「すぐに始まっちゃうから、戻ろう」

「そ……そうですわね!! 急ぎましょう」


 二人は早足で、待機所に戻った。




 

恐らく、普通の乗馬大会では、自分がよく乗っている馬と出場することが普通だと思います。

この世界では、自分の馬以外の馬に乗ることも多いので、学園側が用意した馬に乗って大会を行うことにしました。

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