69 中間試験と乗馬大会出場!!
先日、中間試験が行われた。
結果は……
「おめでとう。うちのクラスがまた、断トツで一位だった」
ボイス先生の声が教室に響くと、「おぉ!!」と言う歓声が上がった。
「この調子で、学年末も頑張ってくれ。さて、次はいよいよ、乗馬大会だ。この大会は男女混合で行われるから、女子も頑張るように。剣術大会の時と同じで、大会委員はこちらで決めさせてもらう。詳しいことは、授業で聞け」
スタスタとボイス先生が教室を出て行くと、皆、順位表を見に立ち上がった。
「ドリスも行きます?」
「うん」
二人で向かうと、そこにはアンディの姿があった。横には居心地が悪そうなリコが立っている。
「殿下? どうだった?」
「またアルベルツの勝ちだ」
アンディは苦い顔をしてドリスを見る。
そんなアンディを余所に、ドリスとリーナは、順位表を見た。
一位にはドリス・アルベルツの名前があった。
「アンディだって二位ではありませんか。私はまた三位ですわ」
拗ねるような顔をして、リーナは順位表を見ていたら、ある名前を見つけた。
「ドリス! 四位はエルですわ!」
「え? 本当だ」
「頑張っていたからな。トールとの復習が役に立ったと言っていた」
「その、エルとトールはどうしましたの?」
「二人は教師に捕まって、手伝いをしている。もう、来るだろ」
そう話しているうちに、エルとトールがこちらに来るのが見えた。
「順位、どうだった?」
「私達はこの前と同じ。エルは四位だったよ」
「え!? あ……俺の名前だ……」
「トールもほら、あそこ」
十位 アナトール・ファルトマン
「ん? え? 嘘……こんな上なんて初めて……いや……取りすぎた……! 次どうしよう!? エル!!」
「頑張れ」
「嬉しいけど、やりすぎた~!! あ、だからさっき先生に頼まれたのか」
「あー!!」と言いながら、頭を抱えて赤い顔をしたり、青い顔をしたり忙しいトールを放って置いて、次の話題に移った。
「もうすぐ乗馬大会の時期だな。出れそうなのか?」
「はい。ドリスと私は、乗馬の成績上位なので、もしかしたら出られるかもしれませんわ!」
「俺とトールも出れそうだ。アンディは、休暇中にやったことが出来ていれば大丈夫そうだな」
「乗馬に関しては、自信はないが……」
「休暇中に教えて頂いて良うございました。皆様、ありがとうございます」
「リコ! まるで私がサボっていたみたいではないか!?」
「その通りでございますが?」
「……」
アンディがしかめっ面していると、やっと立ち直ったトールが話に入ってきた。
「乗馬大会ね。さすがに妨害はないと思うけど、警戒はしとかないと」
「あ……そっか。私達、狙われてるんだった」
「こっちもだ。第二王子に目を付けられた」
エルが、ドリスとリーナにしか聞こえない小さな声で囁いた。
「……もしかして、剣術大会?」
「そうだ。アンディから聞いた」
「私が一緒にいるからではないでしょうか?」
「何で? ……あ」
そう言えば、婚約者だっけ。一応。
「ここでは……まずいな」
アンディが皆で寮に帰ろうと促し、寮の談話室に駆け込んだ。
「第二王子に狙われている話は、誰かに聞かれたらまずいだろ。そうじゃなくても、リーナと第二王子の仲が悪いということは周知済みだが、こういう時は、女性であるリーナの方が立場が悪いからな」
「あの場に、過激派がいたの?」
「話は聞こえていないようだったが、ジンによるといたらしい」
『もうちょっと近くだったら、危なかったかもな』
「ありがとうございます。ジン」
『それも俺の役割だし、気にすんなよ!』
「リーナ。第二王子は頭が花畑な人間だ。自分が気に入らない奴は視界にも入れたくないタチだろう。遅かれ早かれ、私達が狙われることはわかっていた。それに私は、会った当初から、第二王子に嫌われていたから、同罪だ。
「そ……そうなのですか?」
「初対面で、虫のような色の髪だと言われたよ。うちの国に宣戦布告しているのかと思った」
アンディの祖国であるワシュー王国は、黒髪がほとんどを占める容姿が特徴の国だ。
その、黒髪を虫扱いするのは、国を否定された事を示す。
「すぐ、王や王太子が気づいて謝罪して下さったが、あれ以来、私に会うたびに当たってくる。その程度の男だ」
「そうですわね。私のことも、影で虫って呼んでいますし」
「黒髪が嫌いなの? 第二王子って」
「えぇ。生まれた時から、金髪や茶髪の人しか見た事がなかったのですよ? 黒なんて、自分の周りにはない色なので、受け入れづらかったみたいです」
「とにかく。これから本格的に、色んな者から狙われる。少し前に、寮で狙われた通り、安全な場所はない。皆、肝に命じておけ」
皆、渋い顔をしながらうなずいた。
乗馬大会。
男女混合で、クラスで上位五名が出場できる大会だ。
馬に乗って、障害物をいかに綺麗にクリア出来るかを競う。
乗馬の授業は、基本男女混合だが、慣れている人と慣れていない人に別れて、授業を受けている。
「では、このクラスの出場者を発表する。アルベルツ、ブローン……」
ドリスとリーナは、乗馬大会に出場することが決定した。
「皆様! 私達、乗馬大会に出ることになりましたわ!」
「俺らも」
「え!? 殿下も」
「皆に鍛えられたからな。当然だ!」
「本当にありがとうございます。これで、本国に良い報告を……」
「するな」
「なぜです!?」
「隠していた方が、面白いからだ」
落胆するリコに、アンディは悪戯な顔を浮かべた。
一方、馬術大会の出場者決定に、慌てる人物がいた。
「なぜだ!? なぜ、過激派は一人も入らないんだ!?」
「それは、他の方々が優秀だったからでございます」
「くそっ! そうだ! 誰か一人くらいは大会委員がいるだろう?」
「バシリウス殿下。忘れたのですか? この大会では仕掛けないと」
「少しくらい、良いではないか!!」
「一人も誘われなかったようですよ」
「ちっ! つまらん」
バシリウスの侍従は、心の中でため息をついた。




