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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
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67 炎系の精霊のお勉強


 剣術大会が無事終わり、ホッとしたのも束の間。


「もうすぐ中間試験だな」

「げぇ!」


 これに驚いたのは、トールだけだった。


「何で皆、落ち着いているんだよ! あ……ここにいるのは、トップクラスの人間だった……うわぁ」

「トール、また教えてやるから」

「頼む! 前が良すぎたから、家族も変に期待しててさ!」


 実際、トールの中間試験の結果は普通だ。

 けれど、家族はそんなに取れないだろうと、落第ギリギリの点数じゃないかと予想していたという。


「私はそれより、精霊の授業をして欲しいのですが……」

「あぁ。もうそろそろやらないと、精霊が拗ねるな」

「もう、遅いんじゃ……」


 ドリスが心配そうにリーナの精霊である、ブリギッドに目を向けた。

 ブリギッドはそっぽを向いて、アンディの顔を見ようとしない。


「ジン、ブリギッドへの指導進度は?」

『一応、一通り叩き込んで、無理無理納得させた。最近では、魔法を使えとは言わないだろ?』

「はい。言いませんわ」

『……リーナに負担がかかるって分かったから、辞めただけ』

『それが分かるだけでも、進歩だと思うよ』


 アイリスがフォローするが、アンディは渋い顔でブリギッドを見た。


「いいか。まずは、私に従ってもらう。そうしなければ、リーナにも迷惑がかかるからだ。特にブリギッドの属性は炎。しっかりコントロール出来るまでは勝手に使ってはいけない。約束出来るか?」

『リーナのためだ。……約束する』


 ブリギッドはやっとアンディの目を見て、そう答えた。


 この後、リーナとアンディは精霊授業をすると言うので、二人きりはまずいと思ったドリスも、一緒に授業を受ける事になった。


「じゃあ、俺らは勉強に力入れるから!」


 トールは、まだドリスと居たいと思うエルを引きづりながら、立ち去った。







「そう言えば、王から言付けがあったのを思い出した」

「誰に?」

「アルベルツ、お前だ。精霊の羽を届けてくれた礼がしたいと言っていた。何か要望はあるか?」

「今のところないなぁ。保留で」

「わかった。そう伝える。ただ、何かあったら、すぐに言えとの仰せだ。私か、お前の父親に言えば、すぐに通してくれるそうだ」

「私の父に?」

「彼は有能な部下らしい。それは、王城に行った時に分かったろ?」

「えぇ。お陰であの方々に会わずに済みましたわ」

「ただの一師団の団長だと思っていたのだけど……」


 お父様って只者じゃないの? まぁ、あの剣技を見たら、只者じゃないのかな?


 悶々とドリスが考え込むと、アンディは苦笑した。


「そんな考え込むな。とりあえず、お前の父親はロザリファ王の覚えがめでたいと思っておけ」

「ドリス。王城勤務の者は、ある程度秘密を持っているものですわ。それは騎士団も同じです。ちょっとくらい、秘密があったって良いではありませんか。それはご家族を裏切るものではないはず。家では、良いお父様なのでしょう?」

「……うん。そうだね。お義兄様も商会経営で、黒いことがありそうだし」

「その言い方ですと、誤解を受けますわよ?」

「黒いことも、守るものがあってこそ……って思うことにする!」


 やっとドリスに笑顔が戻り、ホッとした表情のリーナ。

 そんな二人を見て、アンディはひっそりと思う。


 「黒いこと」か。ロザリファ王は問題ないと思うが……曲者だしなぁ。

 そちらは良いとしても、息子の第二王子がコソコソしていることが、道理から外れないことであって欲しいのだがな……


 アンディの考えていることが伝わったかのように、横にいたリコが、小さく頷いた。







 精霊の授業は、当たり前だが、ドリスが受けたものとは違った。

 

「この蝋燭に火を灯すのが、最初の訓練だ」


 机の上には、用意された蝋燭が五本立った状態で並んでいた。


「これは、小さい炎を出す練習だ。念のため、水も用意してあるが、なるべく使いたくない。ブリギッド、わかるな?」

『要は小さい炎になるよう、調節すれば良いんでしょ!』


 「ふん!」とそれくらい出来るわよとばかりに、手をかざすリーナの合図で、ブリギッドは蝋燭に集中する。


 ポポポポポッと、五本の蝋燭に規則正しいリズムで火がついた。


「で……出来ましたわ!!」

「うん。いいな。次はつけた火を消してくれ」

「そんなことが出来るのですの!?」

「炎の精霊は、火の調節が出来るのですよ。やってみればわかります」


 リーナと同じ炎の精霊憑きである、リコが答えた。

 

「ブリギッド、お願い」

『任せて』


 リーナが手をかざすと、今度は静かに火が規則正しく消えていった。


「成功だな。よく頑張った」

「ありがとうございます!」

「ブリギッドもよく我慢した」

『わ……私はリーナの指示に従っただけなんだから!!』

「よくブリギッドに指導したな。ジン、アイリス」

『大変だったなぁ。これで報われたよ』

『ブリギッドは一生懸命でしたから、出来ると思っていました』


 結局、水の出番はなかったので、リコと一緒に、ドリスが片付けることになった。


「申し訳ございません。ご令嬢にこんなことを」

「気にしないでください。下位貴族はこんなものですし、小さい頃を思い出しました」

「ドリス様が、水汲みをしていたので?」

「当時は貧乏でしたから、皆でやっていました。良い点もあるのですよ。もし、女官になれなくても、侍女として王城に上がれる力がつきますし」


 そう言いながら、流し場に水を流した。


「ドリス様が、侍女ということはないでしょう」

「そうですか? 合っていると思うのですが……」

「ドリス様は革命者だと、私は思っております。この国で精霊が視える時点で、もう特異な存在ですし。……歴史に大きく名を残すようなことを成し遂げてしまいそうですね。実際、ロザリファ初の精霊魔法士ですし」

「それは私がたまたま最初ってだけですよ! 歴史に名を残すなんて……夢のような話、ですね」


 戻ると、二人はもう、帰り支度を終えていた。








 部屋を出て、アンディとリコと別れ、リーナと一緒に女子寮へと進んだその時。

 目の前に、ライオンを連れたフードを被った人が立っていた。


「行きなさい!」

 

 フードを被った賊は女性の声で、ライオンに指示をする。

 ライオンはそれに応える様に、こちらに向かって走って来た。


「アイリス!」

『はい!』


 ドリスはポケットに入れていた種をまとめたものを掴み、相手にそれを見せる様に、手のひらを上に向ける。

 すると、種は見る見るうちに成長し、ライオンはつるに縛り上げられた。そして、一緒に成長した花の形をした食虫植物が、ライオンの顔に向かって花粉の様なものを吐き出した。

 その粉を浴びたライオンは、眠ってしまった。


「ちっ!」


 舌打ちすると、ライオンは消え、フードの女の背中に、魔法陣が浮かぶ。

 その魔法陣の中にフードの女は消えた。


 





「どうした!!」


 さっき別れたはずのアンディとリコが戻って来た。


「賊に……襲われました」

「とりあえず、これ、なんとかするね」


 ドリスが成長を促したツルと食虫植物が、うねうねと廊下を彷徨っている。


「お願い。 種に戻して」

『はい。皆~、戻って~』


 するとシュルシュルと種に戻って行き、ドリスの手のひらに収まった。





「ライオンを連れたフードを被った女に襲われたの。最後は空間魔法使って逃げたみたい」

「そうか……また報告が必要だな」


 女子寮と男子寮の警備をしていた兵士達に報告し、警戒を強めてもらった。




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