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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
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64 剣術大会二回戦目


 第二戦目が始まり、トールがフィールドに立った。

 相手は、中立派の実力者らしい。


「代々騎士団に所属している家柄の人ね」

「上位貴族ってこと?」

「いいえ。彼は子爵位ですわ」


 子爵位といえど、古くからある家は多い。

 それは、ドリスの家であるアルベルツ子爵家も同じだった。


「この国の騎士というのは、大きな手柄を立てないと、上位貴族にはなれません。元帥から認められ、上位貴族である伯爵位になったケースもありますが、大体が戦争で英雄並に活躍なさった方に、上位貴族となれる権利が与えられる様ですわ」

「騎士が上に行くのは難しいってことか」

「商売や事業等を興し、大きな利益を得た場合は、すぐにでも伯爵位が授けられます。今は、戦争はしておりませんし、それより利益を出した方が、国のためになるからです」

「そういえば、トールのファルトマン伯爵家は、紙で成功した貴族だったっけ?」

「そう。トールの家は、紙という革命的な物を生み出したとして、すぐに伯爵位が授けられました。もしかしたらドリスの家も、そう遠くない未来に、伯爵位になっていてもおかしくないと思いますよ」

「え~……ピンと来ない」

「あ! 始まりますわ」






 相手は騎士の家というだけあって、大柄な男だった。対してトールは平均くらい。(はた)から見ると、トールはメガネをかけている事もあって、ヒョロくて弱そうな男に見える。

 しかし、第一戦目を目撃している人には、そんな身体の差など関係ない。

 ヒョロい男が頑丈そうな男をどう攻めるか、皆の関心が集まっていた。


 相手は重量型らしく、剣が重い上に素早い。さすがのトールも、さっきの試合よりも早く決着はつかなかった。

 だが、それでも勝負は拮抗しており、両者譲らないとばかりに、積極的に攻め合っていた。

 そして相手と離れたわずかな時間、ホッとした顔をトールは見逃さなかった。その一瞬の隙をつき、懐に入って、喉に剣を向けた。


 これには会場全体がどよめいた。


「おぉ~!!」

「すごいなぁ!! あれ、うちのクラスの情報屋だろ?」

「メガネかけてヒョロっとした身体なのに、痺れる~!!」


 賞賛の言葉がかけられ、少し照れる様子のトール。

 それを見て、リーナは冷静に分析した。


「トールに賞賛の声が多いのは、男性陣の様ですね。女性陣は賞賛するも、黄色い悲鳴は上がらない……やはり、顔の差ですか」

「少し合ってるけど……違うと思う。見て、あのトールの緩んだ顔」


 今まで見たことがないくらい、だらしのない顔になっていた。


「あれでは、令嬢達は引いてしまいますわ」

「何でここで、格好つけた顔にならないかな~」


 ドリスとリーナは、頭に手を当てて「はぁ……」とため息をついた。






 エルの出番になると、周りの女子達が色めき立った。


「本気で狙ってくる方が居そうで、恐いですわね、ドリス」

「……な……何の事?」

「まぁ……エルに関しては、あんまり心配はしていません。それよりも女性陣で、ドリスに辛く当たる方が居なければ良いのですが……」

『それは私が守るから、安心してリーナ!』

「そうでした! 強力な警護がありましたわね、アイリス」

『うん、何かあったら、蹴散らすよ!』

「攻撃はダメだって、アイリス!」

「いえ、ちょっとだけならアリですわ」

『リーナ。意外と面白がっているな』

「面白いですわよ、ブリギッド。ドリスの色んな顔が見れますから」


 リーナにつられ、久々にブリギッドの笑顔が見れたところで、エルの試合が始まった。







 相手は、またもや過激派の子息だった。

 嫌な目つきをしながら、エルの攻撃を待っている。誘いに乗ってやるとばかりに、エルは積極的に突っ込んで行った。

 剣の打ち合いになったが、エルの剣さばきについていけなくなったところを見計らい、相手の剣を思いっきり吹き飛ばす。

 試合続行不可能になったところで、エルの勝利が確定した。


「鮮やかでしたわね」

「うん! 見てて楽しかった」


 また、相手選手はエルを睨みつけて来た。


「懲りないね」

「そうね」


 渋々と言っているかの様な足取りで、フィールドを後にした。





 

 第二戦目は、九人になるため、一人は二度戦うことになっている。二度戦う選手はエルだった。エルは続け様の試合となる。


「何で!? 普通一番最初一戦にやって、休憩してからもう一戦、じゃないの?」

「昔はそうでしたよ。ただ……その後、もう一戦やる選手が、どこかへ行ってしまい、その選手は相手の不戦勝で負けてしまったことがあったのです。それを防止するための措置が、これですわ」


 エルは少し疲れた素ぶりはしていたものの、やる気を見せていた。

 相手選手はラッキーとばかりに、余裕の表情だ。


「また、過激派ですね。エルってもしかして、運がないのでしょうか?」

「うーん……」


 相手が過激派な上に、続け(ざま)の対戦。運がないと思っても仕方がなかった。






 試合が始まると、両者一歩も動かない。痺れを切らしたのは、相手の過激派子息だった。

 勢いよく突っ込み、エルの元に駆けて行く。その動きは、他の選手達に比べ、精彩を欠くものだった。

 エルは冷静だった。剣を受け止めずに躱し、相手の背後に周ると剣を首元に添えた。

 あまりにもお粗末な戦い方に、過激派の生徒に対してのブーイングが起きた。

 その生徒は顔を真っ赤にさせ、エルを睨みつけて、そそくさと出入り口へ入って行った。


「今の戦い方……どう思う、リーナ」

「不正の匂いがしましたわ」

「ワザと先生が彼を出した。実力者を差し置いて……とか?」

「剣術の教師に注意が必要かもしれませんね」


 周りも、なんでこんな選手が出ているのかという話で、ざわついていた。






 準決勝戦。

 先ほどより少し長めの休憩時間を経て、トールが競技場に姿を表した。


「相手は……過激派ですわ!」

「トール……大丈夫かな?」

「私は余裕でトールの勝利だと確信しております。ですが彼は、あの第二王子の側近です」

「最悪な人選」


 エルに当たるかと思ったが、今度はトールに当たってしまった。





 そしてこの後、問題が起きた。


「アナトール・ファルトマン、反則行為の為、失格」



 


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