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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
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62 剣術大会出場とピンクのオーラ


 エル、トール、アンディのクラスでは、剣術の授業が行われていた。

 今日が、剣術大会の出場をかけた試験の日である。


 全員の試験が終了し、剣術大会に出場できる選手の発表があった。

 結果、エルとトールが出場する事になった。

 アンディは惜しいところまで行ったが、補欠止まりだった。

 

「エル、トール。おめでとう」

「ありがとう。アンディはもう少しだったな」

「あぁでも、もし大会当日に欠場がなければ、大会委員を手伝ってくれと言われている」

「それ……アンディがやる仕事か?」

「こちらの王太子も、しょっちゅう雑用はやっていたそうだぞ。この学園では栄誉なことなのだろう?」

「あぁ。王城勤務の加点になるからな」

「アンディがそれを率先してやるとは思わなかった」

「まぁ。いつもはリコがやってくれるからな。新鮮だ」

「え? 先生からの頼まれ事も、全部リコさんがやるんじゃないんだ」

「それじゃ意味がないだろう」

「いや、リコさんがいる意味ないだろう」

「私は、アンディ様を温かい目で見守るのも役目ですので」

「そんな役目は知らないぞ」


 リコはにっこりと笑ったまま、ジト目のアンディを見ていた。


「何かアンディ、前より良い顔になったよな」

「は?」

「そうだな。表情が豊かになったというのが正しいか」

「そ……そうか?」

「で? リーナとはどうなんだよ」


 トールが小声で囁くと、アンディは少し頬を赤くした。


「え? 予想外の反応!?」

「……うるさい、黙れ」

「それより放課後、剣術の鍛錬付き合ってくれないか?」

「ドリスが居るじゃん」


 からかうトールの言葉に、今度はエルの頬が赤くなってしまった。


「……その状態じゃ、無理だな」

「今日は大人しく帰ろうぜ」

「あ……あぁ」


 ったく、どいつもこいつも恋ですか。あーー!!俺も相手が欲しい~!!


 トールは心の中で、心の丈を叫んだ。






「あ! 皆様!!」


 ドリスとリーナがこちらに寄ってきた。


「怪我していませんか?」


 リーナの言葉に「え?」と言って固まった。

 何でもリーナの精霊は、回復系もあるので練習をしたいと言う。


「残念ながら、ないね」

「そうですか……」

「リーナ。まずは魔力操作を習得しなければならない。私は、魔法の師であるつもりなのだが……なんで、勝手に回復魔法を使おうとしているのかな?」


 それにリーナは肩をビクつかせ「申し訳ありませんわ」とシュンとした子犬の様な口調で謝った。


『私が言ったの! リーナにいっぱい魔法使って欲しいから、怪我している人をどんどん治せって』

「ブリギッド……だったな? 人に憑いたのは初めてか?」

『だったら何?』

「もし、回復魔法が失敗して、リーナにその傷が移ったり、反対にひどくなったりしたらどうするつもりだ」

『そ……それは……』

「この精霊はまだ未熟らしい。いいか、リーナ。魔法に関しては、私が教える。それまで、無闇に使わないように」

「はい」

「ブリギッドも、焚きつけないように。ジン、そしてアイリス。ブリギッドの指導をして貰えるだろうか? まだ、人間に憑いたことがないので、あまりこちら側の知識が無いようだ」

『わかりました~』

『おう。任せろ!』


 当のブリギッドは、ムスッと拗ねた顔をしていた。


「リーナ。魔法の指導なのだが、私も剣術大会に関わることになったので、あまり時間が取れないかもしれない。申し訳ないが、それまでブリギッドの指導を優先させてもらう」

 

 その言葉に、さらにブリギッドは眉を潜め、口を膨らました。


「殿下。私の指導は?」

「アルベルツにはもう、教える事はないだろう。十分使いこなしていると思う。だが、自分の魔力の限界には気をつけろ」

「分かりました、師匠」

「……私は良い生徒を持ったようだ」

「私も良い生徒になるよう、頑張りますわ」

「期待している」


 リーナに対して、アンディはとても甘い顔で微笑んだ。

 その顔を見て、リーナは頬を赤くし、アンディから目が離せなくなった。


 二人がはっきりと恋に目覚めた瞬間だった。






 とても微笑ましい光景なのだが、二人の周りにいる者には良い迷惑だった。


「ま……眩しすぎる!! 美人二人のこの光景は、半端なく周りに、照れのオーラを振りまいている!!」

「あぁ。俺には精霊は見えないが、ピンクのオーラが渦巻いて、こちらを襲う勢いだ」

「神々しい……!! 神々しい光景だけど、目に毒ってこのことを言うのかな?」


 三人は美人二人に圧倒され、三人共に、照れる結果になってしまった。


 それは精霊も同じだった。


『な……なんかこのオーラで、私、とろけちゃいそう!!』

『初めて見るなぁ! あのアンディの顔。いや~!! こそばゆい!!』

『なんであんな奴にリーナが……今までで、一番可愛い顔してるのよ~!?』


 勿論侍従リコも、同様だった。


「あの殿下が、まさかこちらをとろけさせる様な笑みを浮かべているだと!? もう!! 成長されて……」

『殿下……ついに見つけたのですね!』


 リコは口を押さえながら、涙を堪えていた。その肩にリコの精霊エンは手を置いている。


 幸せなことに、当の本人達は、周りの反応に気づいていなかった。






 やっと、ピンクのオーラから解放され、皆で寮まで向かっていた。


「ねぇ、エル。私も、たまには剣を握りたいから、付き合ってくれる?」

「え?」

「ちょうど良かった! 俺とエル、剣術大会に出場が決まったんだ!」

「え!? そうなの? おめでとう!!」

「あ……ありがとう」

「じゃあ……剣の鍛錬に付き合ってもらおうとしたのだけど……難しいよね」

「いつでも良いぞ!」

「いいの?」

「ドリスなら、良い練習相手になるもんな」

「まだ、殿下に勝てるかなぁ?」

「私が鍛錬を怠っていると思うか?」

「私もやってます。隠れて」

「女子寮にそんなスペースあるっけ?」

「寮の裏手。早く起きてやってるんだ。それで? 再戦、受けてくださるのでしょうか? 殿下」

「……次は負けない」

「いいえ! 次も私が勝ちます」


 ドリスとアンディの睨み合いに、何故か、エルが嫉妬してしまった。


「俺とやるより、生き生きしているような……」

 

 トールは黙って、エルの肩に手を乗せた。




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