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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第三章 大会盛り沢山!!
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61 新学期! 初めまして、炎の精霊さん!!

久々にボイス先生の登場です!


 始業式前日に寮に戻って来たドリスは、自室である固いベッドに肩を落としていた。


「またこの固いベッドで寝る日々が始まるんだ……」

『それは仕方がないね、ドリス。それより、この部屋に種を置きたいの。蔓の種をドアの近くと、窓と、ベッドに置いてくれる?』

「あ! そうだね」


 ドリスはいつも種を持っているのだが、出来れば対象者の近くにある種を成長させた方が相手を捕まえやすいので、念のため、散らばせているのだ。


「何もなければ良いのだけれど」

『ドリスのことだから、きっとあると思うよ』

「そんなの嫌!」

『しょうがないよ。ドリスだもん』

「どういう意味!?」


 それを知らないのは、残念ながら本人だけだった。






 新学期が始まり、ドリスとリーナのクラスの担任ボイス先生から、課題の回収と今月中にある剣術大会についての説明があった。


「夏休みの課題を回収する。教壇の前に出ている机に並べてくれ。まず、出席順が一番最後の者から順に、前に出て課題を並べてくれ」


 一人ひとり、前に出て課題を提出が終わると、ボイス先生は笑顔になった。


「正直一人くらい、課題を提出しない者がいるかと思ったが、杞憂だったようだ。

 さて、剣術大会についてだが、新学期明けの剣術の授業で試験がある。その時、教師によって順位がつけられ、クラス上位六名が大会に出場できる。

 尚、補欠は上位七位~九位の者とする。

 大会委員については、教師から声が掛かった者が、選出される。大会委員は、王城勤務の加点にも繋がるから、声を掛けられた者は栄誉と心得よ」


 男子達は「おぉ!!」と嬉しそうに雄叫びを挙げる。


「女子は今回は出場が出来ないが、その次には馬術大会が迫っている。それは男女混合で、クラス上位五位以上が選出される。女子も十分出場資格があるので、努力するように」


 女子達は少し騒ついただけで、大して騒ぐ事はなかった。


「では、課題を運んでもらう生徒を発表する。アルベルツ、ブローン……」


 女子はドリスとリーナ。男子も二人呼ばれると、多数の生徒がクスクスと笑い合っていた。笑っているのは例のごとく、上位貴族の生徒達だった。


「課題を運んでもらう生徒は、現時点でこのクラスの成績上位の四名だ。この四名は王城勤務の加点対象とする」


 すると、嘘の様に笑いが消えた。


「前にも言ったよな? この学園は貴族優位ではなく、成績優位だ。この四人を見て分かるように、ブローン以外は全員下位貴族だ。今、笑った者は恥を知れ!! 以上」


 今日は課題提出と、剣術大会についての担任からの説明だけで終わる日だ。もう立ち上がって、寮に戻っても良いのに、ボイス先生の迫力に押されてか、皆、固まった様に動かない。


「では、四人は課題を持って、職員室まで俺と一緒に来てくれ」


 ドリスは課題を持って、ボイス先生の後へ急いだ。







 職員室に着き、課題を所定の場所へ提出を終えると、ボイス先生から、労いの言葉が掛けられた。


「四人ともお疲れ様! 先ほど言った事は本当だ。王城勤務の加点をやろう」


 そう言われ、その場にいた皆で嬉しそうに顔を合わせた。


「王城勤務の加点になることは、どれも雑用的なものが多いが、王城勤務になったら、まずやるのはこんな雑用が多い。親のコネもあるにはあるが……今、ロザリファで重役につけるのは、雑用をきちんとこなして、着実に出世していった者がほとんどだ。しっかり励めよ」

「「「「はい!」」」」


 ボイス先生の激励に、四人で胸を張って答えた。






 教室に戻り、ドリスはリーナと一緒に寮へ戻ろうと教室を出たところで、エル、トール、アンディ、リコが待っていた。


「あ・来たね。先生の手伝いに選ばれたのだろう? お疲れ」

「うん。トールも?」

「俺が選ばれるわけないじゃん。この二人は選ばれたけど」


 トールはエルとアンディに目を向ける。

 するとアンディが口を開いた。


「今日は、リーナに用があって来た」

「あ! もしかして」

「そういうことだ。どうする? この後、寮の談話室でやらないか?」

「何をするんだ?」

「あー! あれか?」

「だと思うよ」

「何で皆分かるんだよ!」


 相変わらず察しの悪いエルを他所に、皆は寮の談話室へと急いだ。






 談話室に着いても、エルには何をやるのか分からなかった。


「で? 何をやるんだ?」

「まだ分からないのかよ。精霊指導だよ」

「……あ!」

「遅い!!」


 トールに突っ込まれるエルを見て、ドリスは何だか癒される気分だった。


 今までならトールと一緒に「鈍い」って突っ込んでたなぁ。そんなエルを見るとイラついていたのに、どうしてだろう?


 ドリスは、その意味をまだはっきりとは分かっていなかった。






「確認するが、三年以上精霊に祈っていたのか?」

「はい、今も続けていますわ」

「なら良い。……では、覚悟はいいか? リーナ」

「えぇ。どうすれば良いのですの?」

「両手を机の上へ」


 リーナが両手を机の上に持ってくると、その両手をアンディが取った。


「今から魔力を流し、その魔力の流れを感じてもらう。行くぞ」


 アンディが魔力を流し始めた。


「だんだん身体が暖かくなってきましたわ」

「うん、いい調子だ。次は、魔力の巡りを感じてもらう」

「あ……身体中に何か……暖かいものが巡っている気がします」

「それが魔力だ。……離すぞ」


 アンディの両手を離しても、その感覚は変わらなかった。


『リーナ!』

「え?」


 声がする方へ顔を向けると、そこには女神の様な女性がいた。


 瞳は金色をしていて、髪はウェーブの赤毛で、長い髪の毛を高いところで一つに(くく)っていた。身体つきはスレンダーで、顔立ちはかっこいい印象の二十歳くらいの女性だった。


「貴女が……私の?」

『やっとこっちを見てくれたぁ!! そうだよ! ブリギッドって言うの! これからよろしく! 私の可愛いリーナ!!』


 ブリギッドからいきなり抱きつかれ、リーナは「え? え?」と固まってしまった。


「リーナの精霊は情熱的だな」

「同じ女性だけどね」

「え? 成功したの?」

「今、リーナ固まってるけど……どんな状況?」


 エルとトールは判らないので、状況を話すと、二人とも穏やかに笑った。


「愛されてるねぇ」

「いいことだ」


 当のリーナは恥ずかしそうに、顔を赤くしていた。




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