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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第二章 三領巡りに出発!!
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60 ロザリファ王族の事情


 ロザリファ王には、四人の子どもがいる。


 王太子である第一王子、シュテファン。

 第一王女、アリーナ。

 第二王女、ユスティーナ。

 第二王子、バシリウス。


 彼らは、王妃クララと側女エリーゼの子ども達である。


 王妃クララは、シュテファンとユスティーナの母。

 側女エリーゼは、アリーナとバシリウスの母だ。






 そもそも王は、王妃クララ以外の妃を娶るつもりはなかった。

 エリーゼを側女として娶ったのは、他でもない、先王に懇願されてのことだった。


「なぜ、その様な者を娶らねばならぬのですか!!」

「すまない! もちろん其方なら、しっかりとした姫を選ぶと思って、誰でも良いと言っていたのだが……その、他の貴族から、強く反発を受けてしまってな」


 何でも、中立派の姫だけを娶るのは如何なものかと、結婚してから、過激派の者達が連日抗議に来ているという。


 もう既にこの時、王太子時代にアウグストはクララと結婚していた。そんなことが起こっていたことなど、寝耳に水だ。


「何故、私の耳にはその事が入らなかったのでしょう?」

「それは……」

「私はクララ以外は無理です」

「そう言わんでくれ! もう、暴動が起こる寸前なのだ」

「何故私にその事を一言も言わないのです!?」

「クララの耳に入れて欲しくはなかったのだ!! 穏便に済まそうとしたのだが、なかなか引き下がってはくれなくてな。思ったよりも厄介だった」

「……誰です、その姫は?」

「エリーゼ・ブンゼン侯爵令嬢だ」

「ブンゼン……確か……法務大臣の補佐の」

「そうだ。その娘しか、年が近くなくてな」


 そうして渋々、エリーゼとは婚約、結婚となり側女を置くことになった。






 側女になった一つ年上のエリーゼはとにかくやりたい放題だった。

 連日、過激派の令嬢達とのお茶会を開いたり、商人を呼んで、好きなものを全て買ったりしていた。

 しかし、実家からのお金が尽きかけたのか、王を頼ろうとしてきたので、アウグストはそれを突っぱねた。


「新しいドレスと宝石が欲しいのです!」

「そんな金はない!」

「何故です!」

「金は何もないところから、出てくるものではないからだ」

「これでは、次のパーティーまでに、流行のドレスが買えませんわ!」

「そういうのは王妃が着るから問題ない。其方はもう、十分過ぎるほど買ったのだろう? それで良いではないか」

「王妃と同等かそれ以上でなければ……」

「普通、側女は王妃を立てて、王妃よりは地味なドレスを選ぶものだ。話はこれだけか? 金が欲しいなら、そのドレスや宝石を売ったらどうだ?」


 アウグストが金の管理を厳しくしていたお陰で、国庫に影響はなかったが、エリーゼの我儘と、王妃クララへの嫌がらせが相次ぎ、頭を抱える事になった。







 そんな中、クララに子どもが出来、王太子であるシュテファンが生まれた。

 国民・貴族は大喜びだったが、過激派はそれを苦々しく思っていた。


 ついに過激派から、エリーゼとの子どもを作れと言われ、渋々定期的に閨に向かって、やっと子どもが出来た。


 そうして生まれてきたのが、第一王女アリーナである。

 

 アウグストは一応自分の子どもだからと可愛がろうとしたが、エリーゼそっくりの娘は、性格もそのまま似てしまった。


「お兄様!」


 アリーナは、シュテファンが好きだった。

 見た目が好みだったのだろう。

 エリーゼも、シュテファンには嫌がらせをしたことはない。

 なぜかシュテファンには、誰もが王になって欲しいと願う魅力があったのだ。

 だからかエリーゼは、アリーナとシュテファンが一緒に居る時も、微笑ましく見ていた。

 シュテファン自身、アリーナをあまり好きではなかったが、妹だからと少しは構う事があった。

 だが、それも長くは続かなかった。

 

 王妃クララに第二王女であるユスティーナが生まれたのである。


 王太子は、自分と同腹であるユスティーナを可愛がった。

 それがアリーナには気に食わない。


 側女エリーゼもユスティーナの存在にはイラついており、丁度過激派の者が、次は男の子が欲しいと懇願してきたのを良いことに、アウグストにお願いした。


 仕方なくアウグストはまた渋々、エリーゼの元へ通う日々が続き、ついに第二王子バシリウスを産んだのである。






 ユスティーナが大きくなると、アリーナからのいじめが始まった。


「やめてください! お姉様!!」

「何よ。これは私のものよ!」


 アリーナはブローチを持って、部屋を出て行こうとする。


「それは、お兄様から頂いた、大事なものなのです!」

「まぁ! それを貴女如きがつけるというの!? これは私にこそふさわしいわ」


 そしてアリーナは、そのブローチをつけたところをシュテファンに見つかった。


「アリーナ。これはティーナにあげたものだ。何故お前が持っている!」

「これは私にこそ相応しいのですわ!」

「お前にもやったはずだ」

「お兄様からのものは全て私のものですの!!」

「アリーナ……今後、お前に贈り物は一切しない。ティーナ。済まない。後でお詫びをさせてくれ」

「お兄様……」


 こんな事が起こり、さらにアリーナの我儘やティーナへのいじめがエスカレートして行った。






 王城の裏手には、絶対入ってはいけないと言われている小さな森がある。

 その森に入って、助けを呼ぶ事態になったとしても、決して入って助けることが出来ない危険な森だ。

 勿論、その森には猛獣もいる。


 アリーナはその事を知っていた上で、何も知らないティーナに、なくしたブローチを取りに行ってくれと頼んだ。ティーナは困っているアリーナのために、森へと一人で入って行った。


 しかし、ブローチなんて、そんなものはどこにもない。

 ティーナはどこをどう行けば、王城へ戻れるのかも分からなくなってしまった。


 途方に暮れ、泣き崩れていると、目の前にふわりと浮かぶ、光の玉が浮かんでいた。

 その光が「こっちこっち」というように、ティーナを導き、ようやく王城へとたどり着いたのである。


 ティーナがホッとして泣き崩れていたのを、もう仕事を上がろうとしていた庭師が見つけ、無事保護された。


 この時のことをティーナはよく覚えておらず、こんなことが起きたこと事態、周りの大人が知る由もなかった。唯一知っていたアリーナは、悔しそうな顔をして、影から睨みつけていた。


 その後、ユスティーナがパーティーで着る予定だったドレスが、ズタズタになっていたり、用意していた装飾品がなくなる事が相次いだ。


 ユスティーナが悲しみに暮れる中、ユスティーナより二つ下に生まれた、第二王子のバシリウスも参戦するようになったのである。


 嘘の呼び出しをして、上から大量の水を掛けたり、ユスティーナの部屋を泥で汚くしたりと、悪質な嫌がらせが続いた。


 





 そんな時、シュテファンは、アリーナとバシリウスと仲良くする事を試みた。二人ともシュテファンの言う事を良く聞き、愛想よくしていたが、ユスティーナへの扱いは相変わらずだった。


 そしてついに、シュテファンが切れた。


「……いい加減にしろ! ユスティーナへの当たりが弱まればと思ったが、飛んだ勘違いだった!! もう、お前らは俺の兄弟ではない!! 私のことを今後兄と呼ぶのを禁ずる!!」

「そんな……!!」

「シュテファン()だ。ユスティーナにも()をつけろ! お前らが王族だと、私は金輪際認めない!!」


 その日から、ユスティーナへの当たりは弱まったが、なくなった訳ではなかった。


 王も当然その事を知っていたが、自分が手を出せば、もっと酷い目に会うのではないかと静観することに留めていた。


 




 未だ、王城はピリピリとした、気が抜けない空気が続いている。


 シュテファンは、王太子妃エラを迎え、すでに王孫を産んでいる。

 しかも現在、エラは新たな子を身ごもっていた。


 シュテファンは、母であるクララ、ユスティーナ、エラ、そして子どもに害が及ばないよう、常に過激派の監視を緩めてはいない。


 過激派は、今は静観しているが、水面下で新たな動きをしていた。

 勿論、過激派である第二王子バシリウスは、その事を知っている。


「……ふん。もう少ししたら、この王城は俺のものになるんだ。その事も知らないで……よく強気でいれるものだ」

「バシリウス様……」

「エミーリア、心配しなくて良いよ。君は、俺が守るからね」


 バシリウスは、妖しい笑顔でエミーリアに微笑んだ。




ついに王族の細かい事情が明かされました!

シュテファンの魅力は、ご想像通り、聖属性の精霊の仕業です。(深く掘り下げる気はありません)

先王が事前に結婚相手は誰でも良いと言ったところがあったのですが、番外編「アルベルツ家周辺の人々」の04話に、さらっと記載されていますよ。

小さな森に関しては、もしかしたら、番外編に載せるかも知れません。


この回で、第二章の夏休み編は終了となります。次回からは、第三章の学園行事編となっております。作者の拙さマックスな章です! 色々お見苦しい点が多々ございますが、お楽しみ頂ければと思います。


気づけば残り30話! 残り一ヶ月、お付き合いくださいませ!!

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