55 街へ遊びに行きましょー!!
女子トークをしたその日の夕食時に、良い知らせが届いた。
『やっと、あの三人組は出て行ったぞ』
「本当!?」
「ドリス、何て?」
「もうあの三人組は、出て行ったって!」
「元々、あの三人の資金はそんなになかったからな。一泊で精一杯だろう」
「じゃあ、やっと行けるな! 明日は町巡りだ!!」
「そうですわね! 明日行きましょう!!」
明日は、ついに待ちに待っていた町巡りをする事になった。
次の日。
男性陣は皆、金髪のカツラをつけていた。
「え!? アンディも金髪にしたの?」
「そうだ。この色も試して見たかったからな」
「大丈夫かなぁ。さらに美少女度が増してる気がするけど」
「……美少女?」
「あ・いや、この国では金髪に緑の瞳なんていっぱいいるし~……その」
「大丈夫です」
すると、金髪のカツラを被ったリコが、話を割って入る。
「アンディ様の貞操はこの私が守ります」
「リコ! 主人に対して失礼な事を言うな!!」
「真実ですので」
そう、金髪姿のアンディは思った以上に麗しかった。
黒髪のオリエンタルな姿も魅力的だが、金髪になると、華やかさが強調されて、より女性的になる。女性的な髪型ではないのにも関わらず……だ。
「俺が結局霞んじゃうじゃん」
「知らん」
そんな会話をしていたトールとアンディを他所に、女性陣も準備が出来たらしく、ロビーで合流した。
「お待たせしましたわ」
「みんなキラキラだね」
リーナとドリスは、お揃いの茶髪のかつらを被っていた。
「ドリス、綺麗だ」
「あ……ありがと。エルも相変わらず似合ってる」
「あら、ちょっと暑いかしら?」
「リーナ!!」
「では行きましょう! 予約しているとは言え、早く行かないと」
実は、昨日の夕食が終わった後に、使いを出し、レストランに次の日の昼の予約を取ったのだった。……領主権限で。
幸い、混み合ってはなく、すんなり予約が取れたと聞いて、ドリスはホッとした。
皆、同じ馬車に乗り、街へ向けて出発した。
「レストランは元我が家のシェフがやっていますの。きっと気に入りますわ」
「ブローン家の食事、他とは段違いだもんな」
芸術にこだわるブローン家は、見た目だけかと思いきや、中身から何から何までこだわっている。
服もデザインはもちろん、機能性にも力を入れているものも多いし、食事も味には、国内で一番こだわっていると言っても良い。
「我が家から独立するシェフも多いのですよ。王城に上がった者もおります」
「王城の食事も確かに美味しかったのだが、こちらの方が上だと思う。全員には行き届いていないのだな」
「王城はですね、古参のシェフが多くおりまして、いまだに格差があるのです。我が家から王城に上がった者とも、たまに会うのですが、あまり大きな仕事は任されていないようでした。それでも他の者よりはマシだと言っておりましたが……」
「まぁ……古参の者が新しいものを取り入れるかというと、そうではないこともあるからな」
アンディは口には出さなかったが、ただの頑固な人なのか、それとも過激派と関わりがあるのか、王城に居る時は注意しようと密かに警戒した。
街に着き、レストランに入ると、皆好意的な目で見てくれた。
なんでも、リーナお嬢様がご友人を連れて来たのは初めての事で、こちらも気合が入っていると、レストランのオーナーであり、元ブローン家のシェフの男性が教えてくれた。
「リーナ、愛されてるね」
「ま……まあね!」
リーナは恥ずかしそうにそっぽ向いた。
レストランの食事を堪能した後、メインである買い物をする事になった。
「皆で動きます? それとも別行動しますか?」
「皆一緒で良いだろう。用が出来たら途中で抜ければ良い」
そこで皆が目指したのは、貴金属の店だった。
「え!? ここに入るの?」
「何? トールは興味なかった?」
「ない訳じゃないけれど……」
俺、君らみたいに相手がいないんだけど……
トールは渋々、皆について行った。
「私とドリスのお揃いのものを買いましょう!」
「良いね。何にする?」
女性陣二人はとっとと奥へ行ってしまった。
「皆は何買う?」
「……お……俺は……その……」
「エル? どうした? まさか……」
「そこまでにしてやれ、トール。私もエルと同じで買いたいものがある」
「アンディもか……」
やっぱり! ……入らなきゃ良かった
リーナとドリスは、お揃いの髪飾りを購入していた。エルとアンディも購入し、店を出たところで、男二人が動いた。
「ドリス……これ、受け取ってくれないか?」
「え……」
それは、小振りの水色の石が付いているネックレスだった。
「普段使いに良いかと……思って……」
「貰って……いいの?」
「領では、ドリスが居たからこそ、助かった事も多かった。そのお礼……」
「あ……ありがと」
互いにぎこちなく言うところが初々しい二人だった。
すると、アンディもリーナに贈り物を渡した。
「リーナ、これ、受け取ってくれ」
「まぁ。私に?」
それは、緑の石がついたブローチだった。
「色々、世話になったからな」
「……本当に頂いてよろしいのですか?」
「あぁ」
「ありがとうございます」
女性二人は、頬を染めて、お礼を言った。
すると、エルとアンディは黙って目を逸らす。
トールはこの生暖かい空間に、ゲッソリしていた。
あーー……お熱いですねーーーー。二人とも、自分色に染めたいってか? 自分の瞳の色が入ったものをプレゼントなんて……あーー!! 俺も可愛い婚約者作りたーい!!
歯ぎしりしたい気持ちを必死に抑えて、トールは冷静になろうと務めた。
一方従者のリコは、密かに感動していた。
アンディ様。
クソ生意気な美少年の頃から、大分成長なさった……。
初めて会った時は「美少女の従者キタァーー!!」 と思って、ニヤケ顔をしてしまい「私は男だ」と死んだ魚の様な目で言われてしまったが、それが夢の様だ。
サボっていた剣術や馬術も、以前とは比べ物にならないくらい上達されて……お兄様でいらっしゃる、王太子殿下からは「姫」と揶揄されていた頃が嘘の様……!!
王太子殿下に言ってやりたい! アンディ様は漢になったと!!
本当に……ロザリファに来て良かった!!
リコがひっそり心の涙を流す一方、皆は買い物を楽しんだ。
よく考えたら、このメンバーの中で金髪はドリスだけだった事に、今更気づきました。
忘れている人はいないと思いますが、一応、皆の髪色を書いておきます。
ドリス→金髪
リーナ→黒髪
エル→銀髪
トール→茶髪
アンディ→黒髪
リコ→黒髪
……黒髪率、高!?




