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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第二章 三領巡りに出発!!
52/94

50 今の内に、美術館見学です!


 話題は変わって、三人組の話になった。


「そう言えばお父様、グロック侯爵令嬢からお手紙が届きましたの」

「ん? どんな内容かな?」

「うちに来たいのですって。その時、ドリスも同席させたいらしいの。私はお断りしたいのですけれど……」

「そうしたいのは山々だが、グロック侯爵家は断りにくいなぁ。我慢して、来てもらいなさい。お断りする方が面倒なことになりそうだ」


 すると、リーナの口がへの字に変わる。


「そんな顔するな。せっかくの美人が台無しだ」

「だって……」

「その代わり、招待するなら午前中にしなさい。昼は街のレストランをお勧めするんだ。そうした方が、すぐに買い物にも行けると言ってね。退出してもらいたい時にそれを言えば、すぐにここを出て行くだろう」

「そう……ですわね」

「我慢も大事だ。それが貴族の付き合いだよ?」

「……わかりましたわ。試練とでも思っておきます」

「ドリス嬢も申し訳ないが、付き合ってくれるかな?」

「はい」

「君にも良い勉強になると思う。ここが嫌いになってしまうかも知れないが……」

「もし私が傷ついたとしても、この場所ではなく人がきっかけでしょうから、ここが嫌いになるということはありません」

「……ありがとう」


 食事は無事終わったが、リーナの顔に笑みが戻ることはなかった。





 

 リーナは手紙に返事を書くと言うが、顔には「出したくない」と書いてあった。


「さっさと嫌な事は済まそうよ」

「……そうね。ちゃっちゃと書くわ」

「ちょっと意外だったなぁ」

「トール、何が?」

「ブローン公爵はリーナに甘々だと思ってた。娘の嫌がる事は極力やらせたくない人だと……」

「合ってますわよ。けれど、それが許されない事もありますわ」


 食事を取る前まで使っていた部屋に戻ると、リーナはみんなが見ている前で、グロッグ令嬢に宛てる手紙をサラサラ書き、後は任せたとばかりに執事に渡した。


 リーナは一仕事終えたとばかりに、侍女が用意してくれたお茶を一気に飲み干した。

 そして一息ついていると、アンディから申し出があった。


「ジンにも探らせてみるか?」

「殿下、顔も知らない人物の事を調べる事なんて出来ますの?」

「それは難しいが、風の精霊は音を拾うから、名前が分かればなんとかなる」

「……大変勿体ない申し出なのですが、お断りしますわ。恐らく、これ以上の情報は無いでしょう。私を持ち上げて、ドリスに嫌味を言って終わりですから」

「……わかった。私も力になりたかったのだがな。またの機会にするか」

「その時はよろしくお願いしますわ」


 やっとリーナは柔らかな笑顔を見せた。





 次の日。


 手紙は早くても今日出しに行くので、少なくとも二日は猶予があるそうだ。その間ドリス達は、美術館に足を運んでいた。


「着きましたわ。ここで一番大きな美術館です」


 白い柱が並んだ大きな神殿のような建物をみんなで見上げる。


「なんか……圧倒されるな」

「エルも?」

「トールもか。アンディは?」

「……正直、この国の王城より入りづらい」

「分かる」


 男性陣がまじまじと建物を見ていると、茶色の髪の女が声をかけた。


「皆様、足止まってますわよ! さぁ! 入りましょう」


 リーナは黒髪が目立つので、カツラを被っていた。同じ理由で、アンディも同じ色のカツラを頭に乗せている。

 エルの銀髪も目立つというので、金髪のカツラを無理矢理つけられてしまった。


「なんだか慣れないなぁ、皆の頭」

「その内慣れますわ、トール」

「私は新鮮で良い。こういうのも悪く無いな」

「……私も被れば良かったかな?」


 実はここに来る前に、ドリスもカツラを被らないかと誘われたのだが、トールは被らないということで、お断りしてしまったのだ。


「なら、次に街に出る時につければ良いですわ」

「全員でつけるの? なら俺、金髪にしよっと」

「甥っ子君とお揃いだね」

「選べるなら金髪が良かったんだ。ただでさえ顔も地味なのに……」

「普通の人よりも格好良いと思うよ」

「ドリス、それ本当!? 期待しちゃっても良いかな?」


 その、ドリスの発言に、敏感に反応したのはエルだ。


「ドリス、俺は!? 格好良いか?」

「自分で格好良いか聞くのと、トールのは違うと思う」


 バッサリ切られ、エルはシュンとしてしまった。そんなエルにトールは肩を叩くと、にこやかな顔をした。


「悪いな、エル」

「……ドヤ顔するな」


 そんな二人を他所に、三人は中へと向かった。






 美術館の中も、白が基調となっている。壁には絵が、部屋の中心には彫刻が飾られていた。


 意外と人は少なく、小声でなら会話しても良いとのことで、皆で行動しつつ、気になったらリーナに尋ねていた。


「お! 歴代ロザリファの王様達だ」

「ここでも観られるのか」


 歴代の王の肖像画は、王城に行けば見ることが出来る。

 初代ブローン公爵は自分が王族だったということを忘れてはならないと、美術館に歴代の王と王妃の肖像を飾ったのだ。

 王族に敬意を表してとの見方もある。


「こう見ると、王様って必ず淡い金髪に碧眼だよな」

「本当だ! 顔はちょっとずつ違うのにね」

「たまたまみたいですよ? ほら、王妃は茶髪も多いですから」


 歴代王妃の肖像画を見ると、半分くらいが茶髪で、後は金髪か銀髪だった。


「赤毛はあまりいないんだね」

「平民の方が多い髪色だからな。今は、男爵に多いか?」

「これから貴族に赤髪が増えそうだな」

「どうして?」

「今、商人を男爵にする動きが加速しているんだよ。王がよく陞爵しているらしい」

「それは私も把握している。何故だろうな」

「さぁ。そこまでは分からない。王の気まぐれ?」

「考えがあってのことだろうが……没落する貴族が以前より増えているから……とか?」

「エルにしてはまともなお答えで」

「「本当」」

 

 トールにからかわれてイラっとしたが、女性二人にも言われてしまい、エルは眉を寄せながら複雑な表情を作っていた。


「……あの王のことだ。何か考えがあってのことだろうな」


 アンディは小声で呟いた。





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