表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第一章 いざ! 学園へ!!
5/94

04 一生の別れじゃないよ!?

作者のお気に入り回の一つです。


 ドリスは母のアマーリアに、寮に行く荷物のチェックをお願いした。


「うん。問題ないわ!!」

「ありがとう。 でも、お母様の頃は大丈夫でも、今は違う場合があるからなぁ……」

「そうね。さすがに私も、それには疎いわ」


 アマーリアが通っていた時と、今では事情が違う。昔は購買で買えても、今は買えなかったりする場合があるからだ。


 すると、侍女がタイミングよく、手紙を持って来た。


「ドリス様! デリア様からです」

「え!?」


 ドリスは思わず、驚いた顔で侍女を見てしまった。


「出来るだけ早くドリス様に渡したかったと、ブレンターノ家の使用人が、走って来てくださいました」

「ありがとう……!!」


 ドリスはそれを受け取り、中身を確かめた。


「……あ! それかぁ。 もっと持って行く方が良いかな?」

「そうねぇ……あって損はないわよね」

「考えると……これ、少ないかも」

「そういえば……寮にある購買も、開いている時間がまばらだしね」

「そうなの!?」

「開いているはずの時間に行ったら、突然休業になっていたり。朝は開いていたのに、帰ると閉まっていたり。ゆるいのよね~」


 盲点だった物を、結構多めに詰め直し、準備は完了した。

 もちろん、デリアにお礼の手紙も送った。






 ドリスは明日、学園に向かう。


「いよいよ明日ね」

「さみしくなるなぁ……」


 カレンは、キョロキョロして、意味が分からないという顔をしている。


「ドリス叔母ちゃまは、明日から学園だから、しばらく家からいなくなるんだよ」


 父であるローレンツが、分かるように言うと、カレンの顔がだんだん泣き顔になってしまった。


「おばちゃま……あした……いないの?」

「大丈夫だよ! いつもは無理だけど、たまに帰って来るから……」


 ドリスが笑顔で言っても、顔が元には戻らない。

 ついに、カレンの目から、涙が決壊してしまった。


「やぁーーーーだぁーーーー!! ドリおばちゃヒッ……あーーーーーー!!!!」

「カレンーーーー!! 大丈夫!! 帰って来るから!!」

「あぁーーーーーー!!!!」

「すいません。落ち着かせるので……」


 ローレンツはそう言うと、カレンをだっこし、侍女が代わろうとするのを制止し、食堂を出た。






「言ってなかったのね」

「こうなるのを予測していたのかも」

「いつもドリスがかまっていたから……」


 ドリスは困った顔で、微笑みを浮かべた。


「そういえば、カミラ姉様とオリバーは……」

「それが……ご機嫌斜めみたいなの。朝もそうだったけど、何か三日前くらいから、様子がおかしいのよね」


 そういえば、三日前くらいから、オリバーに会ってないような……


 ドリスがそう思うと、ぐずっているオリバーと一緒に、淡い金髪に碧眼の、つり目の綺麗系美人の姉、カミラが食堂に入って来た。


「ドリス、オリバーを少しだっこしてあげてくれない? この子、ドリスが学園に行くことを知って、わざとグズっていたみたいなの」

「え!?」

「そうすれば、ドリスは行かないと思ったみたい」


 オリバーは、グズグズの顔をしながら、ドリスに向かって両手を前に出した。


「どー……ばー!」


 ドリスおばちゃんと言いたいのだろうか。

 今年で一歳とはいえ、今はまだゼロ歳のこの子は、賢い。

 ストレートな淡い金髪と碧眼は、カミラそっくりなのに、面立ちはローレンツに似ている男の子は、ドリスが抱くと、離れたくないとばかりに、顔を肩に押し付けて来た。

 

「オリバー、おばさんはすぐに帰って来るよ」

「……」

「いい子にして待っててね」


 軽くぎゅっと抱きしめると、オリバーは、まだ涙を流していた。


「はい! もう、いいでしょ」


 カミラは、ひょいっとオリバーを持ち上げ、抱き上げると「やーーーー!!」とオリバーは騒ぎ出した。


「カミラ姉様、どうしてオリバーが言いたいことが分かったの?」

「オリバーがいる前で、ドリスのことを侍女二人で、話していたらしいの。さみしくなるって。そしたら、オリバーが何か感じたらしくて、その後からグズり始めたのよ。さっきそのことを思い出した、侍女のビアンカが、教えてくれたの。それで聞いてみたらうなづくから、あぁ、この子は知っていたのかって……」


 それを聞いて、アマーリアとベルンフリートも驚く。


「まだ……ゼロ歳だよな」

「かなり……賢いわね」


 すると、カレンもトコトコと歩いて戻って来た。


「ドリおばちゃま! また、あえるの?」

「もちろん」

「わたし、まってる! おとうしゃまがいってたの! すぐかえってくるって!」

「うん! 待っててね!」


 もう……もう!!

 この可愛い天使達に愛されて、幸せ過ぎる~~!!!!!!


 ドリスがだらしない顔で、キュンキュンしていると、ローレンツも戻って来ていた。


「ドリス、ごめんね。うちの子達、ドリスが大好きだから」

「ううん! 気にしないで!!」


 寧ろ、ごちそうさまです!!


 オリバーはやっと泣き止み、眠くなったところで、カミラと部屋に戻った。


「やっと、食べられるな」

「うちの子達が、お騒がせしました」

「では、カミラとオリバーはいないが、食べようじゃないか! ドリスの学園入学を祝して……乾杯!」


「「「「乾杯!!!!」」」」






 次の日。

 

「身体に気をつけて……といっても、すぐ帰って来れる距離だが」


 このアルベルツ家は、王都にある、領無しの貴族だ。

 入学する王立ロザリファ貴族学園は、同じ王都内。

 通常馬車だが、歩いてもなんとか帰れる距離にあった。


「何かあったら、すぐに手紙を出してね!」

「困ったことがあったら、すぐに知らせてくれよ!」

「分かってる! お母様もローレンツ義兄様も心配性なんだから」


 すると、子ども達二人を連れたカミラが現れた。


「はい、二人とも。 ドリス叔母様にご挨拶しなさい」

「ドリおばちゃま。……いってらっしゃい」

「……ドー……ら」


 2人共、行って欲しくない空気が漂っていて、周りの大人は苦笑いだ。


「ドリス、本当に何かあったら連絡してね。 辛かったらすぐ言うのよ!」

「カミラ姉様まで……」


 カミラは、ドリスと同じ色の瞳で見つめる。その瞳からは、心配という思いが伝わって来た。


「大丈夫です! もし、一人でいることになっても、私は全然気にしないし!」

「「「「それが一番心配なんだよ!!」」」」


 ドリスは皆に言われてしまい、参ったなと苦笑いを浮かべた。


「もう、時間だし、行くね! 休みの日は、出来るだけ帰る予定だから!」

「「「「いってらっしゃい!!!!」」」」


 学園に行くだけで、大げさなんだから!


 ドリスはそう思いながら、馬車に乗り込んだ。



 




侍女のビアンカと出てきますが、それは「つり目」で登場したキャラです。

この回しか名前が出てきませんので、気になった方は、「つり目」でチェックしてみてください。


カレンとオリバーはこの後も出てきますので、是非、ご覧ください。

カレンとオリバーが出てくる回は、大体作者お気に入りです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ