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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第二章 三領巡りに出発!!
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45 さぁ! 皆で種を蒔こう!

とってもご都合主義な話が出て来ます。

そこについては深くつっこまないでください。



 結局その日は、白い狼の魔獣達を連れて、アピッツ侯爵領邸へ戻ることになった。


 今、同行している馬達は、狼達が自分に危害を加えないと分かったのか、最初のように怯えなくなったが、邸に残っている馬達は動揺するだろうからと、別の場所を用意することになった。


 ドリスは戻った後、早速アンディに考えたことを提案した。


「なるほど。それは私が行った方が良いな。リコ、お前も肉と骨の処理に貢献してくれ」

「かしこまりました」

「アルベルツ。あれを使うのだろう?」

「はい。……ちょうど良いですよね?」

「あぁ。エルとアピッツ侯爵から、許可をもらってこい」

「わかりました!」






 直ぐにドリスはアンディとリコと一緒に、エルとアピッツ侯爵の元へ行き、あの種の許可を取った。


「増やすつもりはなかったのだが、仕方あるまい。……にしても、なぜ、こんなことに……」


 苦い顔をしているアピッツ侯爵に、ドリスはアイリスから聞いた話を伝えた。


「アイリス……私に憑いている精霊に聞いたのですけれど、魔力を使い過ぎた上位の魔獣が、手っ取り早く魔力を取り込むために、魔獣達を食べたそうです。あそこに高濃度の魔素が溜まっていたのは、回復した上位の魔獣のせいだと。……鳥の魔獣だったそうですよ。南へ飛んで行ったと、狼達が言っていました」

「上位の魔獣……今までこんなことはなかったのだが……」

「あの狼達が他国からきた魔獣達を退治していたそうです。人を襲わないように。たまに人間の前に現れる魔獣は、その狼達が取りこぼした魔獣か、我を失った魔獣だそうです」

「他国から? ここは北側だが、辺境の地では……」

「たまにひっそりと入ってくることもあるそうです。魔力を感じ取って、この国で生まれたものか、そうでないかが分かると。……先ほど話した鳥の魔獣は、ギラザックから来たのではないかと言っていたそうです」






 この話は、領邸に帰るまでの間、アイリスにお願いして狼達に聞いてもらったものだ。


 ギラザックとは、ロザリファの北に位置する国で、ロザリファとは細い道で繋がっているギラザック王国のことだ。ちなみにこの国は、精霊が視える国で、精霊魔法、召喚魔法、空間魔法が使える国として知られている。

 

 また、数多くの魔獣がいることでも知られ、魔素が大国ドラッファルグ王国に次いで多い国とされていた。


 なぜ、南隣にあるロザリファの魔素が薄いのかというと、ロザリファ側に魔素が流れてくる前に、風でギラザック側に押しとどまってしまうらしい。今だにその原因は解明されていないので、詳しくは説明できないらしい。

 ギラザックでは、とても不思議な現象として、受け取っているという。






「ギラザックか……そちらも今は、食料問題が深刻化しているな」


 アンディが言うと、ドリスも以前聞いた話を思い出した。


「そっちもですか」

「あぁ。だが、わざわざ細い道を通って、こちら側に来るとは……」

「食料事情が魔獣にまで及んでいるということか?」


 エルも、真剣な顔つきで、独り言のように言った。

 アピッツ侯爵は気を取り直そうと、話題を変え、ドリスに顔を向けた。


「とにかく、狼達は我らを守ってくれていたということが分かった。手厚く保護しよう。あの種については、少しだけ残して、後は全て君に託そう。明日にでも、すぐに渡せるよう手配しておく」


 アピッツ侯爵の了解も得たので、すかさずアンディが明日、山へ向かうことを告げた。


「我らは早速、明日にでも狼達と山へ向かうつもりだ。馬は必要ない」

「では、少し兵を貸しましょう。一応護衛です。それだけは譲れません」

「分かった。朝食が終わった一時間後には出るつもりだ」

「かしこまりました。そのように」






 明日は、皆で山へ魔獣達の処理をすることになったが……


「リーナはどうする?」

「魔力が高い人でないと、入れないのでしょう? 私は上位の精霊が憑いているそうですから、入れるかも知れませんよね?」

「だが、魔獣の残骸も見ることになる」

「では、それらを燃やした後、中に入るのは? 私は目を背けておりますから」

「……私は来てもらいたいな。人手不足だし」

「……言うことをちゃんと聞くか?」

「あったりまえですわ!!」


 アンディに対して怒った風に言ったが、顔はちょっと嬉しそうなリーナだった。






 翌日、アピッツ侯爵は出かける用があり、執事から例の種を受け取った。


「お気をつけて。帰りをお待ちしております」


 心配そうにドリスを見て、執事は言った。


「ありがとう」


 お礼を言って、ドリスは皆に合流した。


「良し。行こう」


 アンディの号令で、山へ向かった。


 一日ぶりに会った狼達は、意外と元気そうだった。皆、身体を洗ってもらったらしく、昨日よりも真っ白でフサフサしている。狼達も嬉しそうだった。




 


 狼達の縄張りに着いたが、リーナだけは兵士と一緒に惨状が見えないところに避難していた。


「確かにこれは……ちょっと私ではきついわ」


 ハンカチで口を抑えながら、リーナは臭いと戦っていた。


「やはり元を何とかしなければダメだな。リコ」

「はい。やってくれるか?」


 リコの炎の精霊、エンが『おう!』と答えると、次々に魔獣の残骸を燃やしていった。辺りは焦げ臭いが立ち込んでいる。


「ある程度、燃やし終わったら、火種を消してくれ。その後私が風で、臭いを拡散する」


 アンディの指示通り、ある程度燃やし終わったところで、火種を消した。


「炎の精霊って、炎をつけるだけかと思った」

「消すこともできるのですよ。炎の精霊憑きだったり、炎の加護がある者の側では、火事が起きないのです」


 リコの説明を聞いている間に、アンディはジンに頼み、臭いを拡散してもらっていた。


「ある程度、臭いは薄れたが、まだ、完全とはいかないか」

「次は私の出番だね。リーナ! こっち来て、種蒔くの手伝って!!」


 リーナはドリスに呼ばれ、ハンカチで口を抑えながら、軽く走ってこちらへ来た。


「あ! 入れたわ」

「本当だ。エルとトールはやっぱり無理?」

「ダメ。足がいう事聞かない」

「俺も」


 これで、リーナも高い魔力の持ち主だという事が証明された。


「リーナ、手を出して」


 ドリスがリーナの手に種を乗せた。


「殿下とリコさんも」


 皆で手分けして、種を蒔いた。






「蒔き終わったぞ」

「では……あれ?」

「どうしたの?」

『もう、勝手に成長してるね〜』


 皆、一斉に下を見ると、蒔いたところにポンポン花が咲いていた。


『かなり高濃度の魔素だったから、花にとってはかなり良い環境なのかも』

「そのようだな」


 こんなやり取りをしている間にも、ポンポン花は咲いている。


「おい! エル! トール! まだこちらへ来れないのか?」

「え……あ! ちょっと足が動いた」

「すぐには難しいけど、このままいけば行けるかも」


 花はいつの間にか種になったのか、花が咲いていたところに枯れた花が現れた。その周りにもまた、新たに花が咲いている。


「これ、摘み取らないと、どんどん増殖していくぞ」

「でも、まだ魔素が薄くならないから、落ち着いてから摘み取った方が良いと思う」

「こうなると、ここの土壌が心配だな」

「アイリス。土の様子はわかる?」

『大丈夫だよ。この花は、魔素にしか反応しないから、土の養分には問題なし!!』

「……だ、そうです」

「……摘み取るのが大変だな」


 花は思った以上に増殖した。学園の運動場くらいに広げて蒔いた種は、その十倍の広さにまで広がり、おびただしい量の花が咲く結果となった。




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