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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第二章 三領巡りに出発!!
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37 次はアピッツ領!


 ファルトマン領では、伸び伸びと楽しく過ごすことができた。


 紙工場にも見学に行き、木から紙が作られる工程を見た。実は紙が木から作られるなんて半信半疑だったが、ようやく長年の謎が解けて納得した。

 特に男達は、目を輝かせていた。






 乗馬はトールが一番上手く、剣術はエルが一番だった。トールは、牧場が多い領地だからか、乗れるのは当たり前らしい。

 エルはアピッツ領育ちだからだ。たまに魔獣が出現することから、その土地の男は皆、剣の扱いに長けているそうだ。


 ドリスとアンディの剣の対決は、意外にもドリスに軍配が上がった。


 これには、流石のアンディも両膝をつき、しばらくぼーっとしていた。

 その姿にリコとエル、トールがアワアワし、ジンが腹を抱えて笑い、アイリスは「えっへん!」とばかりに胸を張っていた。






 剣術訓練中、リーナは見学だったので暇そうにしていたが、魔獣達が居る柵のすぐ横の所でやっていたため、リーナは見学をしつつ、魔獣達を可愛がっていた。

 魔獣達も剣術には興味津々だったので、じーっとその様子を見て、混ざりたそうにしていた。


 動物と魔獣と戯れて、一番興奮していたのはリーナだった。

 特に魔獣達と遊ぶのが気に入ったのか、飽きずにボールをポンポン投げたが、魔獣達も嬉しそうにボールに飛び付き、リーナのところへ持っていき、撫でられていた。

 ドリスも今まで、馬以外の動物と戯れたことがなかったので、新鮮な体験だった。また、ドリスも魔獣に懐かれたのだった。


「もしかしたら二人とも、召喚士か魔獣従属士の資質があるかもな」


 アンディが何気無くそう言うので、トールもからかうように口を開いた。


「なんなら今、契約してみる? やり方は魔獣が知ってるから」


 その言葉に魔獣達の方が反応してしまい、まだ契約していない魔獣達がリーナとドリスを囲んだが、今はいいとお断りしてしまった。


 「お金もかかるし……」と二人が思ったのは秘密だ。


 魔獣達はションボリしてしまったが、リーナがまたボールを投げると、忘れたように駆けて行った。


 思った以上にファルトマン領を満喫し、次のアピッツ領に向かうことになった。







 アピッツ領に行くには、王領を通って南下しなければならない。

 行くときも通った王領だが、見ると、農村が多い地域らしい。

 見るたび畑・畑・畑。その王領の他の地域に行けば、牧場が並んでいるという。人も見かけるが、皆、穏やかな顔だ。

 ただなぜか、馬車が通るのを見て、悲しそうな、懐かしそうな顔をする人も目立つ。

 主に、ドリスの父くらいから、上の世代だろうか? 

 ここは、もしかしたら、元貴族持ちの領なのかも知れない。







 アピッツ領に入ると、一面、草や花で覆われていた。


 ロザリファは元々、魔力がない辺境の土地だった。

 魔力を持たない人間が、動物を育て、作物を育て、細々と生活していた。

 そこにやって来たのが、今のテレシアがある近隣の国の、後継者争いに破れた元第二王子であった。


 こういった歴史を知ると、ロザリファでなぜテレシア語ではなく、ロザリファ語が使われるようになったのか不思議になるだろう。

 実は、後の世界会議の際、大きな大陸の言葉に統一すべきではないかという意見が出て、ドラッファルグ語、ミーシェ語、ロザリファ語が広く使われるようになった経緯があるのだ。

 ちなみにテレシアは、最後までロザリファ語に反対していた。


 話を戻すが、元第二王子についてきた貴族の一人で、薬草や香草を持ってきたのが、初代アピッツ侯爵である。

 元々は、ただの薬草・香草の研究者だった。

 しかし、その功績で、祖国に居る時、男爵位を賜った一人でもあった。


 ロザリファに着いた時、香草はチラホラあれど、魔力を含む薬草は全くないに等しかった。

 初代アピッツ侯爵は、すぐさま薬草の栽培に力を入れ、その薬草から、人々の薬となるポーションを作った。

 その功績はあまりにも大きいと、侯爵位を賜り、代々研究者の一族として知られるようになった。


 この話には続きがある。実はこの時代、何だかんだ理由をつけて、祖国から着いて来てもらった貴族達は皆、侯爵または、伯爵になることが出来た。これは、初代ロザリファ国王の計らいである。


 ちなみに、後継者争いに勝った第一王子は、すぐに国王を継いだが、そのわずか数年でその国は滅びの道を辿ることになった。







「ロザリファの歴史は余計だったかな?」

「知ってたけど、改めて分かったかも。元々うちの国は、テレシア近郊の国で、その人達が移動してきてできた国でしょ? だからトールの甥っ子君に、テレシア辺りでたまにいる精霊が憑いていたんだよ。

 トールの家って、元々侯爵家から分かれて、伯爵家になったのよね? 元々侯爵家ってことは、元テレシア近郊の国出身の人ってことだから、上位の精霊が憑いていても、おかしくないよね?」

「じゃあ、ご先祖様に憑いていた魅了の精霊が、うちの初代についてきて、今度は甥っ子に……」

「そういうこと」

「なるほど。なら、その甥っ子に強力な魔力があるのもうなずける」


 アンディが納得していると、アピッツ領邸が見えてきた。


「もう着くよ。ようこそ、アピッツ領へ」






 馬車を降りると、すぐに執事が対応した。


「ようこそ、お越しくださいました。中で、旦那様がお待ちでございます」


 執事の言葉に、エルは目を丸くした。


「研究所じゃないのか?」

「王子殿下もお見えになるということで、今日は久々に研究をお休みしたのですよ」


 執事はそう言って、皆を案内した。


 ファルトマン領でも、使用人達がドリスを見る目が厳しくないか観察したが、アピッツ領も好意的に受け入れてくれるみたいだ。皆、穏やかな笑顔で迎えてくれた。






 客室に通され、少し待っていると、当主であるアピッツ侯爵が入ってきた。


「道中お疲れ様です。私がアピッツ侯爵、シルヴィオ・アピッツでございます」


 エルが年をとったらこんな感じになるのかと思うくらい、エルに似た容姿の渋いおじさまだった。

 銀髪も碧眼も、エルと同じだ。


「私がワシュー王国第二王子、アンディだ。滞在中、よろしく頼む」

 

 アンディを筆頭に、一人ひとり自己紹介をしていく。最後はドリスだ。


「アルベルツ子爵が三女、ドリス・アルベルツと申します。滞在中、ご迷惑をおかけするかと思いますが、よろしくお願い致します」

「君が……ブレンターノ伯爵の孫か!!」


 すると、侯爵はドリスの側まで寄ってきて、片膝をつき、手を取った。


「ありがとう!! 君のおかげで、助かったよ!! 御礼申し上げる!!」

「え……あ……その……よ……よかったです」

「父上! ドリスが戸惑ってる。手を放してください」


 エルが不快そうに言うと、侯爵は渋々、手を放した。


「ここまでしなければ、誠意が伝わらないと思ったんだ。不快だったら済まない。本当に君には感謝している。家の人間にも、王子と同等で扱ってくれと言ってあるから、遠慮なく使用人達に申し付けてくれ」

「え……」


 子爵位が……王子と同等って……


「使用人達にも、経緯を話してある。皆、職を失わず済んだと、君には好意的だ。安心して過ごしなさい」

「あ……はい。ありがとうございます」

「さぁ、何もないところだが、のんびりと好きなことをして過ごしてくれ」

「あ、父上。研究所に見学の許可を頂きたいのですが……」

「もちろん。邪魔しなければ、構わない。それと……」

「なんです?」

「……母上が今、王都からこちらへ向かっているそうだ。出来れば滞在中に……会って欲しい」

「え……お祖母様が?」


 侯爵は苦々しい顔で言い、エルはそれを聞いて固まっていた。



 

これを読んで、テレシア近郊の国から来た初代ロザリファ国王なら、精霊が視えて、魔法が使えたのでは? と、疑問に思った人もいたと思います。

実は作者、当初考えなしで書いていました。話をややこしくして、申し訳ありません。


ちょっとネタバレすると、ロザリファに移った時に、初代ロザリファ国王が何かと契約をして、精霊信仰をせず、魔法を使わないことを決めたのです。

なので、現在のロザリファには、演劇や本、歌などに、精霊が頻繁に登場します。


番外編にその辺りのことを載せる予定ですが、それは早くてこの話が完結してからです。

意味がわからないなぁと思う人もいるかと思い、少しだけネタバレを書きました。



アピッツ侯爵領編で、ドリス達にある小さな変化が見えますので、皆の成長をご覧ください。

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