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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第二章 三領巡りに出発!!
36/94

34 ここで魔獣が飼われていたよ


 ファルトマン伯爵領に着くと、そこに広がっていたのは、のどかな牧場だった。


 元々、ここに古くから住んでいた住人は、酪農で生計を立てている人たちだった。作物も育てているが、今でも酪農の方に力を入れている。


「田舎だろう? 元々は、それで生計を立てていたんだ。今では紙が主力だけど、古くからの人は、酪農が主力って言ってるよ。チーズや牛乳は美味しいから、それもこの領のウリになってはいるけど、ブレンターノには劣るな」


 数が違いすぎるとトールはつぶやいた。


「領民の前でそんな事言っていいの?」

「ダメに決まってるだろ? だから、馬車の中で言ってるんだよ」







 馬車の窓を覗いていると、それぞれの動物ごとに柵で仕切られている。だが、その中に、一際異質に見える動物を発見した。

 

「なあ、トール。あれは魔獣に見えるんだが……」


 ぱっと見、黒や薄茶の大型犬だが、どうも強そうな容姿をしている。しかも、額には宝石のような石が付いていた。

 

「そうだよ。ここでは、保護した魔獣を世話してるんだ」

「「「「は!?」」」」


 これには皆、意味がわからないと言う顔でトールを見た。


「祖父様の時代に、山から魔獣が現れた時に、『腹空いているのか?』って尋ねたんだよ。そしたら、うなずいてすり寄ってきたんだ。話が通じると分かったから、保護することにしたんだって」

「え……」







 この世界では、魔獣を見たら、まず退治をするというのが常識だ。話など通じないと考えられている。

 もし通じたとしても、その人が魔獣を召喚できる召喚士や、魔獣を従わせることが出来る魔獣従属士の場合のみ。


 そもそも、動物と魔獣の違いは、魔石が()()か、()()かだ。


 ドラッファルグ王国以外の国には、動物が存在している。食用となるのは、主に動物である。ただ、たまに、魔獣を退治した時に肉が出るため、その肉を食べることもある。魔獣の肉は貴重なため、高値で取引されるのだ。


 ドラッファルグには、魔獣()()存在しない。なので、肉の主流は魔獣だ。

 そちらでは、退治しないと肉が取れないため、同じ肉の安定的な供給は難しい。ただ、その土地はこの世界の三分の一を占めるほど広く、常に冒険者によって魔獣の肉が出るので、動物を育てる必要がないのだ。


 その他の国は安定的な供給のため、家畜として動物を飼い、それが食用の肉となって国内に供給される。

 動物の方が、穏やかな性格のため、人の言う事をよく聞くとされてきた。

 

 ……今日までは。







「実際、魔獣の方が賢いんだよ。人の言うことが動物よりも良く分かるし、餌をくれる人には従順だし」

「これは……世界的には大発見だぞ。論文が出てもおかしくはない」

「え……そうなの?」

「本当に襲ったりしませんの?」

「うん。それに魔獣って、召喚獣でもあるらしくて、たまにこの犬達も召喚されるんだ」

「え……」

「どういうこと?」

「たまに消えるんだよね。この犬達。で、どこ行ったかっていうと、他の大陸の召喚士に召喚されているらしいんだ」

「気になっていたんだが……魔獣の首に何を提げているんだ?」


 大型犬に見える魔獣達は、一匹ずつ、首から巾着袋が付いた紐を提げていた。


「あれは、メモや金を入れるための巾着袋だよ。ここで育った魔獣たちは、召喚士に世話代や餌代、治療代を請求しているんだ」

「は?」

「だってさ。食べなくても平気なドラゴンとかと違って、魔獣達はそれぞれで餌を見つけないといけないだろ? ここで世話をする代わりに、餌代をもらわないと割に合わないんだ。この山は、あまり餌が多くないらしくて、人間に頼る魔獣が多くてさ。

 それに、召喚士は送還すれば傷も勝手に治ってると勘違いしているらしくて、ポーションを使ったり、傷薬を塗ったりしないで返還してくるんだよ。だから金をとっているんだ」

「金が払えなかったら?」

「申し訳ないけど、魔獣との契約破棄をしてもらう。魔獣の方から破棄することも可能なんだよ。中には、相性が良いのに金を払うことが出来なくなって、泣く泣く契約破棄をすることもあるらしい。ほら。あそこに居る魔獣、ちょっとしょげているだろ? 破棄したくはなかったのに、お金が払えないと言われてしまったんだ。……ここではよくある光景だよ」


 見ると、黒い犬が隅の方でうな垂れていた。その隣や後ろには、うな垂れている犬を心配しているかのように、慰める様な動作をしている犬たちがいる。


 それをさも、常識みたいな口調で言うトールに、皆、黙ってしまった。


「あれ? これ、田舎限定の知識だった?」

「違う! ここが異常なんだ!?」

「トール、ここの領主に至急、王に進言する事を要求する。これは世界的に見ても良い意味での発見だ」


 まさか、精霊が見えない国の一領で、召喚獣ビジネスが行われていたことは、世界的に見ても無いに等しかった。






久々に、アルベルツ家周辺の人々に、新作を投稿しました。

アンネリーゼとフレディの話です。

興味のある方はどうぞ。

つり目を読んでいる前提で書いた話なので、ご注意ください。

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