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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第二章 三領巡りに出発!!
30/94

28 今学期終了と精霊授業


「良いか! 長期休みだからと言って、課題は出る。忘れず、新学期に持ってこいよ! それから、寮は今日から三日後に閉鎖されるため、すぐに帰り支度をして出て行ってくれ」


 寮にはいつまでも居られないため、準備が出来次第、さっさと退寮しなければならない。

 王都から離れている領に住んでいる者は、今日には馬車で出で行く様だ。


「それと、秋から行事が目白押しだ。特に剣術大会は新学期から三週間後に行われるため、皆、各自練習しておくように。大会に出なくても、授業点がつくからしっかりな。大会委員については、新学期の最初の剣術の授業で、我々から声をかけた者にやってもらう」


 この学園には、生徒会や学級委員会といったものがないため、こういった委員は、学園からの指名制となっている。

 それは名誉なことであり、特に男子で将来王城に上がりたい者にとっては、重要なことであった。

 リーダーシップや連携して動けるかを見極める場にもなり、その委員としての活動が認められれば、加点となる。


 現在ドリスのクラスでは、リーナが学級委員的な立場になっている。他のクラスも同様で、おのずと身分が上位で、成績が良い者が指揮を取ることになる。

 ちなみに、生徒会長的な立場にいるのは、なんとワシュー王国の王子アンディ。

 我が国の第二王子は、リーダーというよりは、駄々っ子の様だと誰かが言うほどだった。


「休みだからといって、ハメを外したりするなよ。仮にも貴族なんだ。周りの模範となる行動をするように。ちなみに以前、長期休みにハメを外し、廃嫡されたケースもある。肝に命じておくように。以上だ」


 ボイス先生が注意事項と、新学期以降の話をして、今学期は終了した。

 期末試験は、また、このクラスが断トツトップを守ったらしい。

 ボイス先生の評価が上がったが、本人は……ゲッソリしている。






 そんな先生に暫しの別れを告げ、ドリスは、学園で最後の精霊の授業に臨んだ。


 寮の談話室も、今日をもって使えなくなるためか、どこもいっぱいだった。予約制なので、事前に予約していたドリス達は、担当者から部屋に通された。


「前回言っていた、『種』は持ってきたか?」

「私が思いつく限りのものを持ってきました」


 ドリスは、何種類かの種をアンディに見せた。


「これらは、細めの(つる)が育つ種です。こっちが巨大な花が咲くと、くしゃみをする様に花粉を飛ばすもの。効果は眠気が出たり、痺れが出るものがあります。あと、攻撃では無いのですが、クッションのような大きい実になる種も持ってきました」

「ほう……よく考えているでは無いか。毒はないのか?」

「解毒剤も無ければいけないので、入れませんでした。眠気も痺れも時間が経てば、回復するものにしてあります」

「賢明な判断だな。まぁ元々、植物の魔法自体、戦いに特化してはないからな。これだけでも集めたとは大したものだ」

「ありがとうございます!」

「エルの領に行ったら、薬草の種を貰うのもいいかもしれない」

「あ! なるほど」

「そういえば、アイリス。成長させたものを元に戻すことも出来るのか?」

『可能ですよ!』

「なら、時間があるときに、練習するといい。アルベルツは、組手や剣を嗜んだことは?」

「ありません」

「なら、その訓練もしとけ。剣なら、私でもいいが、エルの方が出来るからな。エルの領についたら、指導を頼むのもいいぞ」

「エルって剣、振れるのですか?」

「領が田舎だと、魔獣が出るんだ。討伐もしょっちゅうやっていたそうで、私が知る中では一番筋が良い。トールも良いな」

『三人の中では、アンディが一番剣が下手だな。実戦経験が少ないから、仕方ないかもしれないが……』

「しっかりやっているだろ?」

『運動神経の問題かな? センスが無いんだよなぁ。向こうではサボりがちだったし……』

「もう、黙ってろ!」


 するとジンは悪戯な笑顔になった。


「じゃあ、私と勝負ですね!」

「……これはさすがに私が勝つだろう」

「私の父をご存知ないのですか? 一師団を任されている団長ですよ! リーナのお兄様も憧れの存在だそうです」


 それを聞いて、何かがピキッと音が鳴った気がした。


「面白い。受けて立とうじゃないか。しかし、そんな父から剣を教わっていないということは、センスがない証拠ではないか?」

「運動神経には、少し自信があります」

「わかった。覚えていろよ」


 お互いに、黒いオーラを纏いながら、笑顔で向き合う。


 それを従者のリコとその精霊エン、ジンとアイリスは、穏やかな顔で二人を見守っていた。






 ドリスとリーナは終業式の次の日に、寮を出ることになった。

 馬車乗り場で一緒に、家からの馬車を待つ。


「ドリス! 約束の日に迎えに行きますからね!」

「よろしくお願いします! リーナ」

「今から楽しみだわ! ……殿方が居るとは思わなかったけれど」


 リーナはちょっと引きつった顔をする。


「良いじゃない! 私も色んなところを見てみたいし」

「そうね。うちじゃ、街だけだもの」

「農地はないの?」

「少しはあるけど、主に出荷するための花なのよ。作物を作っているところもあるにはあるけれど、他の領に比べて少ないわね。ブレンターノ産の野菜や肉を主に仕入れているの」

「お祖父様の領地の?」

「そうよ。とてもお世話になっているわ」





 そして、お互いの家から馬車の迎えが来たので、そこでドリスとリーナは別れた。


 カレンとオリバーは元気かなぁ。せめて一日だけでもいっぱい遊ぼ!


 ウキウキ気分で、ドリスはアルベルツ邸の馬車に乗った。







 

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