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ドリスの学園生活が気まま過ぎて困る  作者: 朱村 木杏
第一章 いざ! 学園へ!!
28/94

27 初めての長期休みの計画!


 期末試験が終わり、教室の席に着いてホッとしていると、リーナが声をかけて来た。


「ドリス! 約束通り夏休みは、うちの領に来てくれるわよね?」

「良いよ! 両親の許可が下りたら、多分行けると思う」

「まだ言っていなかったの?」

「社交辞令かと思うじゃない?」

「私は本気よ」

「ごめん! 正式に決まってからで良いと思ってたの! 私も色々あったから」


 ドリスは二回も狙われたので、家族が心配していたのだ。そんな状況だったので、旅行の話どころではなかった。


「ドリス!」


 振り返ると、エルとトールとアンディが教室に入ってきた。


「ドリス! 夏休み、うちの領に来ないか?」

「え?」

「ちょっと貴方! 私が先約なんだけど」


 エルからもお誘いを受けてしまったが、リーナからも言われている。

 どうしようと思っていると……


「なら、皆の領を周れば良いのではないか?」


 まさかのアンディからの提案だった。


「あ、じゃあうちの領にもおいでよ! エルのところから近いんだ。この中ではファルトマン領が一番遠いから、うちから先に行って、アピッツ領に行って、それからブローン領に行けば良いんじゃないかな?」

「え~……」


 リーナが渋ると、トールは、諭すように言った。


「アンジェリーナ嬢に聞くけど、纏わりついてくるのがいるんじゃない? 滞在期間は短い方がいいんじゃないかな?」

「うっ……」


 聞くと、いつも近づいてくる三人組が、休み中に接触してきそうなのだと言っていた。

 こういう時、上位貴族は大変だと思う。


 結局この五人と従者一人で、三つの領を周ることになった。






 期末試験が終わった翌日は休日だった。

 ドリスは馬車で、ローレンツの商会に向かう。


「よう!」

「お疲れ、ドリス」


 ローレンツとブルーノが、会頭室のソファーに腰をうずめていた。


「密偵のことなんだが、ぶっちゃけ、近隣諸国からは一人か二人はいた。テレシア国からも来ていることは分かっているが、何人かは不明だ。確認できているのは、二人の男女。この二人に関しては、以前から潜入していて、少なくとも二年前くらいから来ていることが分かっている。おそらく、他にも居ると思って確認を急いではいるのだが、まだはっきり確認出来ていない」

「ワシュー王国からは?」

「来ては居るが、アンディ殿下の影の様なものだ。それに影に調べさせなくても、殿下には精霊がいるから、それ任せらしい」


 ドリスは聞いて、らしいなと思った。


「結構、他の国から入っているのですね」

「ロザリファに、一人二人そんなのがいるのは、ある意味いつも通りだ。でもテレシアは他にも居るようだから、追ってみる。何か分かったら、こっちにも知らせてくれ」

「わかりました。ありがとうございます」

「王にも伝えておいたよ。しばらくは、テレシアや他の国を警戒するそうだ。何か分かったらすぐにブルーノだけじゃなく、俺や義父上にも知らせて欲しい。今回の件は、王の手の者にも分からなかった。アンディ殿下にも協力を要請したらしい」

「わかりました。すぐに、報告します」






 話がひと段落すると、ブルーノはニヤニヤしながら、こっちを見た。


「そういえば、夏休みは、例のガキのところへ行くのか?」

「例のガキとは?」

「アピッツ侯爵子息のことだよ」

「あぁ……皆で、三つの領を周ることになりました。父の許可が出たらですが」

「どこ行くの?」

「まずファルトマン領に行ってから、アピッツ領に。最後に、ブローン領に行く予定です」

「は~……この前聞いた時も思ったけど、割とすごいところと繋がりがあるんだな」


 少し呆れた声で、ブルーノが口を開けたまま固まった。


「そんなにすごいのですか?」

「ファルトマン領といったら紙の原産地だろう? アピッツ領は薬草・香草の宝庫。ブローン領は芸術系の職人の街だ。どこも、行って損は無いな」

「どいつもこいつも大物だ。これがなきゃ生きていけないってもんを、作って居るところは強い。嬢ちゃんはいい繋がりを持ってるなぁ」


 そうなんだ……


 ドリスは初めて、友人達の偉大さを知った。


「しかも、上位貴族ばかりだ。特に、ブローン公爵令嬢とアンディ殿下が後ろ盾なのは強い。よくやったな」

「たまたま仲良くなれただけですよ?」

「それでも、良い縁ができた。それに、楽しそうでよかったよ」


 ローレンツの本音はそれの様だ。

 ドリスは、ちょっと照れながら、うなずいた。






 休み明けに学園に行くと、早速期末試験の結果が出ていた。


 一位 ドリス・アルベルツ


 二位 アンディ


 三位 アンジェリーナ・ブローン



 その結果を見て、ドリスはホッとし、リーナは眉を寄せた。


「今回は殿下にも負けちゃったわ」

「前回は本気じゃなかったみたいだからね」

「次は一位を目指します!」

「頑張って私を倒してください」


 そんなことをやって居ると、噂の殿下が現れた。


「クソ! また、アルベルツに負けた……」

「殿下、私の壁は厚いですよ」

「……次はその壁を壊してやる!」


 その様子を嬉しそうに、従者のリコは見ていた。






 放課後になると、皆で寮の談話室に集まった。


「ドリス、許可は?」

「貰えました!」

「うちも良いぞ! 許可をもらった」

「うちも! 大歓迎だってさ!」

「私も、ロザリファ王から許可をもらえた」

「ロザリファ王が殿下の保護者ってことですか?」

「あぁ。なので、どこに行くにも、ここの王の許可が必要になる」

「面倒ですね」

「我儘言って、ここに置いて貰っているんだ。それくらい従わなければな」

「じゃあ、皆で行けるのですね!」

「ドリス、ここにいる時は、言葉を崩して良いぞ」

「私は下位貴族ですから」

「そんなの関係ない。もう、友人だと思っているからな」

「でも私は、アンディとは呼びませんよ」

「そうしてくれ。婚約者と勘違いされても困る」

「ただ、大丈夫ですかね。私、狙われているし」

「そう言えば、例の伝手はどうだった?」

「はい、ロザリファの近隣諸国の密偵は、一人か二人はいつもいるそうです。テレシアに関しては、男女二人の密偵が二年前くらいから居ることは、確認が取れています。その他にもいる様なのですが、確認が取れておらず、引続き確認を取って貰っています」

「うん。ジンの情報と一致している。追加するなら現在、テレシアの女の方は行方知れずだ」

「女の方が!?」

「どこかに潜入している可能性が高い。学園かも知れないから、気をつけなくてはな」

「ここ!?」

「どんな姿、格好に扮しているのかは、流石に掴めなかった」

「ジンでも難しいの?」

『居るってことは分かるんだけどさ。どんな容姿か探るのは苦手で』


 ジンは大雑把な性格だった様だ。


「なんかさ、二人の会話聞いていると、まるで、王様と側近の会話に聞こえるんだけど……」

「その通りだ。実際、この件は王にも進言している。アルベルツがもし誘拐されたら、それだけで戦争が起こってもおかしくは無いんだ」

「は!? 何でそんなことに……」

「国内の誰かであれば、他にも対処ができるが、他国が絡んでいるからな。ワシューはこの切っ掛けを与えてしまったから、ロザリファに全面的に協力することを決めたんだ」


 やっぱり、かなり大事になってる……


「アルベルツには、旅行中も精霊の指導をするからな。王から頼まれているし、こちらとしても、早く一人前になって欲しい」

「……はい」


 こんなことになってしまい、楽しいだけの旅ではなくなった。



これで一章完結です! 次回から二章が始まります。

一章と同じで、最初に登場人物紹介を載せております。

基本、その章に登場する人物が載っています。(もしかしたら、出てこない人も載っているかもしれません)

新キャラも登場し、ますます頭がこんがらがった時に、チェックして見てください。(勿論、ネタバレ有りです)


二章は、この物語で一番最長。そして、一番突っ込みどころ満載な話が多々出てきます。どうか深く突っ込まないでください!!

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